4041 日本曹達の業績について考察してみた

4041 日本曹達の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

苛性ソーダの製法で特許を得た中野友禮氏が、苛性ソーダ及び塩素系漂白剤の一種であるさらし粉の製造を目的として、1920年2月に日本曹達株式会社を設立。1930年代には事業を拡大し日曹コンツェルンを形成するが、戦後の財閥解体により現在の同社の形態となり、1949年5月東証上場、2022年4月市場区分の見直しによりプライム市場に移行。1950年5月の三和倉庫株式会社の設立をはじめ多角経営に乗り出し、現在は化学品等の製造の他に流通や建設の分野も手掛ける

株主構成

有価証券報告書によると2022年3月末時点の筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行の信託口で保有割合12.93%。JP MORGAN CHASE BANK 385632が5.55%、日本カストディ銀行の信託口が5.21%で続き、以降は保有割合5%未満で8031三井物産、日本曹達取引先持株会、国内外金融機関、生保などが並ぶ。尚、大量保有報告書によると、ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社とその共同保有者の持分が5%を超えているとみられる。外国人株式保有比率は30%以上

取締役会

取締役は11名(社内7名、社外4名)、うち3名は監査等委員(1名は常勤で社内、2名は非常勤で社外)、監査等委員会設置会社である。社内取締役のうち1名は現みずほ銀行出身者。残りは全員プロパーとみられる。社外取締役は現みずほ銀行出身者、弁護士、公認会計士など様々である。

代表取締役の経歴

代表取締役会長の石井彰氏は1953年7月生まれ。慶應義塾大学を卒業後、1976年4月入社。取締役常務執行役員、代表取締役社長などを経て2021年4月より現職
代表取締役社長の阿賀英司氏は1963年1月生まれ。同志社大学を卒業後、1985年4月入社。執行役員化学品事業部長、同人事室担当、取締役執行役員などを経て2021年4月より現職

報告セグメント

「化学品事業」、「農業化学品事業」、「商社事業」、「運輸倉庫事業」及び「建設事業」の5セグメントからなる。2022年3月期売上高152,536百万円および営業利益11,930百万円の構成比は下図の通りで、化学品事業および農業化学品事業が柱となっており、全体の約6割を占める。

2022年3月期決算説明会資料

事業モデル

化学品事業ならびに農業化学品事業が製造部門の二本柱化学品事業では、様々な化学製品の原料を製造している。サプリメント市場の拡大に伴い需要が増加、また要求される品質管理レベルが非常に高く新規参入が困難な医薬品添加剤「NISSO HPC」や5G通信機器材料向けに需要が拡大している樹脂添加剤「NISSO-PB」や半導体フォトレジスト材料「VPポリマー」などを同事業の成長ドライバーと位置付けている。高付加価値製品の拡大により、営業利益率は6%弱程度に改善している。
農業化学品事業(アグリカルチャー)は農薬、殺菌剤、殺虫剤などが主な製品であり、世界のニッチ市場での拡販を推進している。新規農薬の開発費、委託試験費が高水準で推移していたことが同事業の利益率を圧迫していたが、製品の上市および主要殺虫剤「モスピラン」の欧州向け販売の堅調さなどを受け、営業利益率は10%台に改善している。人口増加により食糧需要は増加する中、作付面積の増加は限定的であり農薬による防除が増産に不可欠。農薬市場は中長期的な拡大が見込まれる。
製造部門以外では、連結子会社の日曹商事株式会社を中心とする商社事業が、製造部門2事業に次ぐ規模である。商社事業では同社グループの製品販売ならびに原材料の納入などを行っている。
2022年3月期の地域別の売上高は、日本が61.0%、アジア地域10.0%、欧州地域17.9%、北米地域7.9%、その他3.4%で、海外売上高比率は39.0%であった。

競合他社

事業が多角化しているため全事業的に競合する他社はないが、以下各社は酸・アルカリ及び塩素化合物の製造で競合する。
4042東ソー(2022年3月期売上高918,580百万円)で、競合する「クロル・アルカリ事業」の売上高は361,623百万円。
4023クレハ(同168,341百万円)で、競合する「化学製品事業」の売上高は26,157百万円。
4045東亞合成(2021年12月期売上高156,313百万円)で、競合する「基幹化学品事業」の売上高は70,312百万円。

連結の範囲

同社グループは、同社、子会社36社及び関連会社6社で構成されている。うち、日曹商事株式会社、ニッソーファイン株式会社、独NISSO CHEMICAL EUROPE GmbHの3社は特定子会社。日曹商事株式会社の売上高は、商社事業全体の売上高の90%以上を占める。NISSO CHEMICAL EUROPE GmbHは化学品及び農業化学品の販売を受託し、連結売上高に占める割合が10%を超えている

強み・弱み

製造のみならず、原材料の調達、製品の販売、原材料及び製品の輸送・保管まで自社グループ内において完結可能な点や、幅広い分野で特徴ある技術と製品を生み出すとともに、海外での販売比率を高め国際的な企業へと発展している点も強み。これは一方で、全売上に占める海外向け比率が30%以上を占める結果となり、為替変動リスクにより円高が進行した場合には収益を圧迫することとなる。

KPI

化学品事業及び農業化学品事業のサブセグメント別売上高はKPIのかわりとして参考となる。

2022年3月期決算説明会資料

業績

2018年3月期から2022年3月期までの業績をみると、売上高は140,000百万円~150,000百万円前後の間で推移。2022年3月期はコロナ禍により停滞していた経済活動の回復および原材料価格の高騰に伴う販売価格の上昇、円安などにより前期比9.4%の増収、2009年3月期以来の150,000百万円台の売上高となった。営業利益率は改善傾向で2018年3月期は4.5%だったが、2022年3月期は7.8%となっている。フリーCFは事業譲受に伴う支出等により投資CFのマイナス幅が大きくなった2019年3月期を除きプラス。2022年3月期末の自己資本比率は63.4%。近年は60%台での推移となっている

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