4100 戸田工業の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1933年11月、磁器の絵付けや漆器、歴史的建造物等に欠かせない顔料である弁柄(酸化鉄赤)の製造販売を目的とする戸田工業株式会社として広島に設立。フェライト材料へも展開し、1963年2月に広島証券取引所に上場。その後、自社開発のナノテクノロジーを強みに磁気記録材料やトナー用材料等で業容を拡大。1982年に東証二部に上場し、1983年9月には東証一部に変更。2019年1月、電子素材事業を中心とした新商品の開発等での協業を目的にTDK株式会社の持分法適用関連会社となった。

株主構成

有価証券報告書によると2020年9月期末時点の大株主は、筆頭株主のTDK株式会社が21.8%、次いで日本マスタートラスト信託銀行の信託口4.3%、広島銀行3.7%、インタラクティブブローカーズエルエルシー(常任代理人)3.4%、日本カストディ銀行(三井住友信託再信託分TDK退職給付信託口)3.4%。外国人株式保有比率は10%未満。

取締役会

取締役は7名(社内4名、社外3名)、監査役4名 (社内1名、社外3名)、監査役設置会社である。代表取締役社長を除く3名の社内取締役はいずれもプロパー社員とみられる

代表取締役の経歴

代表取締役社長執行役員の寳來 茂氏は1960年5月生まれ。京都大学工学部を卒業後、1984年4月同社へ入社。執行役員、専務執行役員、代表取締役副社長等を歴任後、2019年6月に代表取締役社長執行役員に就任した

報告セグメント

報告セグメントは、機能性顔料、電子素材の2報告セグメント。2021年3月期第3四半期決算の売上高20,372百万円の構成比は、機能性顔料41.8%、電子素材58.2%。機能性顔料は、各種着色顔料、複写機・プリンタ向けのトナー用材料やキャリア(トナーを運ぶ高機能部材)、環境機能材料、触媒材料等を幅広く提供。電子素材は、モーター向け等の各種磁石材料、磁気カード、デジタルテープ用材料が主な製品。2020年3月期の海外売上高比率43%。大部分を外貨建てで輸出。米国の比率が高く、次いで中国、東南アジア、欧州、韓国、その他地域へ販売。

事業モデル

ナノスケールでの無機材料の合成技術を応用した素材を、塗料、複写機・プリンタ、家電・通信機器、自動車、環境・住生活、と幅広い分野に提供している。主な販売先は、電極材料など機能性材料メーカーである関西触媒化学株式会社、国内トップシェアの塗料メーカーである日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社、複写機・プリンタ用の化成品メーカーである上野キヤノンマテリアル等。

競合他社

リチウムイオン二次電池等に使われる正極材料で高いシェアを有する4080田中化学、複写機・プリンタ等で利用される「電子写真用キャリア」大手の5695パウダーテック等

連結の範囲

グループは、同社及び関係会社であるTDK株式会社の他、連結子会社16社、持分法適用関連会社6社。連結子会社は、国内の製造子会社の他、欧州、米国、カナダ、中国、韓国の販売子会社や製造子会社。

強み・弱み

強みは、①湿式合成法から始まるナノテクノロジー、②無機材料に関する豊富な経験と知識、③TDK株式会社の販売力・顧客資産。湿式合成技術は物質を原子レベルの大きさで制御し、結晶の形、形状・磁性・色等を自在に設計でき、多様なニーズに応えることが可能。また、研究開発に携わる技術者が従業員全体の3分の1を占め、酸化鉄を始めとする無機材料の研究開発で190年の歴史を持つ。
一方、弱みは、基幹事業と位置付ける磁石材料や各種着色顔料等が景気の影響を受けやすいこと。このため、次世代自動車用途(ポンプ、センサ等)の磁石材料、独BASF社等との提携による電気自動車・ハイブリッド自動車向けLIB正極材料、5GやCASEによる市場拡大が期待できる誘電体材料を戦略事業と位置づけ、力を入れている。

KPI

同社は経営目標として、2023年3月期の連結売上高450億円を掲げている。その原動力となるのが戦略事業であり、同事業の売上高を、2020年3月期の159億円から200億円に拡大させたい考え。このため、戦略事業の売上高の推移がKPIになり得る。

業績

LIB正極材料の拡大や堺化学工業株式会社との協業効果による塩ビ安定剤向け材料の売上増等で、2020年3月期までの5年間で、売上高は16.2%増加した。ただ、利益の源泉となる基幹事業の振幅が大きかったことや、グループ再編等で、営業赤字を2度、最終赤字を4度計上。このため、自己資本比率が41.0%から26.2%に低下したが、製造設備の近代化やLIB正極材料・塩ビ安定剤向け材料等での大型投資を吸収して、5期間合計のフリーキャッシュ・フローは1,065百万円の黒字を確保。