3782 ディー・ディー・エスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1995年9月、組込み系ソフトウェア受託開発をおもな事業とし、愛知県に有限会社ディー・ディー・エスを設立。1998年に株式会社へと組織変更をおこなう。2000年、指紋認証ソリューション「UB-safe」の販売を開始。2005年11月、東証マザーズへ上場する。2007年にはマイクロソフト株式会社のゴールドパートナーに認定。2020年、認証ソリューション累計出荷が112万ライセンスを突破した。

株主構成

有価証券報告書によると2020年12月末日時点の大株主は、株式会社カクカで保有割合1.46%、代表取締役会長の三吉野健滋氏が1.16%である。ほか松井証券株式会社が1.12%、株式会社東広が1.01%と続く。以下、保有割合1%未満で証券会社や個人がならぶ。外国人保有比率は10%未満。

取締役会

取締役は5名(社内4名、社外1名)、監査役は3名(全員社外)、監査役会設置会社である。取締役 研究開発本部長の林森太郎氏は1985年4月に大阪大学基礎工学部を中退。翌月、パッケージソフトや官公庁・自治体向けのシステム開発をおこなう株式会社クレオに入社する。クレオでは2012年に代表取締役社長に就任。2015年3月より同社取締役を務める。

代表取締役の経歴

代表取締役会長の三吉野健滋氏は1967年9月生まれ。佐賀大学経済学部を卒業後、1992年4月に和光証券株式会社(現:みずほ証券株式会社) へ入社。1995年9月に同社を設立した。2018年12月期の業績予想未達ならびに減資の責任をとるため社長職を退き、2019年3月より代表取締役会長を務める。
代表取締役社長の久保統義氏は1964年10月生まれ。愛知工業大学工学部を卒業後、株式会社キラ・コーポレーションに入社。その後、株式会社ジャストシステム、シマンテック株式会社、トレンドマイクロ株式会社、シスコシステムズ株式会社など数々のIT系企業を経て2010年12月より同社取締役を務める。2019年3月、代表取締役社長に就任。

報告セグメント

「バイオメトリクス事業」の単一セグメント。セグメント内は「バイオ事業」「マガタマ・FIDO事業」「アルゴリズム・センサー事業」の3つの事業に分かれる。なかでも主力はバイオ事業。

事業モデル

「バイオ事業」は指紋認証を中心に生体認証やICカード認証など、複数の認証方式を組み合わせた多要素認証をハード面とソフト面から提供する。ハード製品として指紋認証機器「UBFシリーズ」を生産するが、同社は生産設備を持たない。生産は日本、台湾ならびに中国のEMSに委託している。
「マガタマ・FIDO事業」ではオンライン認証技術を活用したセキュリティ製品の開発を手がける。FIDO(Fast IDentity Online)とは「ID、パスワードに依存しない新しいオンライン認証」の通信規格。通信事業者やインターネット事業者に対してIDサーバをFIDO化するサービスや、生体認証を利用して複数のWebサービスへのログイン情報を集約し、パスワードレス化をおこなうサービスを提供する。FIDO加盟企業から製品を仕入れ、得意先に販売している。2020年12月期のおもな得意先は、販売実績の15.1%を占める日立グループと13.0%を占めるダイワボウ情報システム株式会社。認定販売パートナー制度を設けており、パートナー企業は販売代理店の役割を果たす。2018年頃より、売りきり型の販売モデルからサービス課金型、ライセンス型の収益モデルへと移行している。
「アルゴリズム・センサー事業」では生体認証関連企業に対して、指紋認証ソフトウェアのライセンス提供をおこなう。しかし受注の遅延やセンサーの増産遅れなどにより、2020年度においては売上計上できていない。
生体認証市場は官民による需要増から拡大基調。総務省が自治体の情報セキュリティ対策を進めており、各府省からのガイドラインで二要素認証について言及されていることが理由として挙げられる。同ガイドラインを受けて民間企業での需要も増加の見込み。さらにコロナ禍において急速に普及したテレワークの運用で、本人認証の課題が顕在化しておりニーズが高まっている。

2020年12月期 有価証券報告書

競合他社

2011年度~2018年度実績によると、指紋認証市場のシェアは同社が64.6%とトップ。指紋認証デバイスを手がける企業はほかにラトックシステム株式会社、中央電子株式会社、株式会社モフィリアなど存在するが、すべて非上場。上場会社での競合は見当たらない。
1980年初頭より大手企業や大学発ベンチャー企業などが指紋認証市場に参入したものの現在ではほとんどが撤退。しかし近年、市場の急拡大から参入を検討する企業が増えており、競争が激化する可能性がある。

連結の範囲

連結子会社はDDS Korea, Inc. と、シンガポールのMICROMETRICS TECHNOLOGIES PTE.LTD. の2社である。DDS Korea, Inc. は同社製品を韓国国内で販売する。MICROMETRICS TECHNOLOGIES PTE.LTD. は指紋認証センサーメーカー。「アルゴリズム・センサー事業」を拡大するため2020年に子会社化した。
なお2020年12月期の売上高1,156百万円のうち、日本での売上が989百万円で85.6%、アジア地域での売上高は166百万円で14.4%である。

強み・弱み

創業以来、大学との共同研究をおこなっており、技術的な競争力の高さが強みといえる。これまで東京大学、名古屋工業大学、中部大学の各校と連携しており、中部大学との研究開発は現在も継続している。
製品の競争力は高いものの、商談や受注の遅れにより期初予想業績からの下振れが多い。従業員59名と小規模な組織であるため、商談への対応力が課題と考えられる。

2020年12月期 期末 決算説明資料 巻末の2枚(日経会社情報DIGITALより:リンク)

KPI

KPIには経常利益、従業員数、研究開発費が挙げられる。以下2020年3月期の数値である。
①経常利益:-169百万円(2019年12月期 -266百万円)
②従業員数:59人(2019年12月期 56人)
③研究開発費:102百万円(2019年12月期 120百万円)

業績

過去5期分の経営状況をみると、売上高は1,196百万円から1,156百万円へと-3.3%。経常利益は81百万円から-169百万円へ250百万円の減少である。一方で自己資本比率は72.2%から80.7%へと安定して70%以上をキープしている。営業CFは利益によるところが大きく、2017年度をのぞいてマイナスで推移。投資CFは貸付や有価証券の売買がおもな変動要因であり、2018年度まではマイナス推移、2019年度よりプラスで推移している。