4080 田中化学研究所の業績について考察してみた

4080 田中化学研究所の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2024.Q3 2023.12 11,311 477 4.22%
FY2024.Q4 2024.03 12,062 517 4.29%
FY2025.Q1 2024.06 9,449 1,081 11.44%
FY2025.Q2 2024.09 9,344 17 0.18%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q4 2017.03 3,324 25 0.75%
FY2018.Q1 2017.06 5,107 259 5.07%
FY2018.Q2 2017.09 3,882 114 2.94%
FY2018.Q3 2017.12 6,168 282 4.57%
FY2018.Q4 2018.03 6,256 75 1.2%
FY2019.Q1 2018.06 7,721 220 2.85%
FY2019.Q2 2018.09 9,167 -1 -0.01%
FY2019.Q3 2018.12 8,826 -121 -1.37%
FY2019.Q4 2019.03 6,918 -592 -8.56%
FY2020.Q1 2019.06 5,161 -153 -2.96%
FY2020.Q2 2019.09 5,525 -238 -4.31%
FY2020.Q3 2019.12 4,801 -372 -7.75%
FY2020.Q4 2020.03 4,586 -602 -13.13%
FY2021.Q1 2020.06 4,166 -351 -8.43%
FY2021.Q2 2020.09 5,829 532 9.13%
FY2021.Q3 2020.12 5,782 -258 -4.46%
FY2021.Q4 2021.03 6,977 57 0.82%
FY2022.Q1 2021.06 9,749 339 3.48%
FY2022.Q2 2021.09 9,690 281 2.9%
FY2022.Q3 2021.12 8,817 19 0.22%
FY2022.Q4 2022.03 12,275 186 1.52%
FY2023.Q1 2022.06 15,251 1,167 7.65%
FY2023.Q2 2022.09 14,801 655 4.43%
FY2023.Q3 2022.12 14,584 682 4.68%
FY2023.Q4 2023.03 13,036 -731 -5.61%
FY2024.Q1 2023.06 13,061 1,348 10.32%
FY2024.Q2 2023.09 11,553 429 3.71%
FY2024.Q3 2023.12 11,311 477 4.22%
FY2024.Q4 2024.03 12,062 517 4.29%
FY2025.Q1 2024.06 9,449 1,081 11.44%
FY2025.Q2 2024.09 9,344 17 0.18%

沿革

1957年12月、田中忠義氏が大阪市に株式会社田中化学研究所を設立、フェライト用炭酸マンガンの生産開始。1973年12月には電池材料の一種である水酸化ニッケルの販売を開始。1986年8月にニッケルカドミウム電池用の高密度水酸化ニッケルを、1991年10月にはニッケル水素電池用高密度水酸化ニッケルを生産開始。その後も1995年8月のリチウムイオン電池用酸化コバルトの生産開始、2003年8月の三元系正極材料の生産開始など、電池材料の開発・生産・販売を事業としており、特に二次電池(充電によって繰り返し使用できる電池)に強みを見せる。2000年2月に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、ジャスダック証券取引所上場、大証JASDAQ上場を経て2013年7月に東証JASDAQ上場。現在は同スタンダード。2016年10月、第三者割当による新株式発行で住友化学株式会社の子会社となる。

株主構成

四半期報告書によると、2022年9月末時点での筆頭株主は親会社の住友化学株式会社で50.43%保有。以下は5%未満の保有率で、代表取締役社長や取締役会長などを歴任した名誉顧問の田中保氏、取締役の田中浩氏、執行役員の田中学氏など創業者一族の他、国内外の金融機関などが続く。2022年6月27日付のコーポレート・ガバナンスに関する報告書によると、外国人株式保有比率は10%未満

取締役会

取締役は7名(社内3名、社外4名)、うち3名は監査等委員(全員社外、1名は常勤)、監査等委員会設置会社である。代表権を持たない社内取締役のうち、1名は住友化学株式会社役員と兼任、他1名は東京海上火災保険株式会社(現東京海上ホールディングス株式会社)出身。社外取締役には、非鉄金属メーカーの三宝伸銅工業株式会社元代表、住友商事株式会社元幹部、弁護士、公認会計士が就任。

代表取締役の経歴

代表取締役社長執行役員の横川和史氏は1961年3月生まれ。東北大学修士課程修了後、1985年4月に住友化学工業株式会社(現住友化学株式会社)入社。大阪工場長などを経て、2019年4月に入社。同年6月より現職

報告セグメント

「二次電池事業」の単一セグメントであるが、用途別に「リチウムイオン電池向け製品」及び「ニッケル水素電池向け製品」に大別される。2022年3月期の外部顧客への売上高40,531百万円の構成比は、リチウムイオン電池向け製品93.7%、ニッケル水素電池向け製品5.8%、その他0.5%とリチウムイオン電池向け製品が主力。地域別では日本47.9%、韓国27.2%、中国21.1%、ヨーロッパ3.8%と、国内とアジアが主要市場。売上高の10%以上を占める主要顧客は、パナソニック株式会社(41.9%)、丸紅株式会社(21.1%)、STM Co., LTD.(10.7%)と、特定顧客への依存度が極めて高い(上位3社で7割以上)

事業モデル

二次電池の正極部分に使用される材料の開発・生産に特化している。二次電池は携帯電話・スマートフォンからEV・HVまで多様な場面で使用されており、小型化や大容量化などの高性能化と同時に低コスト化も重要な課題である。リチウムイオン電池の正極材料にはコバルトが使用されてきたが、その普及に伴いコバルトの需要が急増したため他元素による代替が望まれていた。同社の代表的な製品である三元系正極材料は、より豊富で安価なニッケルならびにマンガンを利用することでコバルト使用量を低減している点が特長。その他、リチウムイオン電池用ニッケル系材料、ニッケル水素電池用水酸化ニッケルなども生産。生産拠点は福井工場に集約。

公式ウェブサイト内「製品情報」

競合他社

4100戸田工業(株)(売上高35,332百万円)が、「電子素材セグメント」(売上高22,226百万円)でリチウムイオン電池用正極材料を扱う点で競合し得る。

連結の範囲

親会社の住友化学株式会社の他は、子会社もしくは関連会社を持たない。

強み・弱み

EV・HVの普及は今後ますます加速すると予想され、それに伴い駆動用バッテリー及びその材料の需要増も期待される点は追い風。省コバルト化の流れから、今後の主流となり得る三元系正極材料に関して、日米で特許を取得するなど高い技術力も強み。EV・HV向けが堅調な一方で、スマートフォンなどの民生用途は需要が頭打ち。少数の特定顧客への依存度が高い点、生産拠点が福井工場1ヶ所の点もリスク集中傾向。

KPI

販売数量、原材料価格、為替などが主要KPIと見られる。コロナ禍からの回復過程では、特に主力の車載向けリチウムイオン電池用材料の伸びが著しかったものの、直近1年間は半導体不足による自動車生産停滞の影響で伸び悩み。また、コバルトやニッケルなどの原材料価格($)高騰は一段落したものの、円安は引き続き懸念材料

2023年3月期第2四半期 決算説明資料 p.7
2023年3月期第2四半期 決算説明資料 p.21

業績

2012年3月期~2022年3月期の10年間で売上高を4倍近くへ伸ばすなど、順調に業容を拡大。利益面では2018年3月期に7期ぶりに黒字化を果たしたものの、以後は3期連続の赤字。2022年3月期は再度黒字転換し、売上高40,531百万円(前期比+78.1%)、営業利益825百万円(前期比+845百万円)、経常利益769百万円(前期比+799百万円)であった。2023年3月期第2四半期も引き続き好調で、売上高30,052百万円(前年同期比+54.6%)、営業利益1,822百万円(同+193.9%)、経常利益1,646百万円(同+180.4%)となった。営業CFは年度によりマチマチ、投資CFは概ねマイナスで推移。2023年3月期第2四半期の自己資本比率は37.8%。

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