3479 TKP(ティーケーピー)の業績について考察してみた

3479 TKP(ティーケーピー)の業績について考察してみた

PERAGARU管理人

ティーケーピーの事業概要

同社は2005年に設立され、企業向けの空間シェアリングビジネスの先駆けとして貸会議室や宴会運営サービス事業を開始した。同社においては単な場所の提供のみならず、ホテル・宿泊研修事業、料飲・バンケット事業、イベントプロデュース事業、BPO事業等の周世辺サービスもワントップで提供できる体制が整っている。また。2019年5月においてはレンタルオフィス業界国内最大手の日本リージャスホールディングス株式会社を完全子会社化することでレンタルオフィス、コワーキングスペース等の管理・運営についても事業を広げた。
子会社については88社を連結子会社としており、そのうち2019年5月に取得した日本リージャスホールディングス株式会社とその子会社(以降、総称して「日本リージャス社」と呼ぶ)が55社、2019年9月に取得した台北雷格斯商務服務有限公司等の台湾子会社(以降、総称して「台湾リージャス社」と呼ぶ)が13社であり、2020年2月期において連結子会社が大幅に増加している。その他、貸会議室・宴会場運営サービスを行う株式会社コンビニステーションやビル管理を行うTKPプロパティーズ、コールセンター受託を行う株式会社TKPコミュニケーションズ、宿泊施設等の資産を所有する株式会社TKPSPV-1号等の特別目的事業体(SPV)等を連結子会社としている。
同社の報告セグメントは「空間再生流通事業」の単一セグメントとなっているが、内訳として貸会議室・宴会場運営サービス、オプションサービス、料飲サービス、宿泊サービス、その他サービスの販売実績の内訳を公表している。中でも貸会議室・宴会運営サービスが売上の多くを占めており、同事業が同サービスが同社の中核事業といえる。

貸会議室・宴会場運営サービス

同社における貸会議室・宴会運営サービス事業は遊休不動産として活用されていない物件を取得又は借上げて借手に貸付を行うビジネスである。同社の貸会議室サービスは全国展開されており、直営会議室は2500室超で全国でも最大の貸会議室数を誇る。また、同社の主な売上先はソフトバンク<9434>や富士通<6702>、清水建設<1803>といった様々な業種の大手企業が中心であり、顧客基盤は安定している。
同業種の上場会社では、ダイビル株式会社<8806>や株式会社リログループ<8876>等も不動産賃貸管理業務の一環として貸会議室の運営を行っている会社もあるが、ティーケーピーのように貸会議室の貸付に特化した上場企業は無い。また、国内最大の貸会議室検索サイト「会議室.COM」を運営するアスノシステム株式会社は上場しておらず、同社はシステム開発やサイト運営運営を行う会社である。

日本リージャス社の取得について

同社は前述の通り、2019年5月に日本リージャス社を取得している。日本リージャス社は、もともとスイスに本社を置き、ロンドン証券取引所に上場しているIWG plc(以降IWGと呼ぶ)とその子会社であるRegus Group Limited(以降Regus社と呼ぶ)が株式を保有してていた。IWGはシェアオフィス世界 No.1 ブランド「Regus」や「Open Office」、「Spaces」などの多様なブランドを展開しており、世界最大のワークスペースプロバイダーとして、グローバルに展開をしている。日本リージャス社は同ビジネスのうちの日本事業として約140拠点のシェアオフィスを展開する日本のレンタルオフィス業界の最大手企業でである。ソフトバンクが出資したことで話題となった「WeWork」も20拠点程度であり、三井不動産が展開する「Work Styling」も約40拠点であり、国内のシェアオフィス業界においては、群を抜いた拠点数となっている。なお、日本リージャス社が展開する「Regus」は高級路線のシェアオフィスであり、「Open Office」は有人受付無しで価格を抑えたシェアオフィス、「Spaces」は人との繋がりを重視したシェアオフィスという特徴がある。
ティーケーピーは取得時点で資産、負債の純額が4,517百万円の日本リージャス社株式のすべてを42,383百万円で子会社である株式会社TKPSPV-10号を通じてIWGとRegus社から取得しており、37,866百万円ののれんを計上している。2019年2月期におけるティーケーピーの総資産は51,066百万円であったことを鑑みても同社にとって相当大きな買収であったことがわかる。
2020年2月期においては、日本リージャス社における全施設の平均稼働率は75.9%と高水準で推移しており、売上高は12,843百万円、営業利益(のれん償却費等調整後)は543百万円と、のれん償却費をこなした上で営業利益を計上できている。また、ティーケーピーが展開する事業と日本リージャス社が展開する事業とでは、共同出店及び当社既存施設の転換による拠点ネットワークの拡大と両社のリソースを融合することによる顧客サービスの向上が図れることから今後も更なるシナジー効果が期待できる。一方で、発生した多額ののれんの償却費が費用として今後20年費用として発生してくること、日本リージャス社株式の取得の7割以上が有利子負債によって賄われていることから利息負担も大きくなっている、今後日本リージャス社の業績低迷は許されない状況となるであろう。

宿泊サービス

同社における宿泊サービス事業はリゾートセミナーホテルとして「LecTore(レクトーレ)」、新都市型ホテルとして「アパホテル」等の宿泊施設を展開している。「アパホテル」については2014年にアパホテル株式会社とフランチャイズ契約を締結し「アパホテル〈TKP札幌駅北口〉EXCELLENT」をはじめに、現在ではビジネス需要に対応し、会議室併設型のハイブリッドホテルとして10物件の運営を行っており、貸会議室・宴会場運営サービスと併せて提供することでシナジー効果を図っている。
また、同社における宿泊サービスに関する物件は、同社が不動産オーナーから遊休施設を取得して運用を行っている物件、不動産オーナーから直接同社が借上げて運営を行っている物件、株式会社TKPSPV-1号等の特別目的事業体(SPV)が物件を取得し、同社が借上げて運営を行っている物件等所有形態は様々である。

ティーケーピーの財務状況と経営指標

財務状況を見ると2020年2月期においては総資産は前期末比較で66,407百万円増加の117,473百万円となった。総資産の主な増加要因としては、日本リージャス社、台湾リージャス社取得に伴いのれんが39,559百万円増加したことが要因であり、その他有形固定資産が14,090百万円増加している。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末20.6%から当期末30.0%と前期と比べ改善している。これは、1,743百万円の当期純利益を計上し23,418百万円の新株発行を行った一方、日本リージャス社、台湾リージャス社取得等に伴う29,426百万円借入金の増加をはじめ、負債が41,368百万円したことによるものである。有利子負債は64,297百万円であり、有利子負債比率は228.5%とやや高い水準であるため、財政状況に余裕がある状況というではない。有利子負債比率が高いことは業績が好調である際はレバレッジが効くことによりさらに業績を上昇させるため一概に悪いとは言えないが、業績が悪化している局面では資金繰りに問題が生じてくる可能性がある。同社においては、新型コロナウイルスの影響により貸会議室・宴会場運営サービス等の売上が急激に減少しており、資金繰りに注意が必要であると考えられる。
また、収益性については売上高は前期から18,820百万円増の54,343百万円、営業利益は前期から2,036百万円増の6,325百万円、営業利益率は前期12.07%から11.64%に下落している。これは日本リージャス社、台湾リージャス社を除く従来の売上高が5,671百万円、営業利益が1,582円それぞれ増加し、日本リージャス社、台湾リージャス社取得に伴う売上高が13,149百万円、営業利益が454百万円それぞれ増加したものによるものである。営業利益率が低下した原因としては、日本リージャス社、台湾リージャス社取得に伴いのれんが多額に発生したことにより、のれん償却額が前年比で1,496百万円増加したことが影響していると考えられる。

ティーケーピーの資金繰り

同社においては有利子負債への依存度が高くなっており、2020年2月期における総資産の約20%にあたる25,000百万円の長期借入金について財務制限条項が付されている。この条項に抵触した場合、当該長期借入金の一括返済を求められることとなるため、資金繰りに大きな懸念を残している。また、当該財務制限条項は2020年1月付で締結したシンジケートローン契約に付されているものであり、昨今の新型コロナウィルスによる業績への影響は見込まれていない状況で設定されている条項であると考えられることから、次回財務制限条項への抵触を判定することとなる2020年8月期の半期決算の際には注意が必要となる。

ティーケーピーの財務制限条項付シンジケートローンについて

当該財務制限条項を要約すると、①半期ごとに計算されるネットレバレッジ・レシオ((ネット有利子負債残高-(売掛金+在庫-買掛金))/(営業利益+減価償却費(リース減価償却費を含む)+のれん償却費+長期前払費用償却費+買収関連費用-リース負債返済 額) が一定の数値以下となること、②連結純資産が直前半期の80%以上かつ247億円以上に維持すること、③半期ごとに計算される連結の純資産割合(純資産/総資産)を30%以上に維持すること、④半期ごとの連結ベースの経常損益が赤字とならないことの4点である。
①については公表されている数値のみでは算出することは難しいが、2020年2月期時点での基準値は高く設定されているものの、営業利益が減少するとネットレバレッジ・レシオが高く算出されることとなり、財務制限条項へ抵触の可能性が出てくる。また、半期ごとに基準値となる数値が厳しくなっていくため、直近で条項に抵触しなくとも業績を上昇させなければ長期的にはどこかのタイミングで条項に抵触する可能性がある点に留意が必要である。②については、2020年2月期において連結純資産は358億円であることから直ちに抵触する恐れはないと考えられるものの、減損損失が多額に発生する場合には抵触のおそれがある。③については資金調達方法を調整することである程度コントロール可能であると考えられるが、2020年2月期現在純資産割合が30.5%であることを鑑みると、今後オープンする施設の資金調達方法に一部制約を与えることとなり、増資が必要となる可能性もある。④については、2020年2月期において経常利益は4,761百万円であり、2020年2月期においては、日本リージャス社取得等に係る一時的な支払手数料や資金調達コストが発生しているため、2021年2月期においては当該コストが発生しなくなるためその分費用が減少する。一方で同社のビジネス上、物件の賃借料、減価償却費やのれん償却費等固定費が比較的多く存在すると考えられ、新型コロナウィルス感染拡大に伴うイベント自粛要請等の影響で、2月の月次売上高は貸会議室だけで前年同期比で226百万円減少している。3月以降も売上が大きく減少している可能性が高く、宿泊サービスについても売上が減少している考えられるため、当該条項に抵触しないかに留意する必要があるであろう。また、当該シンジケートローンについて借換を行うことも考えられるが、利率や貸出期間等の貸出条件が現在のローンよりも厳しいものになる可能性が高いと考えられる。

ティーケーピーの資金繰り対応策

当該資金繰り悪化に備え同社は、2020年4月にみずほ銀行と5,000百万円のコミットメントライン契約及び、三井住友銀行と10,000円の特殊当座借越契約を締結して借入の枠を設定することで機動的に資金調達できるようにしている。また、2020年4月に、アパホールディングス株式会社とティーケーピーの連結子会社である株式会社TKPSPV-3号および株式会社TKPSPV-4号との間で総額1,800百万円の優先株式引受に関する基本合意書を締結し、アパホールディングス株式会社に同子会社の優先株式を引受けてもらうことにより、資金を確保している。2020年2月期の財政状況に当該優先株式の引受を加味させると、純資産割合は32.0%となる。

ティーケーピーのカタリスト

ティーケーピーのカタリストとしては、前述の通り資金繰りを鑑みると財務制限条項への抵触の有無の観点から、2021年2月期第2四半期(2020年8月期)決算が意識される。また、途中経過として2021年2月期第1四半期(2020年5月期)決算内容が新型コロナウィルス感染拡大に伴うイベント自粛要請等の影響が同社に与えた影響を計る上で重要となり、同社のカタリストとなるであろう。
一方で、中長期でオフィスの貸付を行う日本リージャス社のシェアオフィス事業においては、新型コロナウィルス感染拡大に伴う影響は貸会議室・宴会場運営サービスよりも小さいと考えられることから、同社は需要が継続的に見込める時間貸オフィスを事業の中心に据えるとしている。また、既存会議室もコロナ禍で需要が見込まれる「一時的な分散型オフィス」として展開しており、コロナ禍で働き方改革が加速する中、サテライトオフィス等を増設する会社の需要を取り込むことで今後売上を伸ばす余地もあるため、直近の業績悪化や資金繰りの悪化を乗り越えた際には株価の上昇も期待できる。
同社の株価は新型コロナウイルス感染拡大前と比べ低い水準で推移しており、前述の懸念が解消されることで短期的に株価の急上昇を狙える可能性があるが、一方で急激に株価が下落する可能性も存在する。同社の株式を取得する際はハイリスク・ハイリターンな投資であることを理解し、適時開示等により同社の状況を定期的にモニタリングしていくことが必要となるであろう。