3002 グンゼの業績について考察してみた

3002 グンゼの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

グンゼの事業概要 

沿革

同社は、1896年創業者波多野鶴吉が地域産業振興を目的に京都府何鹿郡(現京都府綾部市)に郡是製絲株式会社として設立された。戦後は、メリヤス下着を生産開始、男性用下着を中心とし、高度経済成長期には、女性用インナー、ベビー肌着などアパレル事業の多角化を図っていた。同社は1933年京都及び大阪証券取引所に上場、戦後は1949年に東京、大阪、名古屋の各証券取引所に上場した。1967年現社名グンゼ株式会社に社名変更、現在は東証1部上場である。時価総額は約648億円(2021年1月現在)、2020年3月期の売上高は1,403億円、経常利益68億円で近年の業績は安定している。

株主構成

株主上位10名は、国内信託口で2名23.10%、金融機関4名(三菱UFJ銀行、京都銀行、全国共済農業協同組合連合会、第一生命)11.63%、中国政府系投資ファンド(SSBTC CLIENT OMNIBIS ACCOUNT 常任代理人香港上海銀行東京支店)2.82%、従業員持ち株会1.99%、米国籍系ファンド(DFA INTL SMALL CAP VALUE PORTFOLIO 常任代理人シティバンク、エヌ・エイ東京支店)1.80%、㈱GSIクレオス(東証1部、当社主要取引先)1.53%となっており、大株主に個人や事業会社がいないことが読み取れるだろう。

取締役会構成

取締役は8名で、うち3名が社外取締役、また女性取締役は2名(社外取締役2名)となっている。監査役会設置会社で監査役4名(うち社外監査役2名)、他に代表取締役、役付取締役、機能別担当取締役、執行役員8名で構成する経営執行会議を設けている。意思決定の迅速化及び業務執行体制の強化を目的に執行役員体制を導入しており、取締役兼務者5名を含む18名の執行役員を選任している。

報告セグメントと事業の構成

現在は、「機能ソリューション事業」「アパレル事業」「ライフクリエイト事業」の3セグメントで事業展開がされている。2020年3月期までの3期におけるセグメント別売上高は、「機能ソリューション事業」が、508億円、532億円、563億円と増収基調、「アパレル事業」が、740億円、726億円、694億円と減収基調、「ライフクリエイト事業」が161億円、152億円、149億円と減収基調であった。セグメント別利益は、「機能ソリューション事業」は53億円、61億円、61億円、「アパレル事業」は26億円、25億円、27億円、「ライフクリエイト事業」は13億円、12億円、11億円となっている。

事業モデル

機能ソリューション事業は、ストッキング製品を包装するパッケージの開発が起点となっており、この包装フィルムの開発・製造の取り組みが、プラスチックフィルム事業へと発展し、その技術はさらにタッチパネル分野や医療分野の開発にも応用され、食料品、デジタル端末、医療などへ用途を広げ、幅広い業種への販売が図られている。事業分野では、①プラスティックフィルム②エンジニアリングプラスチックス③電子部品④メディカル⑤メカトロに区分されている。プラスティックフィルムでは、シュリンクフィルム(国内ではトップレベルまで成長、身近な商品ではペットボトル飲料を覆っている商品名やロゴなどプリントしているフィルム、飲料ペットボトルやボトル洗剤など身近な生活消耗品に多く利用されている)、ナイロンフィルム、OPPフィルム(野菜やお菓子などの包装フィルムとして利用されており、ガスバリヤ性や穴があきにくい特性があり、食品メーカー、菓子メーカーに採用されている。)、軟質多層シート(工業材料や壁紙)、機能チューブ・多層チューブ(加熱することで収縮するチューブ)など環境負荷の低い包装全般への取組がなされており、増収基調となっている。
アパレル事業においてはインナーウエア、レッグウエア、ハウスカジュアルウエアや繊維資材を取り扱っている。ボクサーブリーフとしてのジャンルを確立させ、男性下着に高いファッション性を持ち込んだ「BODY WILD」、肌とワイシャツの間でコンディションしてくれるインナー「YG」、着心地と清潔感を追求した下着「快適工房」などの主要ブランドや、完全無縫製インナー「KIREILABO」、ベーシックインナー「Tuché」など、各世代に向けたブランドを展開している。
ライフクリエイト事業では、スポーツクラブ事業、遊休地を利用した商業デベロッパー事業、環境ビジネスなどでを行っており、兵庫県尼崎市の大型商業施設『グンゼタウンセンター つかしん』の運営が中心となっている。

強みと弱み

技術力を軸とした多角化が容易である点が同社の強みであると言える。これまでも、蚕糸から下着へ、下着からアパレルへ、糸やアパレルからできた技術を包装分野へと多角化を繰り返し成功してきた。
同社の事業領域には各分野でシェアの優位性の他、研究開発や製造、販売面で有力な競合他社が存在しており、分野によっては後発となっていることが同社の弱みといえる。機能ソリューション事業での競合他社として、タキロンシーアイ㈱等があげられるが、同社は繊維事業が出発点であり、繊維加工技術と樹脂加工技術に加え、そのそれぞれの特性を生かした表面加工技術も特徴と考えられ、建材系化学加工メーカーとの違いを生かし、それぞれの事業分野でオンリーワン企業となれるかが今後の業績を大きく左右すると思われる。また「M&A活用による事業拡大」「新規テーマ創出の仕組の構築」により新規事業創出を掲げており、下着メーカーからの脱却ができるかが鍵となってくる。

KPI

下着のweb検索順位がKPIの一つになりうるだろう。2021年1月現在グーグル検索において、「下着 男」というキーワードでは同社サイトが楽天市場に次ぐ第二位で表示される。一方で「下着 女」というキーワードではセシール、ニッセン等の通販事業者、ワコール等の女性下着メーカーに後塵を拝し、1ページ目に表示されず、SEO対策はあまり上手くいっていないと言えるだろう。

懸念点

事業の選択と集中をしなければならない時期が迫っていることが懸念点として挙げられるだろう。「機能ソリューション事業」、「アパレル事業」、「ライフクリエイト事業」の売上高構成比率(2020年3月期)はそれぞれ40%、49%、11%であり、営業利益構成比率は61%、27%、12%となっている。これは、アパレルで売上高の数値を作り、利益は機能ソリューションで稼ぐ構図を表している。創業120年の老舗企業の経営陣の舵取りは要注目であるといえよう。