4092 日本化学工業の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1893年9月に棚橋寅五郎が個人経営の棚橋製作所を東京麻布にて創業、1915年9月には日本製練株式会社へ改組し、クロム塩、珪酸ソーダ(ケイ酸ナトリウム)、硫酸アルミニウム、苛性カリ(水酸化カリウム)などを生産した。1907年7月に日本化学工業株式会社設立、顔料、バリウム塩、リン製品などを生産する。1935年12月に日本製練株式会社が日本化学工業株式会社を合併。その後、日本化学工業株式会社の分社化を経て、1944年3月には再統合し商号を日本化学工業株式会社とした。1949年5月に東証へ、同年6月に大証へ、同年7月に名証及び新潟証券取引所へ上場するが、後に東証以外においては上場廃止。鉄鋼材料などにクロムめっきを施す際の処理剤や電子材料や光学用ガラスに使用される高純度炭酸バリウムが主力で、賃貸事業が利益を底支えしている。

株主構成

四半期報告書によると、2020年9月末時点での筆頭株主は日本カストディ銀行株式会社信託口で23.53%保有。次いで同社取引先持株会が7.77%、日本マスタートラスト信託銀行株式会社信託口が6.49%保有。以下は5%未満の保有率で、国内外の証券会社、銀行、信託銀行、機関投資家などが続く。ただし、化学品専門商社の小西安株式会社が2.07%保有し8位となっている。外国人株式保有比率は10%以上20%未満(2020年3月末時点)。

取締役会

取締役は8名(社内6名、社外2名)、うち3名は監査等委員(1名は社内で常勤、他2名は社外で非常勤)、監査等委員会設置会社である。代表取締役社長を除いた社内取締役4名は全員プロパー。取締役会長の棚橋純一氏は創業者の孫で、米国農薬メーカーのVelsicol Chemical Corp.勤務を経て1981年4月入社。代表取締役社長については次項に記載。社外取締役は、弁護士、税理士。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の棚橋洋太氏は1976年3月生まれで、取締役会長の実子。東京理科大学を卒業後、2000年4月に住友スリーエム株式会社(現スリーエムジャパン株式会社)入社。2007年2月に入社し、取締役兼常務執行役員、代表取締役兼専務執行役員などを経て2017年4月より現職

報告セグメント

「化学品事業」、「機能品事業」、「賃貸事業」、「空調関連事業」の4セグメントで構成される。決算短信によると、2021年3月期における売上高34,642百万円の調整前構成比は化学品事業が40.6%、機能品事業が43.5%、賃貸事業が2.7%、空調関連事業が9.9%、その他が3.3%、なお調整額は▲515百万円。同期の調整前セグメント利益合計2,737百万円の構成比は化学品事業が15.9%、機能品事業が55.4%、賃貸事業が19.5%、空調関連事業が6.7%、その他が2.5%、なお調整額は45百万円。機能品事業が売上高、セグメント利益ともに最大で、特に利益は全体の過半を占める。一方で、化学品事業の利益率は相対的に低い。また、賃貸事業は売上高こそ少ないものの、利益は化学品事業を上回る

事業モデル

主力は化学品事業ならびに機能品事業である。
化学品事業は創業以来の事業で、クロム製品、シリカ製品、リン製品に大別される。クロム製品は鉄鋼材料などにクロムめっきを施す際の処理剤が主体である。鏡面状のめっきは殆どがクロムめっきであり、防錆と意匠の両面で優れていることから、日常小物から大型構造物まで広く利用されている。シリカ製品の主力は珪酸ソーダであり、接着剤、建設現場における土壌硬化剤、洗剤原料、製紙工業における漂白過程の添加剤など、多種多様な産業で利用される多目的化学物質である。リン製品はリン酸及びリン酸ナトリウムが該当し、食品添加剤、医薬原料、分析試薬、アルミ缶の下地処理などに適用される。
機能品事業はバリウム製品、電子セラミック材料、回路材料、電池材料に大別される。バリウム製品は電子材料や光学用ガラスに使用される高純度炭酸バリウムが主力。電子セラミック材料は、バリウム製品の中でもコンデンサ等に使用されるチタン酸バリウムに特化。回路材料は電子回路の配線などに使用される高導電性被覆材料、電池材料はリチウムイオン電池の正極活物質に利用されるコバルト酸リチウムが該当する。
なお、賃貸事業は化学品事業以上の利益を上げており、西淀川工場跡地の社会医療法人愛仁会千船病院ならびにイズミヤ、福島第一工場で余剰となった土地に出店したイオンタウン郡山などからの賃料を収益とする。

主力2事業の概要(公式ウェブサイト内「製品情報」)

競合他社

事業、製品が多岐にわたっているため全事業的に競合する他社はない。4078 堺化学工業(株)が、高純度炭酸バリウムなどで競合。売上高84,918百万円、うち高純度炭酸バリウムを扱う「化学」セグメントが76,8221百万円(2021年3月期)。4100 戸田工業(株)がチタン酸バリウムなどで競合。売上高29,024百万円、うちチタン酸バリウムを扱う「電子素材」セグメントは16,712百万円(2021年3月期)。なお、同期の同社売上高は34,642百万円。

連結の範囲

同社グループは、同社、連結子会社6社、持分法適用関連会社3社からなる。子会社・関連会社は主に原料の納入ならびに製品の販売を担当している。ただし賃貸事業の運営に関しては、子会社の株式会社ニッカシステムが受託している。

強み・弱み

電子材料に代表される付加価値の高い機能品に近年シフトし、収益性向上に成功した点が強み。立地条件の良い遊休地の有効活用が、業績に大きく貢献している点も強み。一方で、祖業の化学品事業は収益性が低い。なお粗利率は、2015年3月期までは20%以下だったのを、機能品事業と賃貸事業の伸長で2017年3月期の25%まで高めたが、以降は低下傾向にあり足元2期は約22%へ低下している。積極的な設備投資で減価償却費は増加傾向にあるが、販管費は約50億円で安定しており、高いコスト管理力が伺える点は強み。付加価値の高い電子材料・有機関連製品への設備投資を中心とした投資を打ち出しており、安定的な収益の確保は課題である。

KPI

設備投資額及び減価償却費などはKPIとみなせる。
・設備投資額 増加傾向、ただし2021年3月期は前期並みの見込
・減価償却費 増加傾向

設備投資額、減価償却費及び投資先(2021年3月期第2四半期決算補足説明資料)

業績

過去5年程度の業績は、売上高は330~370億円の範囲でほぼ横ばい、経常利益は23~40億円と増減があるが直近2期は30億円を下回り減少傾向にある。販管費は約50億円で安定しており、経常利益は粗利率の変動によるところが大きい。2021年3月期は、売上高34,642百万円(前期比▲4.4%)、営業利益2,783百万円(同+12.2%)、経常利益2,315百万円(同▲9.0%)であった。恒常的に営業CFはプラス、投資CFはマイナスで推移。直近決算期の自己資本比率は55.7%。