オルタナティブデータとは
投資情報収集のデジタル化が進展することにより近年台頭してきたデータで、POSデータ、クレジットカードデータ、位置情報、衛星画像などの、これまで活用されてこなかった代替的なデータ全般を指す。
企業が開示する財務諸表や業界に関連する経済統計、その企業へのインタビューなどの情報が四半期や1年に1度しか更新されない一方で、オルタナティブデータを用いた場合、 即時性が高く、詳細な項目別の数値を把握する事ができる。
その結果、企業による財務諸表などの情報開示前の投資判断が可能となることから、精度が高く迅速な投資判断につながることが期待されている。
オルタナティブデータの活用方法
ここまでCase.2やCase.3で、業績数値の概算にそのまま利用可能なデータを紹介してきたが、オルタナティブデータの中には業績予想には使えなくても株式投資に活かせるデータがある。その例が6034MRTだ。マーケットが求人数のモメンタムに注目しているケースだ。
同社は東大附属病院の互助会を母体として設立され、非常勤医師紹介サイト「Gaikin」を中心に医療従事者の職業紹介事業を展開する。求人を行う医療機関からの紹介手数料を主な収益源とし、雇用契約成立数は年間15万件にのぼる。
また、2021年12月期第2四半期から売上高が大幅成長を記録し、2021年12月期通期では前期比74.4%増収となった。このように加速度的に売上高を伸ばしている企業では、伸び率の予想が困難なため、業績予想が難しい。そこで、オルタナティブデータを用いて成長度合いのモメンタムに注目することが有用である。
上記のオルタナティブデータを用いることでMRTに登録されている医師のアルバイト・バイト（スポット）の月間求人数を把握することが出来る。
MRTの業績予想では売上高を次のような要素に分解することが可能だ。
売上高＝求人数×成約率×平均単価
PERAGARUのオルタナティブデータから取得した求人数を用いて、仮に成約率を一定とし、みなし単価を求めると、大きく変動していることがみてとれる。つまり、上述の要素分解した式では、仮に求人数をオルタナティブデータで算出することができても、成約率や平均単価を正確に求めるられないため、業績予想の誤差を許容可能な範囲におさめることが難しい。
オルタナティブデータで過去の求人数の傾向を見ると、求人単価や成約率の変動要素が考察される。2020年12月期の第2四半期が1回目の緊急事態宣言と重なり、一時的に医師の求人が少なくなってしまったことによる異常値を示している。コロナによる求人の減少や、ワクチン接種の開始による需要増加のような突発的な事象により求人単価や成約率がぶれるため、単純にオルタナティブデータだけで業績の数値まで正確には当てられないと推察される。
オルタナティブデータは株式投資に役立たないのか？そうではない
売上高を構成するすべての要素について、オルタナティブデータで具体的な数値を求める必要はない。求人単価や成約率に影響がでる事象が生じているか生じていないかを、日々の経済活動の中から、推し量ることは可能だ。求人単価や成約率を「ほぼ一定」と推察できる局面では、求人数そのもののモメンタムを知ることができれば、株式投資に活かせる。
例えば、オルタナティブデータ上で求人数が過去最高を記録した2021年12月期第3四半期の求人数のモメンタムから、この期間の求人が第4四半期の成約へとつながり、利益貢献するだろうといった予想が可能である。このように、他の条件も考慮したうえで、オルタナティブデータを用いることで求人数のモメンタムを把握することが出来れば、投資判断に役立てることが可能な局面も多い。
オルタナティブデータとは その活用方法を解説 Case.1
オルタナティブデータとは その活用方法を解説 Case.2 ~7082ジモティー~
オルタナティブデータとは その活用方法を解説 Case.3 ~3186ネクステージ~
