【上場廃止】3689 イグニスの業績について考察してみた

【上場廃止】3689 イグニスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

イグニスの業績について考察してみた

沿革

2010年5月に株式会社イグニスを設立し、12月にスマートフォン向け恋愛アプリを配信開始2014年7月に東証マザーズに上場。2016年3月にオンライン恋愛・婚活サービス「with」を配信開始。2016年11月VR事業を目的としたパルス株式会社を設立、2019年8月バーチャルライブアプリ「INSPEX LIVE」の提供を開始。2021年3月MBOの実施を発表、ベインキャピタルおよび同社代表取締役を株主とする株式会社i3が公開買付者。公開買付けの結果、44.28%の議決権を取得。その結果を受け2021年6月に上場廃止となった。2022年2月恋愛・婚活サービスを提供する株式会社withが同社グループより独立。本社は東京都渋谷区。バーチャルライブアプリ等、インターネットサービスを幅広く展開

株主構成

2021年4月に公表された公開買付けの結果に関する同社資料によると、MBO実施後の筆頭株主は公開買付者の株式会社i3、その他に同社代表取締役の銭氏および鈴木氏の合計3名が株主になっているとみられる。

取締役会

同社HPによると、株式非公開化後の体制は社内取締役2名、社外取締役1名、監査役1名となっている。社内取締役は後述の代表取締役2名。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の銭錕氏は1982年5月生まれ。東京都立科学技術大学を卒業後、2006年4月に株式会社シーエー・モバイル(サイバーエージェントの子会社)に入社。株式会社zeronanaを経て、2010年5月に同社を設立。2011年11月に現職に就任した
代表取締役CTOの鈴木貴明氏は1986年3月生まれ。2009年3月に株式会社サイバーエージェントに入社後、株式会社ジモティーや株式会社ファーストタイプを経て、2011年11月に当社取締役に就任。2014年2月に現職に就任した

報告セグメント

有価証券報告書により確認可能な2021年9月期第2四半期時点では「マッチング事業」、「エンターテック事業」の2セグメントおよびその他に大別される。同時点の売上高2,834百万円の内、マッチング事業が2,621百万円で92.5%を占める。同時点の営業損失が▲808百万円、エンターテック事業での損失が▲1,446百万円だった。尚、現在は恋愛・婚活マッチングアプリを提供する株式会社withが2022年3月に同社グループから独立したことから、マッチング事業での売上はないものと考えられる

事業モデル

エンターテック事業は、連結子会社であるパルス株式会社が提供するバーチャルライブアプリ「INSPIX LIVE」が主力サービス。アプリ内のアイテムへの課金収入と、タレントの音楽ライブのチケットやグッズの収入を収益源とする。VR領域へ積極投資を行っており、「INSPIX LIVE」にVR空間上でのソーシャル機能を加えた、ライブ特化型仮想空間SNS「INSPIX WORLC」へのアップデートを行う。また同じく連結子会社の株式会社VOYZ ENTERTAINMENTは芸能プロダクションを運営しており、「VOYZBOY」や「学芸大青春」等のIPを創出している。
マッチング事業は、連結子会社である株式会社withが提供する恋愛・婚活マッチングアプリ「with」を展開していたが、現在は同社グループから独立している。
同じくゲーム事業も連結子会社である株式会社スタジオキングにより展開していたが、2020年3月には既存の「ぼくとドラゴン」と「猫とドラゴン」の2つのアプリを3793ドリコムへ譲渡している。
他には、連結子会社であるグラム株式会社が転職エージェントサービスやHR Techサービスの提供などを行う。
調査会社IDC Japanの調査によると、国内のAR・VR関連の市場支出は2019年に17.8億米ドル、2023年には34.2億米ドルに成長すると予測されている。PwCの発表では、世界でAR・VRがGDPに与えるインパクトについて、2030年までに約1.5兆米ドルに達すると予測している。

競合他社

アーティストのファンサイトを運営、VR制作子会社を持つ3661エムアップホールディングス(2022年3月期売上高13,574百万円)、3668コロプラ(2022年9月期売上高32,542百万円)や3815メディア工房(2022年8月期売上高2,203百万円)、3903gumi(2022年4月期売上高18,942百万円)などオンラインゲームを主力とする企業などもVRに取り組んでいる。

連結の範囲

主要グループ会社としてエンターテック事業を担うパルス株式会社や株式会社VOYZ ENTERTAINMENT、グラム株式会社、IGNIS AMERICA,INC.と持分法適用関連会社2社が挙げられる。

強み・弱み

エンジニア出身者が代表取締役を務め(同社によると日本でそれほど多くない)、エンジニアの意向が経営判断に活かせる組織となっている。今後の成長が期待されるVR市場に注力するが、主力だったマッチング事業の独立により、売上高は大きく減少しているものと考えられる

KPI

①VR市場規模
②自社IPファン数

業績

MBOにより株式が非公開化されたため、2021年9月期第2四半期以降は業績の開示がなされていない。2016年9月期から2020年9月期の5期は売上高ほぼ横ばい。経常利益は2018年9月期以降エンターテック事業への先行投資が膨らみ、赤字が続く。営業CFは2017年9月期以降マイナスを継続、投資CFは2019年9月期を除いてマイナスを継続。財務CFは継続してプラス。自己資本比率は2020年9月期で54.4%と、前期の56.4%からほぼ横ばい。

2021年9月期 第1四半期決算説明資料

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