3993 PKSHA Technologyの業績について考察してみた

3993 PKSHA Technologyの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2023.Q2 2023.03 3,462 555 16.03%
FY2023.Q3 2023.06 3,478 250 7.19%
FY2023.Q4 2023.09 3,769 436 11.57%
FY2024.Q1 2023.12 3,864 0 0%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q4 2017.09 230 25 10.87%
FY2018.Q1 2017.12 329 146 44.38%
FY2018.Q2 2018.03 390 197 50.51%
FY2018.Q3 2018.06 361 106 29.36%
FY2018.Q4 2018.09 423 147 34.75%
FY2019.Q1 2018.12 506 169 33.4%
FY2019.Q2 2019.03 604 229 37.91%
FY2019.Q3 2019.06 573 156 27.23%
FY2019.Q4 2019.09 1,378 166 12.05%
FY2020.Q1 2019.12 1,855 107 5.77%
FY2020.Q2 2020.03 1,913 304 15.89%
FY2020.Q3 2020.06 1,747 32 1.83%
FY2020.Q4 2020.09 1,878 191 10.17%
FY2021.Q1 2020.12 2,130 259 12.16%
FY2021.Q2 2021.03 2,060 220 10.68%
FY2021.Q3 2021.06 1,921 -55 -2.86%
FY2021.Q4 2021.09 2,616 226 8.64%
FY2022.Q1 2021.12 2,657 389 14.64%
FY2022.Q2 2022.03 3,028 527 17.4%
FY2022.Q3 2022.06 2,865 299 10.44%
FY2022.Q4 2022.09 2,959 350 11.83%
FY2023.Q1 2022.12 3,199 478 14.94%
FY2023.Q2 2023.03 3,462 555 16.03%
FY2023.Q3 2023.06 3,478 250 7.19%
FY2023.Q4 2023.09 3,769 436 11.57%
FY2024.Q1 2023.12 3,864 0 0%

沿革

2012年10月、機械学習技術を用いたデータ解析事業を目的に株式会社AppReSearchを設立。2013年2月、アルゴリズムモジュール「予測モジュール_Predictor」を開発。
2014年7月、人工知能の権威である松尾豊氏を技術顧問に迎える。なお創業者で代表取締役の上野山勝也氏も松尾研究室の出身で博士号を有する。同社はもともと東京大学産学連携プラザに本店住所を置いていた「東大発ベンチャー」である。
2014年8月、「株式会社AppReSearch」から「株式会社PKSHA Technology」に商号変更。2017年9月の東証マザーズ上場後は積極的にM&Aをおこなっている。2022年4月、東証スタンダード市場に変更。自然言語処理、画像認識、機械学習、深層学習技術等に関わるアルゴリズムソリューションを展開する。

株主構成

有価証券報告書によると2022年9月末時点の筆頭株主は、代表取締役の上野山勝也氏で30.9%を保有する。また同氏の資産管理会社である株式会社LUCE Capitalが3.6%を保有しており、あわせて34.5%となる。次いで、上野山氏とともに同社設立に携わった山田尚史氏が10.4%を保有している。以下は保有割合が5%未満で、7203トヨタ自動車や銀行、証券、保険、信託銀行などが並ぶ。2022年12月更新のコーポレート・ガバナンス報告書によると、外国人株式保有比率は10%未満。

取締役会

取締役は6名(社内1名、社外5名)、社外5名のうち3名は監査等委員。監査等委員会設置会社である。取締役は40代前半が中心、なかには30代もみられる。出身は2170リンクアンドモチベーション、株式会社ガリバーインターナショナル(現:7599IDOM)、グーグル株式会社などさまざま。

代表取締役の経歴

代表取締役の上野山勝也氏は1982年7月生まれ。東京大学を卒業後、株式会社ボストンコンサルティンググループに入社。米国にてグリー・インターナショナルの立ち上げに参画し、Webプロダクトの大規模ログ解析業務を担当。その後東京大学に復学して機械学習を学び、工学博士号(機械学習)を取得。2012年10月に同社を設立。ダボス会議の「YGL2020(ヤング・グローバル・リーダーズ)」の一人に選出されている。

報告セグメント

サービス別に分かれており、「AI Research & Solution事業」、「AI SaaS事業」の2報告セグメントである。2022年9月期の売上高11,509百万円の構成割合はAI Research & Solution事業が56.9%、AI Saas事業が43.1%である。セグメント利益はAI Research & Solution事業が678百万円、AI SaaS事業1,518百万円であり、調整額を差し引くと1,565百万円であった。

事業モデル

AI Research & Solution事業ではアルゴリズム・知能化技術の事業化をおこなう。パートナー企業との共同研究開発からソリューションの提供まで一気通貫で実施する。IoT機器からリアル空間のデータをクラウド上に収集し、顧客にとって有益な価値を提供できるサービスを開発中。現在は駐車場機器の製造販売事業を通じて開発をおこなっている。
アルゴリズムのライセンス提供や駐車場の管理受託などからの売上をストック収益とする。フロー収益は顧客との共同研究等による売上や駐車場機器の販売など。
AI SaaS事業ではAI Research & Solution事業の開発成果をもとに汎用性のあるプロダクトを販売する。同社の研究開発によって高機能化したSaaSをAI SaaSと呼ぶ。製品は顧客接点と社内業務の領域で利用され、業務の効率化を支援する。
製品の利用料等、サブスクリプションによる売上がストック収益となり、初期設定等による売上をフロー収益とする。

2022年9月期決算説明資料

同社はAI SaaSに注力しており、2022年9月期には7月~10月の4ヵ月連続で新プロダクトをリリースした。顧客接点の領域ではコンタクトセンター市場が1.1兆円、また業務支援領域は1.7兆円規模。さらに今後もクラウド化・AI化・社内コミュニケーションのシステム化などの動きは加速するとみられる。

2022年9月期決算説明資料

競合他社

同社はチャットソリューション、FAQシステムでマーケットシェアトップを獲得。競合として4259エクサウィザーズ(2022年3月期売上高4,810百万円)、3655ブレインパッド(2022年6月期売上高28,561百万円)、4418 JDSC(2022年6月期売上高1,413百万円)、5026トリプルアイズ(2022年8月期売上高2,424百万円)など、AI開発を手がける企業が挙げられる。

2022年9月期決算説明資料

連結の範囲

同社グループは、同社および連結子会社9社、持分法適用関連会社5社を中心に構成される。注力事業であるAI SaaS事業は株式会社PKSHA Workplace、株式会社PKSHA Communication、株式会社アシリレラが担う。

強み・弱み

同社の強みは大きく3点挙げられる。まず先駆者メリットの大きい機械学習の領域において7203トヨタ自動車や6902デンソー、株式会社NTTドコモなど、業界のリーディングカンパニーと事業提携し、安定したユーザー基盤を有している点
次にAI領域での一定の知名度を有し、人材・顧客獲得に有利にはたらいている点。
最後に、同社が認識するようにアルゴリズム時代の黎明期においてすでに黒字化している事業基盤を有する点である。大企業における一定の予算が中長期で確保されている事業領域で、景気変動の影響も軽微とみられる。
経営陣および松尾氏のカリスマ性に支えられている部分も大きく、彼らのスキャンダルや企業成長の過程で彼らへの経営依存を脱しない場合にはリスク要因となる。

2022年9月期決算説明資料

KPI

AI SaaS事業におけるARR(年間経常収益)、NRR(売上維持率)、顧客社数はKPIといえる。以下はすべて2022年9月期の数値である。
①AI SaaS事業ARR:4,935百万円(前期比+23.9%)
②AI SaaS事業NRR:105.8%(前期105.8%)
③顧客社数:2,214社(前期比+354社)

業績

2018年9月期から2022年9月期までの5期をみると、売上高は1,503百万円から11,509百万円へ7.7倍に、経常利益は588百万円から1,551百万円へ2.6倍となり増収増益。AI SaaS事業が収益の拡大を牽引している。
営業CFは恒常的にプラス、投資CFは2020年9月期をのぞいてマイナスで推移。自己資本比率は2022年9月期で80.6%である。

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