4883 モダリスの業績について考察してみた

4883 モダリスの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

沿革

2016年創業で、2019年に現社名に変更。東京大学発ベンチャーとして、創業3か月後に米国拠点(マサチューセッツ州ケンブリッジ)を開設、2017年にはアステラス製薬との間で遺伝性遺伝子疾患治療薬に関する共同研究を開始している。同社とライセンス契約を締結するほか、エーザイとも共同研究をスタートさせた。2020年8月に東京証券取引所マザーズ市場に上場

株主構成

筆頭株主は株式会社ライフサイエンスイノベーションマネジメント(19.9%)、第2位は東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻の濡木教授(17.9%)、第3位が富士フィルム(9.3%)であり、複数のベンチャーキャピタルが続く。

取締役会

同社の取締役は7名(社内1名、社外取締役は6名)、そのうち取締役3名は監査等委員である。社外取締役が多数を占めており、東京大学発ベンチャーということで、サイエンティフィック・ファウンダーとして濡木氏が社外取締役を務めるほか、社外取締役は製薬企業で要職を担う人物が名を連ねる

代表取締役の経歴

ファウンダー兼代表取締役CEOの森田晴彦氏は、キリンビールにてバイオ医薬品などに関する研究開発に従事したのち、コンサルティング会社(現PwC Strategy)にて企業向けの経営戦略に関するコンサルティングを担当。当社以前にはいくつかのベンチャーで経営を主導。医薬品開発だけではなく、経営的な側面での経験も豊富である。

報告セグメント

同社のセグメントは遺伝子治療薬開発事業のみの単一セグメントである。2020年12月期第3四半期(1月~9月)における業績は、事業収益340百万円、営業損失168百万円、経常損失209百万円と赤字となっており、研究開発費(349百万円)および上場関連費用(20百万円)が負担となったものである。

事業モデル

同社は「Every Life Deserves Attention(全ての命に、光を)」を経営理念に掲げ、同社のプラットフォーム技術である遺伝子疾患治療薬開発技術を製薬会社などと組み、製品化を目指す。特に同社は既存の製薬企業が手掛けにくい希少疾患に対する画期的な新薬の開発を目標としており、同社が活用する技術基盤(CRISPR-GNDM)を特定の疾患に向けた開発に絞ったうえでパートナー企業とパートナー企業の資金で協業するパターン(協業モデルパイプライン)と、自社で特定の疾患を特定し、自社資金で開発するパターン(自社モデルパイプライン)を組み合わせてビジネスの幅を広げている。
協業モデルパイプラインは現在5本が進行中で、アステラス製薬と進めている事業が4本、エーザイと進めている事業が1本である。アステラス製薬と協業している4本のうち2本はライセンス契約を締結しており、このライセンス収入が足もとの収益源である。
自社モデルパイプラインは研究段階にあり、今後順次ライセンス契約を締結し、収益化が図られていく見込み。上場時の森田氏の会見では、協業モデルと自社モデルの割合については、足もとではうまく回っているものの、今後検討課題と述べている。

競合他社

現在の日本においては同社が手掛ける遺伝子疾患治療薬開発を直接手掛ける企業はない。同社のターゲットが既存の製薬企業がターゲットとしてきた一定の患者数(需要)が存在する疾患を対象としているのに対し、希少疾患をターゲットとしていることが根底にある。創薬を手掛ける企業として、同じく東京大学発ベンチャーであるペプチドリームがあるが、ペプチドリームは分子レベルの結合技術を基盤とするのに対し、同社は日本発の遺伝子編集プラットフォーム(創薬)企業としてユニークなポジションにいるといえる。

連結の範囲

2020年12月期第3四半期時点では、同社の連結子会社は米国子会社(Modalis Therapeutics, Inc.)1社のみである。同拠点はハーバード大学出身の研究者が中心で構成されており、バイオ研究の中心地で世界の最先端の動向把握、研究開発拠点として機能している

強み・弱み

同社の技術基盤は米ブロード研究所が持つ遺伝子制御技術と東京大学発の改変酵素特許に基づいており、日本国内では独自のポジションを確保している。同社では自社の技術について6つの強みを挙げており、特に、注目すべきは基本特許のライセンスを含む競争力のある知財ポジションと製薬企業とのパートナーシップである。特に、現在進めているアステラス製薬・エーザイに加え、今後のパートナー企業の広がりの行方には注目である。

KPI

同社では単一の事業セグメントしかないことのほか、業務の特殊性もあり、具体的なKPIの公表はない。ただし、同社の事業モデル上の強み(協業モデルと自社開発)を踏まえると、どの程度のパイプラインを抱え、ライセンス収入獲得の目途がいつなのか、などが注目すべき点。足もとは共同モデルのパイプライン数は6つ、自社開発のそれは2つである。収益に対してよりインパクトがあり、かつリスクが高いのは自社開発であり、自社開発の動向、収益の刈り取りの状況などがポイント。

業績

2020年12月期第3四半期の業績は、事業収益が340百万円、事業費用508百万円、経常利益▲168百万円、当期純利益▲214百万円と研究開発費用(349百万円)などが負担となり赤字。足もとでは通期見込みは黒字転換を見込んでいたものの、自社開発案件のライセンス契約締結交渉が停滞し、契約金獲得見込みが後ずれしたことで、通期見込みを大きく下方修正した。この結果、事業収益は1,100百万円から342百万円、当期純利益は250百万円から▲471百万円に大きく下方修正となっている。