4883 モダリスの業績について考察してみた

4883 モダリスの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

沿革

2016年1月エディジーン株式会社として創業し、2019年8月に現社名に変更。東京大学発ベンチャーとして、創業3ヵ月後に米国拠点(マサチューセッツ州ケンブリッジ、現在はウォルサムへ移転)を開設、2017年4月には4503アステラス製薬との間で遺伝性遺伝子疾患治療薬に関する共同研究を開始している。ライセンス契約を締結したほか、4523エーザイとも共同研究をスタートさせた。2020年8月に東証マザーズ市場に上場
「切らないCRISPR技術」をコアプラットフォームとし、アンメットニーズの高い遺伝子疾患治療薬を中心に開発する。

株主構成

有価証券報告書によると、2021年6月末時点の筆頭株主は株式会社ライフサイエンスイノベーションマネジメント (16.7%)で、代表取締役CEOである森田氏の資産管理会社である。第2位は東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻の濡木教授(14.1%) 、第3位が株式会社日本カストディ銀行の信託口(10.5%)。以下、複数のベンチャーキャピタルが続く。外国人株式保有比率は10%未満。

取締役会

取締役は6名(社内1名、社外5名)、うち3名が監査等委員(全員社外)。監査等委員会設置会社である。社外取締役が多数を占め、東京大学発ベンチャーのためサイエンティフィック・ファウンダーとして2021年3月末まで東大教授の濡木理氏が社外取締役を務めていた。しかし自社株式売却に関する取り決めに反して株式を売却したとして退任。社外取締役は製薬企業で要職を担う人物が名を連ねる

代表取締役の経歴

ファウンダー兼代表取締役CEOの森田晴彦氏は1969年8月生まれ。キリンビールにてバイオ医薬品などに関する研究開発に従事したのち、コンサルティング会社(現PwC Strategy)にて企業向けの経営戦略に関するコンサルティングを担当。同社以前にはいくつかのベンチャーで経営を主導した。医薬品開発だけではなく、経営的な側面での経験も豊富である。

報告セグメント

遺伝子治療薬開発事業のみの単一セグメントである。2021年12月期における業績は、事業収益1百万円、営業損失1,239百万円、経常損失1,231百万円と赤字。新薬のライセンス契約が予定よりも遅れており、減収したものとみられる。

事業モデル

同社は「Every Life Deserves Attention(全ての命に、光を)」を経営理念に掲げ、同社のプラットフォーム技術である遺伝子疾患治療薬開発技術を用いて、製薬会社などと組み、製品化を目指す。特に同社は既存の製薬企業が手掛けにくい希少疾患に対する画期的な新薬の開発を目標としており、同社が活用する技術基盤(CRISPR-GNDM)を特定の疾患に向けた開発に絞ったうえでパートナー企業とパートナー企業の資金で協業するパターン(協業モデルパイプライン)と、自社で特定の疾患を特定し、自社資金で開発するパターン(自社モデルパイプライン)を組み合わせてビジネスの幅を広げている。

2021年度 事業計画及び成長可能性に関する事項

協業モデルパイプラインは現在3本が進行中で、アステラス製薬と進めている事業が2本、エーザイと進めている事業が1本である。アステラス製薬と協業している2本はライセンス契約を締結しており、このライセンス収入が足もとの収益源だ。
自社モデルパイプラインは研究段階にあり、今後順次ライセンス契約を締結し、収益化が図られていく見込み。

2021年度 事業計画及び成長可能性に関する事項

競合他社

創薬を手掛け基盤技術をプラットフォームとして製薬企業と協業するバイオベンチャーとして、同じく東京大学発ベンチャーである4587ペプチドリームが挙げられる。ペプチドリームは分子レベルの結合技術を基盤とするのに対し、同社は日本発の遺伝子編集プラットフォーム(創薬)企業としている

連結の範囲

2021年12月期末時点で、連結子会社は米国子会社(Modalis Therapeutics, Inc.)1社のみ。同拠点はハーバード大学出身の研究者を中心に構成され、世界最先端の動向把握、研究開発拠点として機能している

強み・弱み

同社の技術基盤は米ブロード研究所が持つ遺伝子制御技術と東京大学発の改変酵素特許に基づき、日本国内では独自のポジションを確保している。同社は自社技術について6つの強みを挙げている。特に注目すべきは基本特許のライセンスを含む競争力のある知財ポジションと製薬企業とのパートナーシップである。現在進めているアステラス製薬・エーザイに加え、今後のパートナー企業の広がりの行方には注目である。
一方で、ライセンス契約締結の遅れが懸念事項である。医薬品の開発は多額の研究開発費と長い時間を要する。しかし臨床試験において有用な効果を発見できなければ開発の延期や中止に至る場合もある。同社は業界内で独自のポジショニングをしているが、ライセンス契約の遅れ、共同開発の中止などが目立っており停滞感がみられる。

KPI

同社では単一の事業セグメントしかないことのほか、業務の特殊性もあり、具体的なKPIの公表はない。ただし、同社の事業モデル上の強み(協業モデルと自社開発)を踏まえると、どの程度のパイプラインを抱え、ライセンス収入獲得の目途がいつなのか、などが注目すべき点。足もとは共同モデルのパイプライン数は3本、自社開発のそれは4本である。収益に対してよりインパクトがあり、かつリスクが高いのは自社開発であり、自社開発の動向、収益の刈り取りの状況などがポイント。

2021年12月期 決算説明資料

業績

2017年12月期から2021年12月期までの業績を見ると、2019年12月期に事業収益644百万円、経常利益146百万円に達したものの、2022年12月期は事業収益1百万円、経常損失1,231百万円に落ち込んだ。要因は研究開発費用(1,009百万円)などの負担である。5年間をとおして黒字は2019年12月期のみだが、自己資本比率は5期連続で90%以上を維持。今後は自社モデルパイプラインを2本追加する予定であり、また現在進捗中のパイプラインのライセンスアウトや共同研究の一時金収入などの獲得を目指す方向だ。

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