3676 デジタルハーツホールディングスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2001年4月有限会社デジタルハーツとして東京都で設立され、家庭用ゲームやパチンコを対象としたコンピュータプログラム電気機器内のバグ修正サービスを提供。2003年10月に株式会社デジタルハーツへ改組。2008年2月東証マザーズへ上場、2011年11月に東証一部へ変更。事業規模拡大に伴い持株会社体制へ移行し、単独株式移転により2013年10月株式会社ハーツユナイテッドグループ設立。株式会社デジタルハーツに代わり東証一部へ上場。2018年7月株式会社デジタルハーツホールディングスへ商号変更。発売前のソフトウェア及びコンテンツを対象に不具合を検出し、報告するサービスの代表的な企業の一つ。

株主構成

有価証券報告書によると2020年9月末日時点の大株主は、取締役会長の宮澤栄一氏が37.3%、同氏の資産管理会社であるA-1合同会社の6.1%と併せて43.4%、株式会社デジタルハーツ取締役若狭泰之氏が0.9%、代表取締役社長CEO玉塚元一氏0.7%。そのほかに、国内外の信託銀行の信託口で併せて24.8%保有している。

取締役会

取締役は6名(社内4名、社外2名)、監査役は4名(社内1名、社外2名、常勤1名)、監査役会設置会社である。取締役会長の宮澤栄一氏(1972年生まれ)は創業者だが2017年より代表権のない会長へ就任。CFOは昭和シェル石油株式会社入社後、他の3社での執行役員・取締役等の経験を経て、2017年6月に当社へ入社。もう1名は現在の現在のU-NEXT株式会社で取締役経験を持ち2017年7月に当社へ入社。

代表取締役の経歴

代表取締役CEOの玉塚元一氏は1962年5月生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業後、1985年4月旭硝子株式会社(現AGC株式会社)に入社。その後1998年7月に日本アイ・ビー・エム株式会社へ転職するも4ヵ月で退職し、1998年12月株式会社ファーストリテイリングへ入社。2002年11月同社代表取締役社長兼COO就任。2005年9月に退任し、株式会社リヴァンプ設立。代表取締役となる。2010年に退任し、2011年3月に株式会社ローソンの副社長執行役員COO就任。代表取締役社長就任2017年1月に同社へ入社。代表執行役員を経て2017年6月より現職に就任。MBA、国際経営学修士号取得者

報告セグメント

同社事業は、「エンターテイメント事業」、「エンタープライズ事業」の2報告セグメントに大別され、直近2021年3月期第2四半期では、売上高10,531百万円の70.9%がエンターテイメント事業、29.1%がエンタープライズ事業にて計上されている。一方で営業利益527百万円は、エンターテイメント事業の1,217百万円のセグメント利益で、まだ黒字化していないエンタープライズ事業28百万円の赤字と、調整額▲660百万円を賄う形となっている。

2021年3月期 第2四半期決算説明資料

事業モデル

エンターテイメント事業では、デバッグサービス、クリエイティブサービス、メディアサービスを展開。主力のデバックサービスは、ゲームを中心にスマートフォン、WEBサイトなど様々なコンテンツの不具合を検出・報告するサービスを提供している。8,000人以上の人材と豊富な機材を有し、百万件以上のバグ検出実績を持つ。翻訳、カスタマーサポート、マーケティングレビュー、eスポーツの大会運営等も行う。
クリエイティブサービスは、ゲーム企画・開発、ソーシャルゲーム運営・運用に特化したデジタルコンテンツ制作サポートを提供。
日本最大級の総合ゲーム情報サイト「4Gamer.net」を中心に、サイト運営やゲームイベントの企画・運営をメディアサービスで行っている。
エンタープライズ事業ではWEBシステムや業務システム等の企業向けITシステムを対象に、様々なシステムテストやITセキュリティ、システム開発等サービスを提供。同社は国内最大規模のソフトウェアテスト技術者を抱え、デバックサービスを中心に企画・設計・開発・分析に至るまでの開発サイクルをワンストップでサポートしている。あらゆる角度から調査を行い、問題点を検出し、対処方法までサポートを行っている。テストによるソフトウェア単体の品質向上だけでなく、顧客企業全体の安全性向上に向けて、企業セキュリティをトータルサポートできるサービスを提供。
近年、ソフトウェアは複雑化しており、製品の故障や不具合が発生するリスクが高まっていることから、製品の信頼性を確保する為のソフトウェアテストの重要性が増している。その一方で、エンジニアが慢性的に不足しており、専門会社へアウトソーシングする傾向が高まっていることから、ソフトウェアテストサービス市場は同社によると2019-2023年CAGR12%の成長市場。同市場において同社は圧倒的なシェアを誇っており、その他分野へ展開し成長していく会社方針である

競合他社

ソフトウェアテスト市場は、テストを専門とする競合他社が少ない。ゲームデバッグ市場においては、3657ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス株式会社(直近決算期売上高123億円)が競合先であり、同社とほぼ2社で市場を寡占している。ゲーム以外の分野については、3697SHIFT(同287億円)、4442バルテス(同487億円)など多くの企業が存在するが、まだ市場自体が黎明期ということもあり、今後他社ソフトウェア企業が進出してくる可能性もある。

連結の範囲

同社グループは、同社及び連結子会社14社、持分法適用会社1社から構成される。連結子会社は国内7社、海外7社で、米国とアジア圏(中国、韓国、台湾、ベトナム)に展開。主要子会社は株式会社デジタルハーツと株式会社フレイムハーツであり、業務の受託・委託、役員の兼任、経営指導、資金の借入・貸付等密接に関わっている。

2021年3月期 第2四半期決算説明資料

強み・弱み

国内ゲームテストサービス市場で圧倒的なシェアを有することが強み。IoTの進展やスマートデバイスの急速な普及拡大を背景に、コンテンツやサービスの多様化が進む一方で、IT人材の慢性的な不足から、拡大していくとみられるテストサービス市場の恩恵を享受すると見られる点も強みである。同社は登録テスター数約8,000名、その内技術者資格保有者376名が在籍しており、豊富な人的リソースを活かしている。e-ラーニングの実施や外部講師を招いた短期集中講座開催等により、未経験者をプロフェッショナルへと育てる独自の教育体制を確立している。
一方で、AI等の技術革新による既存サービスの陳腐化は大きなリスクと考えられる。また、顧客企業のシステム等重要情報を扱っており、サーバー攻撃や社内不正による機密情報の漏洩には細心の注意を払っていく必要がある。

KPI

IoTの進展やデジタルトランスフォーメーションの加速により、企業のWEBシステムや業務システム等のシステムテストやITセキュリティに対する需要拡大が見込まれており、エンタープライズ事業の売上高の推移はKPIとなりうる。
多様な人材の育成・活用により、同社では当事業の売上高を2025年までに20,000百万円まで伸ばすことを目標としている。登録テスター数技術者資格保有者数の推移は、同社の成長性を見る上で重要である。
① 2021年3月期第2四半期エンタープライズ事業売上高3,064百万円(前年同期比+146.3%)
② 登録テスター数
③ 技術者資格保有者数

業績

売上高は安定的な成長を継続しており、2016年3月期から2020年3月期までの5年間で売上高1.28倍となった。利益剰余金の蓄積でROEは19年3月期38.6%から2020年3月期16.4%と減少傾向だが増配している。主力のゲーム分野からから幅広いシステム領域へ事業領域を拡大するステージにあり内部留保を確保したいとの会社意向。自己資本比率4割程度で安定推移。営業CFは安定してプラス、営業CF以下の金額を投資CFで毎期拠出し、財務CFは恒常的にマイナスである。