4436 ミンカブ ・ジ・インフォノイドの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

ミンカブ・ジ・インフォノイドの事業概要

同社は2006年7月、東京都千代田区麹町にて株式会社マスチューンとして設立された。2007年4月には現在の主要メディアサービスである「みんなの株式」の運営を開始した。2014年8月、大手証券会社や金融ポータル事業者向けのB2B金融情報サービス提供を行うインターストラクチャー株式会社を連結子会社化し、金融機関向けソリューション事業に参入し、2014年10月には投資家向け株式情報配信サイト「株探」を事業譲受により取得した。また、2019年3月に東証マザーズへの上場を果たしている。
同社の株式を5%以上保有する投資家は4名おり、日本トラスティ信託口が17.8%、同社創業者兼代表取締役社長の瓜生憲氏が9%、ソニーネットワークコミュニケーションズが7.1%、朝日新聞社が6.1%である。上場時はベンチャーキャピタルが57%の株式を保有していたが、2020年3月末時点では14%まで比率を下げており、機関投資家の保有比率が43%に上昇している。
瓜生氏は1974年に生まれ、ボストン大学スクール・オブ・マネジメントを卒業している。卒業後はNTTドコモのIR発足メンバーとして活躍し、メリルリンチ日本証券やゴールドマン・サックス証券にてアナリスト業務等に従事している。
同社の取締役会は6名の取締役で構成され(うち3名は監査等委員)、創業時から在籍している取締役は瓜生氏のみであることから、瓜生氏の影響力が大きいことを読み取れる。
同社の報告セグメントは「メディア事業」と「ソリューション事業」から構成されており、セグメント毎の売上高比率はそれぞれ48%、52%である。「メディア事業」は広告収入・課金収入・その他収入によって構成されるものの、その大半が広告収入である。「ソリューション事業」はストック収入・一時売上から構成され、ストック収入が80%近くを占めている。以上より、同社は金融情報メディア運営による広告収入と金融機関向け情報サービス提供による月額固定収入を中心に収益を獲得していることが読み取れる。
また、同社はREITポータルサイトを運営しているProp Tech plus株式会社の株式を66.7%保有しており、連結子会社としている。

「メディア事業」

「メディア事業」の中核は、個人投資家を対象とする株式情報サイト「みんなの株式」である。ネット証券会社で口座開設をした場合、株価チャートやニュース等のマーケット情報を入手することができるが、「みんなの株式」においても同様の情報をある程度得ることができるだけでなく、各銘柄のブログや理論株価、売買の推奨等が記載されており、株式投資初心者でも使いやすいサイトとなっている。Google上で「<銘柄名>株価」と検索すると上位表示されることが多く、個人の株式投資家を集めるSEOは成功しているといえるだろう。当該メディアの他にも、仮想通貨、FX、コモディティ、投資信託、保険、不動産、クレジットカード、証券会社等の情報サイトを運営している。
同事業はメディアを不特定多数のユーザーに無料で公開し、証券等口座取扱業者や広告主から広告収入を得るビジネスモデルとなっている。広告収入は純広告及びネットワーク広告における期間やクリック数、表示回数等の保証型広告収入及び口座開設等に係る成果報酬型広告収入で構成されている。純広告及びネットワーク広告における保証型広告収入は、同社が運営する各サイトのページ上に広告主の広告を掲載することで得られる収益であり、掲載期間を定める期間保証型や当該広告の表示回数(インプレッション数)を保証するインプレッション保証型、又はクリック数を保証するクリック保証型等が存在する。また、広告主を特定する純広告のほか、枠のみを設定し、掲載される広告はシステムが自動で行うアドネットワークも活用している。口座開設等に係る成果報酬型広告は、同社が運営する各サイトやパートナーサイトに設置された金融機関等の比較ページから書く証券会社等の口座取扱業者のページへ遷移し、ユーザーが口座開設申し込みを行い、その1件あたりの成果に対して報酬を得る仕組みである。同社の主要メディアである「みんなの株式」の広告料金体系は以下の通りである(株式会社ミンカブ ・ジ・インフォノイド メディアガイド2020より)。 

また、同社はメディアサイト合計の月間平均ユニークユーザー数(以下、UU数と表記)と同訪問ユーザー数を主要KPIとしている。UU数と訪問ユーザー数の違いについて、同じユーザーが特定のサイトに何度訪問しても1人として測定した人数がUU数であり、純粋な訪問回数の合計が訪問ユーザー数と呼ばれる。2021年3月期第一四半期の月間UU数は945万人(前年同期比244万人増)、同訪問ユーザー数は2,671万人(前年同期比628万人増)であり、創業以来伸び続けている。既存サイトのトラフィック増加に加え、新規サイトの立ち上げやM&Aを成功させることが、同事業の業績を向上させるために重要であるといえるだろう。
また、同社は大株主の異動履歴等の情報を提供する「株探プレミアム」の提供を開始しており、ユーザーから直接利用料を受領している。当該サービスの利用料は月額1,980円(税抜)である。同社の課金収入はメディア事業全体の収入の5%を下回っており、株価や業績を予測する上では、広告収入と比較すると重要性が低いといえるだろう。

「ソリューション事業」

「ソリューション事業」では「メディア事業」向けに開発した情報コンテンツやアプリケーションをB2B及びB2B2Cユース用にソリューション化して展開している。代表的なソリューションとして「MINKABU テーマ別ソリューション」が挙げられる。これは同社が運営するメディアサービスで個人投資家に人気のテーマ株コンテンツをソリューション化して証券会社等に提供しているB2B2Cプロダクトである。同社独自の分析に基づくポートフォリオの組成、先行銘柄や遅行銘柄を抽出等により差別化を図っている。また、同社運営メディアのウェブ検索エンジン最適化技術によるSEOの強みを活用し、投資家がどのキーワードに注目しているのかという情報提供も行っている。また、金融機関営業員向け情報端末「MINKABU Sales-Cue」も代表的なソリューションの1つである。当該ソリューションでは、これまで分断管理されていたマーケット情報と顧客関係管理機能をAIを活用して融合し、営業員に適時適切な情報を提供することにより業務効率を向上することができる。
同事業の特徴として、収入の約80%がストック収入である点が挙げられる。全てのソリューションの料金体系が開示されている訳ではないが、顧客に金融機関が多いことから、顧客の規模等に応じた定額収入を得ていると考えられる。そうなると、同事業の収益の安定性は高いと予想できる。例えば「MINKABU Sales-Cue」を金融機関が導入した場合、営業員は当該ツールを使用してマーケット情報や企業情報を収集し、顧客向け資料を作成することが多くなる。同じツールに慣れるにつれて営業の効率が上がるため、他のツールへの乗り換えには慎重にならざるを得ない。つまり、同社のソリューション導入のハードル自体は高いものの、一度導入してしまえば解約されにくいといえるだろう。

ミンカブ・ジ・インフォノイドの財務状況と経営指標

同社のキャッシュ・フロー(以下、CFと表記)について、2020年3月期の営業CFは715,178千円、投資CFはマイナス1,620,384千円、財務CFは922,810千円、FCF(フリー・キャッシュ・フロー。営業CFと投資CFの差)はマイナス905,206千円である。また、2019年3月期の営業CFは480,014千円、投資CFはマイナス525,398千円、財務CFは1,620,135千円、FCFはマイナス45,384千円である。同社のCFからは、本業での資金流入が続いており、それを上回る積極的な投資を行い、必要な資金調達も実行していると読み取れる。同社に似たCFは安定した収益基盤を持ちながら業績向上に貪欲な企業によく見られる。2020年3月期の投資CFのうち最も大きい項目は「連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」のマイナス1,035,273千円であり、2019年3月期の財務CFのうち最も大きい項目は「株式発行による収入」の1,501,969千円である。これは上場によって得た資金の約2/3をProp Tech plus株式会社の買収に使用したことを示している。当該買収は同社にとって金額的重要性が高いだけでなく、不動産領域への挑戦という意義があることから、2020年3月期に投入したREIT向け業務効率化ソリューション「T2TR Comfort」の新規顧客獲得数が株価予測のカギとなりうるだろう。
また、同社の流動比率(流動資産÷流動負債×100)は353.52%であり、安全性の基準である200%を大きく上回っている。2021年3月期第一四半期の「現金及び預金」は1,982百万円であり、固定費の小さい業種であることを考慮すると、財務安全性は非常に高いといえるだろう。
また、同社の売上高営業利益率は18.74%であり、金融サービス業(東洋経済業種60種)に分類されるウィルズ(4482)は17.295、ユーザベース(3966)はマイナス9.87%、モーニングスター(4765)は22.61%である。また、同社のROE(当期純利益÷自己資本)は13.5%であり、上場企業の目標値とされる8%を上回っている。したがって、同社の収益性は同業種の中で突出して高いとは言えないものの、上場企業の中では高い水準にあるといえるだろう。
また、2017年3月期以降の同社の一会計期間売上高はそれぞれ1,545百万円、1,681百万円、2,032百万円、2,490百万円であり、上昇を続けている。2021年3月期第一四半期売上高は823百万円と、前年同期比63.5%増であるが、2021年3月期売上高会社予想4,000百万円に対する進捗率は20.6%である。2020年3月期第一四半期売上高の対通期実績の進捗率が18%であることを踏まえると、四半期会計期間によって売上高に差が生じる可能性があり、2021年第一四半期売上高の進捗率が必ずしも低いとはいえないだろう。

ミンカブ・ジ・インフォノイドのカタリスト

同社のカタリストとしては、Quickとの業務提携の良否が挙げられる。同社は2020年9月29日、日本経済新聞社グループのQuickと、双方の資産・ノウハウを共有して競争力を高める目的で業務提携の合意をしたと発表した。Quickは世界中から株式、債券、為替、コモディティ、デリバティブ、企業情報など膨大なデータやニュースを集め、金融・資本市場に関わる投資家の意思決定をサポートする金融情報サービス配信する、日本のリーディングカンパニーである。当該提携により、ミンカブ・ジ・インフォノイドは同社のソリューションとQuickの持つ顧客基盤を融合させたサービスを開発することができるようになる。同社の株価は2020年9月に2,000円付近を推移していたものの、提携発表を経て約60%上昇して3,160円(2020年10月20日終値)となっている。今後の同社の業績・株価を予測する上では、当該提携の効果が各決算で読み取れるかどうかに加え、新規の業務提携・組織再編行為等の重要性が高いといえるだろう。