3541 農業総合研究所の業績について考察してみた

3541 農業総合研究所の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2007年10月株式会社農業総合研究所を設立。生産者と直接提携し都市部のスーパーマーケットにダイレクトに販売できるプラットフォーム「農家の直売所」」を提供。2008年5月和歌山県紀の川市に初の集荷場「紀の川集荷場」を開設。その後も順調に集荷場を開設していき、2016年6月東証マザーズへ農業ベンチャーとして初の上場を果たす。2020年8月には流通総額100億円を突破した。

株主構成

有価証券報告書によると2021年2月末時点の大株主は株式会社プレンティーで、保有比率は21.01%。株式会社プレンティーは品川区のディスク研磨機メーカーで、同社を創業当初より資金援助している。次いで、代表取締役会長CEOである及川智正氏が17.05%、日本郵政キャピタル株式会社が12.05%、代表取締役社長である堀内寛氏が9.88%、株式会社農林漁業成長産業化支援機構2.23%と続く。その他は、紀陽銀行や外国の銀行や証券等の名前が並ぶ。外国人株式保有比率は10%未満。

取締役会

取締役は4名(全員社内) 、監査役は3名(全員社外)、監査役会設置会社である。代表権を持たない取締役2名は、三菱電機やHOYAなどの経歴を有する松尾義清氏と公認会計士の坂本大輔氏で、各々2013年と2014年の入社。

代表取締役の経歴

代表取締役会長CEOの及川智正氏は1975年1月生まれ。東京農業大学農学部農業経済学科を卒業後、1997年4月に株式会社巴商会入社、2003年に退社し、和歌山県にて新規就農。2006年4月にエフ・アグリシステム株式会社へ入社。2007年10月に株式会社農業総合研究所を設立、現在に至る。
代表取締役社長の堀内氏は1973年2月生まれ。1998年4月に住友商事株式会社へ入社し、2007年6月起業、2010年1月より同社へ入社。副社長として同社の発展を支えてきた存在である。

報告セグメント

「農家の直売所事業」の単一セグメント。報告セグメントは単一で事業別の業績開示はないが、事業モデルに応じて農家の直売所事業と産直卸売事業に大別される。

事業モデル

農家の直売所事業は、登録生産者と提携するスーパー等を直接つなぐ物流と情報ネットワークを構築している。「委託販売システム」と「買取委託販売」の2パターンで、いずれも同社が各地に設置した「集荷場」を提供し、登録生産者が集荷場へ出荷した農産物を同社が回収し、原則翌日にスーパーマーケット等の小売店の直売所コーナーで販売。提携スーパーからバーコード情報(インストアコード等)の提供をうけ、同社が集荷場でバーコードを発券するシステムを構築していることにより実現。同時に、登録生産者に対してスーパー等の日々の販売データや出荷データを蓄積し「農直システム」を提供し、登録生産者の出荷量や値決め判断を支援する。販売代金のうち同社とスーパーへの販売手数料を支払った残りが登録生産者の収益。その他にも、物流費見合いの「出荷手数料」、バーコード発券手数料、が同社の収益源となり、集荷場からスーパー等の各店舗への物流費は同社負担。物流費は従来出荷手数料を「出荷額の8.5%」としていたが、2022年度よりコンテナあたり課金へトライアル運用を開始しており、生産物の相場変動や品目構成によるコスト負担増を今後は回避できる見込み。また、2020年10月のJR東日本との資本業 務提携に基づき、地方駅や駅周辺での集荷場の設置、首都圏駅構内での販売、ネットショップJRE MALLへの出店による消費者へのインターネット直販が進む。「委託販売システム」では登録生産者が出荷量も価格も決定し在庫リスクも負い、「買取委託販売」は同社が「委託販売システム」を利用し在庫リスクも同社が負う。「買取委託販売」は天候不順により供給量が不安定なときや小売店のフェア等で一定の供給需要がある時に、買取により供給量を確保する手段であり買取価格が相場並みかやや高くなるため同社の粗利は小さくなる。

2021年8月期 第2四半期決算説明資料

卸販売事業は、同社が生産者や農産物の強みをPOPやパッケージでブランディング化し、
スーパー等へ販売するが、在庫リスクはスーパーが負うため販売価格も市場価格並みとなり利益率が低い傾向にある。
生産者側は販路拡大による所得の増加が見込め、また生産量等も自分で調整していくことができる。スーパー側としては新鮮な農産品を低コストかつスピーディーに配置することができ、集客につながる。生産者とスーパーと同社の三方良し、をモットーに事業を展開。従来の農産物の販路は、JA出荷後に仲卸を挟んでスーパー店頭に並ぶため、生産者の利幅が薄く、時間もかかった。同社の仕組みでは生産者が主体的に価格決定でき、生産する農産物が人気化すれば(値上げすることも可能で)、生産者側の利幅が大きくなる可能性もあり従来とは大きく異なる

競合他社

競合他社は見当たらない。農産者の顔が見える農産物の販売との観点では道の駅、農産物の流通との観点ではJAは競合となる部分もあるが、販売地域の広さや流通網の仕組みなどの観点では競合しない。

連結の範囲

連結の対象となる親会社・子会社を持たない。2020年8月期に、株式会社世界市場ホールディングスの精算結了によりNippon Ichiba Hongkong Limitedと2社を連結の範囲から除外している。「世界市場」は日本農産物・食品の輸出プラットフォームである。なお、世界市場ホールディングスの精算は、世界市場の経営の自由度を高めるための組織変更で、世界市場へは同社から出資比率31.8%で直接出資することとなり、クールジャパン機構、他3社からの出資構造にも変化はない

強み・弱み

ITを駆使し、生産者と都市部の大型スーパーを直接つなぐことで、新鮮な野菜を届けるシステムが強みである。また、取引先にはイオンリテール、イトーヨーカ堂のスーパー大手2社の他、複数の大手小売店が並び、豊富な取引実績と強固な事業基盤が強み。悪天候や天災による農業固有のリスクは弱みである。また、イオンリテール株式会社への販売実績が全体の12.7%を占め(2020年8月期)、依存度が高い点は懸念点である。

KPI

急拡大中の流通総額の構成する要素として、下記の①~③が開示されている。2021年8月期第2四半期の実績は下記。なお、集荷拠点数は物流効率向上のための統廃合により減少が5箇所、郵便局内での開設により6箇所増加の結果の前期末比1箇所増加と企業努力がみうけられる。
①登録生産者数9,506人 (前期末比+233名)
②提携スーパーマーケット数 (前期末比+53店舗)
③集荷拠点数93箇所 (前期末比+1拠点) 導入産地は33都道府県
④流通総額 2021年8月期上期 5,462百万円(前年同期比 +10.3%)

2021年8月期 第2四半期決算説明資料

業績

2017年8月期から2019年8月期まで連結決算を提出していたため非連続ではあるが、2016年8月期から2020年8月期の直近5期間は、売上高は右肩上がりで2.9倍に拡大。一方で経常利益は162百万円から46百万円まで減少。中期経営計画に基づき、積極的に自社センターの開設、プラットフォーム開発、人員増など「物流」「IT」「人材」へ投資しており、2018年8月期は赤字であった。利益面では、出荷手数料の見直しを実施中で改定の進捗、利幅が薄くなる買取委託の動向、追加投資の動向に注意が必要で、2021年5月には「神戸(物流)センター」開設も予定されている。2021年8月期第2四半期の売上高は2,192百万円(前年同期比+47.4%)、営業損失は87百万円、四半期純損失は75百万円で、増収減益、赤字である。下半期に利益が偏重する傾向がある。営業CFは利益に準ずるところが大きく、投資CFは恒常的にマイナス。自己資本比率は50%台と安定している。