3993 PKSHA Technologyの業績について考察してみた

3993 PKSHA Technologyの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2012年10月機械学習技術を用いたデータ解析事業を目的に、株式会社AppReSearchを設立。2013年2月アルゴリズムモジュール「予測モジュール_Predictor」を開発。技術顧問に人工知能の権威である松尾豊氏が名を連ね、創業者でもある代表取締役の上野山勝也氏も松尾研究室出身で博士号を有し、東京大学産学連携プラザに本店住所を置いていた「東大発ベンチャー」である。2014年8月「株式会社AppReSearch」から「株式会社PKSHA Technology」に商号変更。2017年9月東証マザーズへ上場。自然言語処理、画像認識、機械学習、深層学習技術等に関わるアルゴリズムソリューションを展開する。

株主構成

有価証券報告書によると2021年3月末時点の筆頭株主は、代表取締役の上野山勝也氏で31.03%を保有。同氏の資産管理会社である株式会社LUCE Capitalが3.63%を保有しており、併せて34.66%を保有。次いで、上野山勝也氏とともに同社設立に携わった山田尚史氏が11.68%を保有している。以下5%未満の保有で、トヨタ自動車株式会社や国内外の信託銀行などが並ぶ。

取締役会

取締役は7名(社内2名、社外5名)、社外5名のうち3名は監査等委員。監査等委員会設置会社である。取締役経営管理本部長の中田光哉氏は、ゴールドマン・サックス証券株式会社や株式会社アドバンテッジパートナーズ、Taizen Capital Pte.Ltd.などを経験し、同社へ入社。株式会社アイテックの取締役も兼任している。

代表取締役の経歴

代表取締役の上野山勝也氏は1982年7月生まれ。東京大学を卒業後、株式会社ボストンコンサルティンググループに入社。米国にてグリー・インターナショナルの立ち上げに参画し、Webプロダクトの大規模ログ解析業務を担当。その後東京大学に復学して機械学習を学び、工学博士号(機械学習)を取得。2012年10月に同社を設立。ダボス会議の「YGL2020(ヤング・グローバル・リーダーズ)」の一人に選出されている。

報告セグメント

「Mobility & MaaS事業」、「Cloud Intelligence事業」の2報告セグメントに大別される。2021年9月期第2四半期の売上高4,190百万円の構成比は、Mobility & MaaS事業66.3%、Cloud Intelligence事業33.7%である。セグメント利益は、Mobility & MaaS事業66百万円、Cloud Intelligence事業485百万円であり、調整額を差し引くと479百万円であった。

事業モデル

Mobility & MaaS事業は、SmartCity化に向けたリアル空間のオペレーションを知能化させていく領域において、画像・映像解析に関わるアルゴリズムモジュールの販売、アルゴリズムソフトウェア「HRUS」の販売を手掛けている。2019年7月に子会社化した株式会社アイテックにおける駐車場機器の製造販売や駐車場管理運営事業等も同事業に含まれる。
Cloud Intelligence事業は、デジタル空間上で行われる処理を知能化させていく領域において、アルゴリズムモジュールを活用したソリューションの提供およびアルゴリズムソフトウェア「BEDORE」、「CELLOR」の販売等を行う。

2021年9月期 第2四半期 決算説明資料

「CELLOR」は、機械学習を用いたCRMソリューション。小売業やサービス業など、優良顧客の離反防止や新規顧客のロイヤル化を目的としたCRMソリューションを提供している。データ分析を、自動化または半自動化を増加することによりこれまで膨大な時間を費やしていたデータ分析の時間やコストを削減できる。さらには分析を基に、ユーザー広告等を配信することにより優良顧客の離反防止や新規顧客のロイヤル化を行う。
「HRUS」は、業界や使途の特化型の深層学習技術を用いた画像・動画像の識別エンジンで、企業向けに販売する。同社は、今後さまざまな業界・領域にカメラを中心としたイメージング機器が普及していくと予想しており、それらのさまざまなイメージング機器と連携して動作し、物体検知や物体認識を実現することでサービス品質を高め、サービスモデルの変革を支援するとしている。
「BEDORE」は、チャット対応・FAQ対応の自動化ソリューション。ユーザーから入力されたテキストおよび音声を認識し、同社グループが保有する業界固有表現辞書と、システム構成を業界別に汎用化し、従来は人手で行われていた接客・コールセンター・FAQ対応の自動化・半自動化を実現している。
アルゴリズムモジュールの販売形態は2つあり、1つは顧客企業が保有するソフトウェアやハードウェアに組み込むケース、もう1つは自社のソフトウェアに組み込み、アルゴリズムソフトウェアとして販売するケースである。収益構造は、初期設定時に受領するイニシャルフィーと、設定後に月額で受領するライセンスフィーの2つから構成されている
同社は、4つのステップでデジタル技術が社会に普及していくと考えている。4つのステップとは、既存のソフトウェアにおける「エンタープライズの時代」、「インターネットの時代」、未来のソフトウェアにおける「アルゴリズムの時代」、「ロボットの時代」。技術的には、2012年機械学習技術の研究分野に起こった技術革新「深層学習技術」の登場を機に、ソフトウェアが以前より知能的な処理を行うようになっていると言う。現在はアルゴリズムの時代の黎明期にあり、今後、より知的な処理を行うソフトウェアが増加し、社会に普及するとしている

競合他社

3906 ALBERT(直近決算期売上高27億円)、4382 HEROZ(直近決算期売上高15億円)、4056ニューラルポケット(2020年12月期売上高762百万円)など、AI開発を行う企業が競合として挙げられる。

連結の範囲

同社グループは、同社及び連結子会社8社、持分法適用関連会社1社を中心に構成され、社内で開発したアルゴリズムモジュールを用いて様々な社会課題を解決し、社会へ付加価値を提供すべく、Mobility & MaaS事業、Cloud Intelligence事業に取り組む。

強み・弱み

先駆者メリットの大きい機械学習の領域においてトヨタ自動車やデンソー、NTTドコモなど、業界のリーディングカンパニーと事業提携し、安定したユーザー基盤を有している点は強みである。また、AI領域で一定の知名度を有すことは、人材・顧客獲得の上で大きな強みとなっていると見られる。加えて、同社が認識するようにアルゴリズム時代の黎明期において、既に黒字化している事業基盤を有すことも強みの1つである。中長期視点で、大企業における一定の予算が確保されている事業領域で、景気変動の影響も軽微と見られる。経営陣及び松尾氏のカリスマ性に支えられている部分も大きく、彼らのスキャンダルや企業成長の過程で彼らへの経営依存を脱しない場合にはリスク要因となる。

2021年9月期 第2四半期 決算説明資料

KPI

具体的な数値の開示はないが、KPIとみられる指標は下記。
①アルゴリズムソリューション提供先数
②アルゴリズムソフトウェア提供顧客数

業績

2017年9月期から2020年9月期までの4期をみると、売上高は934百万円から7,393百万円、経常利益は384百万円から602百万円と増収増益。アルゴリズム需要の高まりもあるが、子会社化したアイテックは同期売上高4,844百万円、経常利益283百万円とその業績寄与も大きい。営業CFは恒常的にプラス。投資CFは期によって大きくばらつきがあるが、営業CFに対して拠出額は多い。2021年9月期第2四半期の自己資本比88.2%。