3541 農業総合研究所の業績について考察してみた

3541 農業総合研究所の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2007年10月、和歌山市にて株式会社農業総合研究所設立。生産者との提携によって、農産物を都市部のスーパーマーケット等へ直接供給するプラットフォーム「農家の直売所」を提供。2008年5月に和歌山県紀の川市に初の集荷場「紀の川集荷場」を開設、以降も順調に集荷場を増設。2016年6月、東証マザーズへ農業ベンチャーとしては初の上場を果たし、2022年4月からは東証グロース。農家の直売所事業ならびに農産物の産直卸事業を展開し、2020年8月には流通総額100億円を突破した。

株主構成

四半期報告書によると、2022年2月末時点の筆頭株主は、ディスク研磨機メーカーの株式会社プレンティーで21.00%保有。続いて、代表取締役会長の及川智正氏が17.04%、日本郵政キャピタル株式会社が12.05%、代表取締役社長の堀内寛氏が9.88%保有。以下は5%未満の保有率で、2020年11月に実施した第三者割当増資の割当先の一つである株式会社農林漁業成長産業化支援機構、国内外の金融機関、従業員持株会などが続く。2021年11月30日付コーポレート・ガバナンス報告書によると、外国人株式保有比率は10%未満

取締役会

取締役は5名(社内4名、社外1名)、監査役は3名(全員社外、うち1名は常勤)、監査役会設置会社である。代表権を持たない社内取締役2名は、三菱電機やHOYAなどの経歴を有する松尾義清氏と公認会計士の坂本大輔氏。社外取締役には公認会計士事務所代表が就任。

代表取締役の経歴

代表取締役は2名。代表取締役会長の及川智正氏は1975年1月生まれ。東京農業大学卒業後、1997年4月に株式会社巴商会入社。2003年に退社し、和歌山県にて新規就農。2006年4月にエフ・アグリシステム株式会社へ入社。2007年10月に同社設立、代表取締役社長に就任。2019年11月より現職
代表取締役社長の堀内寛氏は1973年2月生まれ。慶應義塾大学卒業後、1998年4月に住友商事株式会社入社。前述の株式会社プレンティー勤務などの後、2012年3月に入社、取締役就任。取締役副社長を経て2019年11月より現職

報告セグメント

「農家の直売所事業」の単一セグメント。事業モデルに応じて「農家の直売所事業」及び「産直卸売事業」に大別されるが、両者の売上高構成比等は非開示。売上高の10%以上を占める主要取引先は、イオンリテール株式会社(10.9%)ならびに株式会社ライフコーポレーション(10.2%)

事業モデル

農家の直売所事業は、登録生産者と提携するスーパー等を直接つなぐ物流と情報ネットワークを構築している。「委託販売システム」と「買取委託販売」の2パターンで、いずれも同社が各地に設置した「集荷場」を提供し、登録生産者が集荷場へ出荷した農産物を同社が回収し、原則翌日にスーパーマーケット等の小売店の直売所コーナーで販売。提携スーパーからバーコード情報(インストアコード等)の提供をうけ、同社が集荷場でバーコードを発券するシステム。同時に、登録生産者に対してスーパー等の日々の販売データや出荷データを蓄積し「農直システム」を提供し、登録生産者の出荷量や値決め判断を支援する。販売代金のうち同社とスーパーへの販売手数料を支払った残りが登録生産者の収益となる。その他にも、物流費見合いの「出荷手数料」、バーコード発券手数料、が同社の収益源となり、集荷場からスーパー等の各店舗への物流費は同社が負担。物流費に関して従来は出荷手数料を出荷額の8.5%としていたが、2022年度よりコンテナあたり課金へトライアル運用を開始しており、生産物の相場変動や品目構成によるコスト負担増を今後は回避できる見込み。また、2020年10月のJR東日本との資本業務提携に基づき、地方駅や駅周辺での集荷場の設置、首都圏駅構内での販売、ネットショップJRE MALLへの出店による消費者へのインターネット直販が進む。「委託販売システム」では登録生産者が出荷量も価格も決定し在庫リスクも負い、「買取委託販売」は同社が「委託販売システム」を利用し在庫リスクも同社が負う。「買取委託販売」は天候不順により供給量が不安定な場合や、小売店のフェア等で一定の供給需要がある際に買取により供給量を確保する手段であり、買取価格が相場並みかやや高くなるため同社の粗利は小さくなる。
卸販売事業は、同社が生産者や農産物の強みをPOPやパッケージでブランディング化し、スーパー等へ販売するが、在庫リスクはスーパーが負うため販売価格も市場価格並みとなり利益率が低い傾向にある。生産者側は販路拡大による所得の増加が見込め、また生産量等も自分で調整していくことができる。スーパー側としては新鮮な農産品を低コストかつスピーディーに配置することができ、集客につながる。生産者とスーパーと同社の三方良し、をモットーに事業を展開。従来の農産物の販路は、JA出荷後に仲卸を挟んでスーパー店頭に並ぶため、生産者の利幅が薄く、時間もかかった。同社の仕組みでは生産者が主体的に価格決定でき、生産する農産物が人気化すれば(値上げすることも可能で)、生産者側の利幅が大きくなる可能性もあり従来とは大きく異なる

2021年8月期 決算説明資料 p.4

競合他社

競合他社は見当たらない。JA、道の駅などは農産物の流通・販売で部分的に共通する点があるものの、流通型式及びネットワークの広さが大きく異なる

連結の範囲

同社グループは、同社及び関連会社2社で構成される。関連会社で日本産農産物の海外輸出を事業とする株式会社世界市場は、かつての子会社であったが2019年4月に関連会社となった。

強み・弱み

ITを駆使し、生産者と都市部の大型スーパーを直接つなぐことで、新鮮な野菜を届けるシステムはユニークであり同社独自の強み。また、取引先にはイオン、イトーヨーカ堂、ライフ等の大手スーパーをはじめ複数の大手小売店が並び、豊富な取引実績と強固な事業基盤も強み。一方、前述のイオンリテール株式会社ならびに株式会社ライフコーポレーションへの売上が全体の2割以上を占めるなど、特定顧客への依存度が高い点はリスク。農業関連事業一般として、気候や天災など不可避な外部リスクも存在する。

KPI

店舗数、生産者数、集荷拠点数、流通総額などが主要KPIと見られる。
農家の直売所事業
・採用店舗数(2021年8月末時点);1,774店(前年比+155店)
・登録生産者数(同上):9,762名(同上+489名)
・集荷拠点数(同上):94拠点(同上+2)
産直卸売事業
・流通総額(2021年8月期):867百万円(前期比+740.2%)

業績

2016年8月期から2021年8月期までの5年間で売上高を4倍に伸ばすなど、順調に業容を拡大。ただし、経常利益は2016年8月期の162百万円をピークに、以降は減少傾向。2021年8月期は、売上高こそ上場来最高を記録したものの、相場安による粗利率の低下やシステム開発と産直卸事業の積極投資が影響し赤字転落で、売上高4,737百万円(前期比+36.4%)、営業利益▲193百万円(同▲229百万円)、経常利益▲207百万円(同▲253百万円)であった。2022年8月期第3四半期は回復の兆しが見られるものの依然として赤字で、売上高3,829百万円(前年同期比+11.8%)、営業利益▲133百万円(同+18百万円)、経常利益▲123百万円(同+44百万円)となった。なお、同期より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を適用しているため、前年同期比は参考値。営業CFは概ねプラスで推移、投資CFは恒常的にマイナス。2022年8月期第3四半期の自己資本比率は37.0%。

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