【IPO】2997 ストレージ王の業績について考察してみた

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PERAGARUアナリスト

沿革

2008年5月コンテナ建築を祖業とする株式会社デベロップの子会社として、トランクルームの運営・管理を目的に設立。2013年5月株式会社デベロップが株式会社アイトランク山陽(岡山県の天満屋グループが設立)を子会社化。2015年7月同社と株式会社アイトランク山陽が合併、社名を株式会社ストレージ王とした。2022年3月東証グロース市場への上場を承認されたトランクルームに関する企画・開発・運営・管理を行う

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株主構成

有価証券報告書によると筆頭株主は、同社親会社の株式会社デベロップで保有割合79.29%。以降は保有割合5%未満で倉庫業を営む寺田倉庫株式会社のほか株式会社細谷工業所、8596九州リースサービス、株式会社アイ企画等の法人および個人名が並ぶ。売出に際して株式会社デベロップは持分の1/4程度、株式会社細谷工業所は半分程度を放出する。外国人株式保有比率は10%未満

取締役会

取締役は5名(社内3名、社外2名)、監査役は3名(全員社外)、監査役会設置会社である。代表取締役を含む2名は株式会社デベロップからの転籍者。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の荒川滋郎氏は1960年5月生まれ。東京大学卒業後、1983年4月現5401日本製鉄に入社。寺田倉庫株式会社等複数社を経験後、2016年7月株式会社デベロップに入社。営業部門担当取締役を担当。同社に転籍し、2019年4月より代表取締役を務める

報告セグメント

トランクルーム事業の単一セグメント。2022年1月期第3四半期累計期間の売上高は1,875百万円(前年同期比+280.2%)、営業利益は24百万円(前年同期は営業損失▲59百万円)だった。

事業モデル

事業モデルは運営管理事業と開発分譲事業に大別される。運営管理事業は、トランクルームを利用者に貸し出すことにより利益を上げるもので、利用者から利用収入を収受する。同社が事業主体となる固定家賃型と事業主体となる不動産所有者からビルを賃借もしくは管理を受託する変動家賃型があり、固定家賃型は同社が稼働状況に関するリスクを負う構造となる。損益分岐稼働率は概ね60~70%とのこと。対して変動家賃型はトランクルーム利用料を一時的に同社が預かり、管理料(10%程度が多い)を差し引いたうえで不動産所有者に支払いを行う
開発分譲事業は、トランクルームを投資家へ売却することにより収益を計上する。主要顧客はメットライフ生命保険株式会社の名が挙がっており、2021年1月期は全体売上高の57.3%を占めた。物件売却の後、固定家賃で15年のマスターリース契約を結んでいるとのことで、当該物件の稼働率に係るリスクは同社が負っている。マスターリース契約で2022年1月期にも3件のトランクルームを開業しており、賃貸開始後数年間はトランクルーム利用料がマスターリース賃料を下回るため、開発後初期には物件ごとの赤字を当社が負担することとなる。アパートと比較するとトランクルームは満室となるまでに2~3年かけてゆっくり稼働率が上昇していくことが多い一方で、長期契約となり安定稼働が見込まれるという特性がある。
国内でのトランクルームに対する認知度は低く、矢野経済研究所の調べによると市場規模約770億円、世帯普及率0.7%にとどまっている。認知度の向上に伴い、今後の更なる市場拡大を見込めると同社は考えている。

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競合他社

ストレージ室数首位の8914エリアリンク(2021年12月期20,572百万円)、トランクルームの滞納保証が主力だが施設の開発、販売、運営、仲介も行う3461パルマ(2021年9月期売上高3,637百万円)などが挙げられる。しかしビジネスモデル自体はシンプルであり、特に不動産業や倉庫業を営む事業者にとって新規参入は容易であるものと考えられる。

連結の範囲

同社は連結子会社を持たない。

強み・弱み

同業他社に比してリーズナブルな賃料設定、トランクルーム専用設計からくる安心・安全な建物綺麗な店舗・充実した設備を強みとしている。一方で売上の大部分を特定取引先に依存していることが弱み。また直近で2020年1月期売却の梶ヶ谷トランクルームの粗利が高かったように、母数が大きくないため個別物件ごとの収益性が同社全体の財務諸表に与える影響が大きい点も懸念される。

KPI

数値は未公表だが、同社は下記をKPIとしている。
①各物件開業後の稼働率
2020年1月期は梶が谷、立川柴崎町、港南笹下の大型3物件オープンし売却:3件で9.3億円
2021年1月期は上石神井と中板橋の大型2物件オープンし売却、小型物件は3物件:2件で6.5億円
②管理物件数と部屋数
③物件への問い合わせ数と契約の成約率

業績

2017年1月期から2019年1月期は売上高400百万円台近辺で推移。2020年1月期は1,344百万円、2021年1月期は1,134百万円と売上規模は2019年1月期比で拡大したが、特定取引先への物件売却の影響が大きいと考えられる。利益は安定せず、2020年1月期の経常利益は83百万円も、翌2021年1月期は上場準備のための人員増などにより▲72百万円の経常損失。2022年1月期第3四半期時点では前期比増収増益。コロナ禍の影響により在宅勤務が増えたことを受け、自宅整理にトランクルームが活用されていること、物件売却が2件あったことなどが要因として挙げられる。売却用物件と考えられるたな卸資産の変動大きく、フリーCFは安定していない。2018年1月期以降、自己資本比率は40~50%台で推移

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