3496 アズームの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

アズームの事業概要

同社は2009年10月に東京都渋谷区において設立され、月極駐車場紹介サービス及び月極駐車場サブリースサービスを開始した。その後は横浜、福岡、大阪にブランチ、事務所を開設し、2018年9月に東証マザーズへの上場を果たした。その後は名古屋や札幌にもブランチを開設し、2019年3月に建築内装CGパース製作のCGworksを設立、2019年8月にAZOOM VIETNAMINCをベトナム社会主義国ハノイ市に設立している。2019年9月には貸し会議室運営サポートを提供するWEB予約システム「スマート会議室」の事業譲受を行っている。これまでリリースした事業としては、月極駐車場検索ポータルサイト「カーパーキング」、東京23区特化型月極駐車場検索「カーパーク」、空き家ナビ、使用していない時だけ貸し出す「おうちdeパーキング」、「バイク月極駐車場検索Bikeru(バイクル)」が挙げられる。駐車場は「月極駐車場」と「時間貸し駐車場」に区分されるが、同社のサービスは「月極駐車場」に特化している。

同社の大株主としては代表取締役である菅野洋司氏(35.8%)、株式会社パノラマ(24.6%)が挙げられる。大量保有報告書を見ると、パノラマ社は菅野氏の共同保有者と記載されており、菅野氏とパノラマ社の持分比率を合計すると60.4%と過半数を超えるため、菅野氏の影響力の強さが読み取れる。
同社の役員は10名おり、取締役7名と監査役3名で構成されている。創業者である菅野氏は代表取締役社長であるが、リクルートコスモス社やヒューリック社出身の高橋崇晃氏が代表取締役副社長として在籍している。その他5名の取締役の経歴としては、弁護士、公認会計士、日本興業銀行出身、ワークスメディア社出身、アズーム出身となっている。菅野氏は田島リフォーム社、日本駐車場開発社、ワークスメディア社で経験を積んだ後に同社を設立した経歴を持つ。
同社は遊休不動産活用事業、ビジュアライゼーション事業の2つの報告セグメントがある。同社グループは同社と非連結子会社2社で構成されている。売上高のサービス別内訳は、月極駐車場サブリースサービス(遊休不動産活用事業)が85%、月極駐車場紹介サービス(遊休不動産活用事業)が12%、その他が3%である。
同社の時価総額は2018年9月の上場以降、16億円から80億円の間で推移しており、2020年12月時点では約71億円となっている。類似サービスを提供する企業の時価総額(2020年12月時点)は、日本駐車場開発(2353)463億円、日本商業開発304億円、エリアクエスト(8050)20億円、エリアリンク(8914)129億円となっている。

月極駐車場紹介サービス

同サービスはユーザーが求める駐車場を紹介し、オーナーより申込書等を取り寄せ、ユーザーに案内することにより、駐車場オーナー及びユーザーから手数料収入を得るビジネスモデルである。同社の月極駐車場のポータルサイト「カーパーキング」はエリア・駅からの絞り込みをはじめ駐車場賃料や設備等による検索機能を有しており、月極駐車場を探しているユーザーのニーズに合った駐車場を探すことができる。また、利用を希望する駐車場が具体的に決まっていないユーザーに対しても、ニーズをヒアリングし、最適な駐車場を探索したうえで、ユーザーへの提案を行うことができる点に強みがある。「カーパーキング」のメディア価値を向上させ、ユーザーの利便性を高めることが、問い合わせ件数の増加につながり、収益機会が増えることになり、紹介サービスの売上増加につながる。問い合わせを実際に対応するのは同社の営業人員であることから、営業人員の適切な採用・教育の重要性は高いと言えるだろう。2015年9月期の問い合わせ件数は45,564件であったが、2019年9月期には159,143件に増加しており、今後の伸長には注目すべきであるといえるだろう。

月極駐車場サブリースサービス

同サービスは、マンション及びオフィス等に設置されている駐車場において、借主が見つからず収益を生んでいない区画を、オーナーから同社がマスターリース(一括借上)を行うサービスである。日本の都心部では一定規模以上の建築物に駐車場を設置することが義務付けられているため、ニーズがないにも関わらず仕方なく設置されている駐車場が数多く存在する。オーナーにとっては、毎月一定の賃料が入金されることに加え、手間のかかる利用者の募集、ユーザーとの契約業務、賃料の督促対応、解約の対応、トラブル対応などを同社が行うといったメリットがある。一方で、目的地から遠く不便な駐車場を利用している人も多い。このミスマッチを解消する点に当該サービスの価値があると言えるだろう。同社にとっては、カーパーキングにて月極駐車場を探しているユーザーが同社に問い合わせをし、当該ユーザーに対してサブリース(貸付)を行うことによって、毎月安定的な賃料収入を獲得することができる。
また、同社が駐車場を買い取る場合は、駐車場オーナーの相続税対策としても有効である。土地や建物は、自分で所有しているより、自分の土地に他人所有の建物が建っている方が、不動産価値が低く評価されるためである。同社は基本的に駐車場の借上を行っているが、相続対策ニーズを斟酌して買取という選択をする可能性はゼロではないといえるだろう。

アズームの財務状況と経営指標

同社の売上高は、2015年9月期は510百万円であったが、毎年増加を続け、2020年9月期には23,742百万円(前期比+39.8%)となっている。同社は2020年9月期の業績について、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、従来よりも更にインターネットでの駐車場問い合わせ件数が増加し、駐車場紹介件数や稼働台数の増加に寄与したとコメントしている。同社の経常利益又は計経常損失は、2015年9月期には▲44百万円であったものの、2020年9月期には223百万円(前期比+48.6%)を記録し、売上高の増加と高い相関を有して伸長していることが読み取れる。
同社のROEは15.2%であるが、日本駐車場開発は13.7%、日本商業開発は14.0%、エリアクエストは10.3%、エリアリンクは▲10.0%である。当該企業群の大半が、コーポレートガバナンスの基準として大きな影響力を持つ「伊藤レポート」において日本企業が目指すべきとされるROE8%を上回っており、中でもアズームのROEが最も高いことが読み取れる。したがって、株主から見た収益性について、駐車場やその他の建物・不動産のサブリースサービス自体の収益性が高いことに加え、中でも同社の収益性が高いといえるだろう。また、同社の営業利益率は9.4%であり、日本駐車場開発11.6%、日本商業開発は7.1%、エリアクエストは10.2%、エリアリンクは10.3%である。全産業の営業利益率平均は3.0%、不動産業の営業利益率平均は13.7%である。これらを考慮すると、「売上高に対する本業の収益力」という視点において、不動産業界は収益力が高く、同社は同業界の中では収益性が高いとはいえないことが読み取れる。
同社のキャッシュ・フロー(以下、CFと表記)の見ると、2020年9月期の営業CFは366百万円、投資CFは▲63百万円、財務CFは▲36百万円である。また、2016年9月期以降の同社のCFを見ると、営業CFは38百万円から右肩上がりで伸長しており(2019年9月期を除く)、投資CFは▲5百万円からマイナスの値が増加を続け(2020年9月期を除く)、財務CFは▲36百万円から664百万円の間で推移している。直近5年間のフリー・キャッシュ・フロー(営業CF+投資CF)合計は224百万円である。C/S(キャッシュ・フロー計算書)からは、同社が本業で得た利益の大半を投資に回していること、2018年9月の東証マザーズ上場によって調達した資金686百万円の半分程度は投資に回されていないことが読み取れる。
同社の現金及び現金同等物の期末残高は、2016年9月末時点の21百万円から増加を続け、2020年9月末時点では1,078百万円となっている。同社の流動比率(流動資産÷流動負債×100)は336.07%、当座比率(当座資産÷流動負債×100。当座資産=現金及び預金+売掛金+受取手形)は335.98%であることから、同社が直ちに資金繰りが困難になることは想定しづらく、財務安全性は高いといえるだろう。

アズームのカタリスト

駐車場問い合わせ件数の動向が同社のカタリストになるといえるだろう。2017年9月期から2020年9月期にかけて、同社への駐車場問い合わせ1件あたりの駐車場受託率が4.95%から5.64%の間で推移している。同時期の駐車場問い合わせ件数は85,503件から186,547百万円に増加しており、月極駐車場サブリースサービスの売上高も1,048百万円から3,214百万円に増加している。問い合わせ件数と売上高に一定の相関が読み取れることから、同社の駐車場問い合わせ件数を素早く把握することが、同社の株価を予測するうえで有益な手段であるといえるだろう。