4080 田中化学研究所の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1957年12月大阪市に株式会社田中化学研究所を設立、フェライト用炭酸マンガンの生産開始。1973年12月には電池材料の一種である水酸化ニッケルの販売を開始し、1986年8月にニッケルカドミウム電池用の高密度水酸化ニッケルを、1991年10月にはニッケル水素電池用高密度水酸化ニッケルを生産開始。その後も1995年8月のリチウムイオン電池用酸化コバルトの生産開始、2003年8月の三元系正極材料の生産開始など、電池材料の開発・生産を事業としており、二次電池(充電によって繰り返し使用できる電池)使用される物質に特化。2000年2月に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、ジャスダック証券取引所上場、大証JASDAQ上場を経て2013年7月に東証JASDAQ上場。2016年10月、第三者割当による新株式発行で住友化学株式会社の子会社となる。

株主構成

四半期報告書によると、2020年9月末時点での筆頭株主は親会社の住友化学株式会社で50.43%保有。以下は5%未満の保有率で国内外の証券会社、銀行、機関投資家などが続く。同社関係者では、最高顧問で前会長の田中保氏が2位で3.89%、取締役の田中浩氏が5位で0.92%保有している。外国人株式保有比率は10%未満

取締役会

取締役は8名(社内4名、社外4名)、うち3名は監査等委員(全員社外、1名は常勤)、監査等委員会設置会社である。社内取締役4名中の3名が住友化学株式会社もしくは住友商事株式会社出身で、他1名は東京海上火災保険株式会社(現東京海上ホールディングス株式会社)出身。社外取締役は、非鉄金属メーカー元代表、住友商事株式会社出身者、弁護士、公認会計士など。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の横川和史氏は1961年3月生まれ。東北大学を卒業後、1985年4月に住友化学工業株式会社(現住友化学株式会社)入社。大阪工場長などを歴任後、2019年4月に同社入社。同年6月より現職

報告セグメント

「二次電池事業」の単一セグメントであるが、電池の種類別に「リチウムイオン電池向け製品」と「ニッケル水素電池向け製品」に大別される。有価証券報告書によると、2020年3月期における売上高20,074百万円の構成比は前者が17,856百万円で89.0%、後者が2,164百万円で10.7%、その他が54百万円で0.3%。国別構成比は日本が50.8%、韓国が32.4%、中国が16.8%。なお、二次電池とは充電によって繰り返し使用できる電池を指す。

事業モデル

二次電池の正極部分に使用される物質の開発・生産に特化している。二次電池は携帯電話・スマートフォンから電気自動車・ハイブリッド車まで多様な場面で使用されており、小型化や大容量化などの高性能化と同時に低コスト化も望まれている。リチウムイオン電池の正極材料にはコバルトが使用されていたが、その普及に伴いコバルトの需要が急増したため他元素による代替が望まれていた。同社の代表的な製品である三元系正極材料は、より豊富で安価なニッケルならびにマンガンを利用することでコバルト使用量を低減している。他にもリチウムイオン電池用ニッケル系材料やニッケル水素電池用水酸化ニッケルなども生産しており、パナソニック(株)、韓国L&F Co., LTD.、丸紅(株)などの電池メーカーや商社へ供給している。生産は福井県の福井工場一カ所。

製品情報(公式ウェブサイト)

競合他社

4100 戸田工業(株)が、リチウムイオン電池用正極材料を扱う「電子素材」セグメントで競合。売上高29,024百万円、うち電子素材セグメントが16,712百万円(2021年3月期)。なお、同期の同社売上高は22,754百万円。

連結の範囲

連結の対象となる子会社を持たない。

強み・弱み

電気自動車・ハイブリッド車の生産は今後ますます加速すると予想され、それに伴い車載用途(駆動用バッテリー)及びその材料の需要も増大すると期待される。省コバルト化の流れから、今後の主流となり得る三元系正極材料に関して、日米で特許を取得するなど高い技術力も強み減価償却費負担や労務費の増加が経営を圧迫している点は弱み。車載用途が堅調な一方で、スマートフォンなどの民生用途は需要が頭打ちで不振。二次電池の製造では中国ならびに韓国のシェアが大きく、同社の売上の50%近くがこれら2国向けである。将来的には、これら2国が電池材料の調達を自国内に切り替える可能性があり、その場合には売上の減少が懸念される。

KPI

製品(正極材料)の販売数量が主要なKPIとみられる。民生用途はリチウムイオン電池向け、ニッケル水素電池向けともに頭打ち。車載用途では近年リチウムイオン電池向けが急拡大するとともに、相対的に安価であることと性能向上も図られたためニッケル水素電池の需要が再度増し、同電池向けの材料も伸びている。

販売数量(2020年3月期決算説明会資料)

業績

売上高は増加傾向にあるが、2016年3月期より2021年3月期までの間、2018年3月期を除いては赤字が続いている。2021年3月期は、営業損失20百万円 (前期は1,365百万円の赤字)、経常損失30百万(前期は1,503百万円の赤字)であった。営業CF、投資CFともにマイナスで推移。直近決算期の自己資本比率は37.2%。