4041 日本曹達の業績について考察してみた

4041 日本曹達の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

苛性ソーダの製法で特許を得た中野友禮氏が、苛性ソーダ及び塩素系漂白剤の一種であるさらし粉の製造を目的として、1920年2月に日本曹達株式会社を設立。1930年代には事業を拡大し日曹コンツェルンを形成するが、戦後の財閥解体により現在の同社の形態となり、1949年5月東証上場。1950年5月の三和倉庫株式会社の設立をはじめ多角経営に乗り出し、現在は化学品等の製造の他に流通や建設の分野も手掛ける

株主構成

有価証券報告書によると2020年9月末時点で日本マスタートラスト信託銀行と日本カストディ銀行の信託口がそれぞれ6.73%と6.72%で上位を占める。5%以上を保有する安定株主はなく、三井物産株式会社が3.39%、同社取引先持株会が3.03%保有する他は国内外の金融機関や信託口などが占める。外国人株式保有比率は30%以上(32.88%)

取締役会

取締役は11名(社内7名、社外4名)、うち3名は監査等委員(1名は常勤で社内、2名は非常勤で社外)、監査役会設置会社である。代表取締役を含む社内取締役は全員プロパー。社外取締役は通信、金融の大手企業出身者、弁護士、公認会計士など様々である。

代表取締役の経歴

代表取締役会長の石井彰氏は1953年7月生まれ。慶應義塾大学を卒業後、1976年4月入社。取締役常務執行役員、代表取締役社長などを経て2021年4月より現職
代表取締役社長の阿賀英司氏は1963年1月生まれ。同志社大学を卒業後、1985年4月入社。執行役員化学品事業部長、同人事室担当、取締役執行役員などを経て2021年4月より現職

報告セグメント

「化学品事業」、「農業化学品事業」、「商社事業」、「運輸倉庫事業」及び「建設事業」の5セグメントからなる。決算短信によると、2021年3月期第3四半期の売上高93,049百万円の構成比(外部顧客への売上高ベース)は、化学品事業が26,809百万円で28.8%、農業化学品事業が27,305百万円で29.3%、商社事業が23,597百万円で25.4%、運輸倉庫事業が3,109百万円で3.3%、建設事業が6,183百万円で6.6%、報告セグメント以外のセグメントが、6,043百万円で6.5%であった。また、同期のセグメント利益4,714百万円の構成比は、化学品事業が1,456百万円で30.9%、農業化学品事業が741百万円で15.7%、商社事業が586百万円で12.4%、運輸倉庫事業が486百万円で10.3%、建設事業が919百万円で19.5%、報告セグメント以外のセグメントが、522百万円で11.1%であった。セグメント利益の面では化学品事業の構成比が高く、次いで建設事業。

事業モデル

化学品事業ならびに農業化学品事業が製造部門の二本柱。化学品事業では、様々な化学製品の原料となる酸・アルカリ、塩素化合物の他、近年はヘルスケア、環境、ICTに注力する。ヘルスケア製品は抗生物質の原薬や、錠剤のコーティング剤などに使用されるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等を扱う。HPCは商品名「セルニー」でサプリメントなどの食品用途でも利用される。環境製品は、プール等の殺菌消毒剤、廃水処理剤、ごみ焼却場の飛灰処理用薬剤などである。ICT(情報通信技術)製品は、半導体の製造過程で利用される高分子材料など。
農業化学品事業(アグリカルチャー)は農薬、殺菌剤、殺虫剤などが主な製品であり、畑作用除草剤「ナブ」及び殺菌剤「トップジンM」は40年以上のロングセラー
製造部門以外では、連結子会社の日曹商事株式会社を中心とする商社事業が、製造部門2事業に次ぐ規模である。商社事業では同社グループの製品販売ならびに原材料の納入などを行っている。
2020年3月期の地域別の売上高は、日本が66.6%、アジア地域8.3%、欧州地域15.5%、北米地域5.9%、その他3.7%、海外売上高比率は33.4%であった。

事業モデル(公式ウェブサイト内「株主・投資家情報」>「IRライブラリー」>「決算説明会資料」)

競合他社

事業が多角化しているため全事業的に競合する他社はないが、以下各社は酸・アルカリ及び塩素化合物の製造で競合する。なお、同社グループの年間売上高は144,739百万円(2020年3月期)。
4042 東ソー(株) 年間売上高786,083百万円(2020年3月期)で、競合する「クロル・アルカリ事業」の売上高は297,400百万円
4023 (株)クレハ 年間売上高142,398百万円(2020年3月期)で、競合する「化学製品事業」の売上高は24,331百万円
4045 東亞合成(株) 年間売上高133,392百万円(2020年12月期)で、競合する「基幹化学品事業」の売上高は58,495百万円

連結の範囲

同社グループは、同社、子会社38社及び関連会社7社で構成されている。うち、日曹商事株式会社、上越日曹ケミカル株式会社、独国NISSO CHEMICAL EUROPE GmbHの3社は特定子会社。日曹商事株式会社の売上高は、商社事業全体の売上高の90%以上を占める。上越日曹ケミカル株式会社は同社グループの化学品製造を、NISSO CHEMICAL EUROPE GmbHは化学品及び農業化学品の販売を受託している。除草剤の製造を行っていた日曹ビーエーエスエフ・アグロ株式会社は収益性の低下を理由に2021年3月30日付けで解散し、7月に清算完了予定である。

強み・弱み

製造のみならず、原材料の調達、製品の販売、原材料及び製品の輸送・保管まで自社グループ内において完結可能な点が強み。幅広い分野で特徴ある技術と製品を生み出すとともに、海外での販売比率を高め国際的な企業へと発展している点も強み。これは一方で、全売上に占める海外向け比率が30%以上を占める結果となり、為替変動リスクが増大した点は、円高が進行した場合には弱みとなる。

KPI

化学品事業及び農業化学品事業のサブセグメント別売上高はKPIのかわりとして参考となる。

2021年3月期 第3四半期連結決算概要

業績

2011年3月期から2020年3月期までの間、売上高は120,000百万円~150,000百万円の間で推移。経常利益は2016年3月期をピークに減少傾向にあったが、2020年3月期は回復し、営業利益8,135百万円(前期比+2.9%)、経常利益10,312百万円(前期比+16.0%)。恒常的に営業CFはプラス、投資CFはマイナスで推移。2021年3月期第3四半期の自己資本比率は63.3%。