4593 ヘリオスの業績について考察してみた

4593 ヘリオスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

20011年2月、株式会社日本網膜研究所設立、iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来網膜色素上皮細胞移植による加齢黄斑変性治療法の実用化戦略を検討開始。2013年2月にiPSアカデミアジャパン株式会社との間で、同年3月には独立行政法人(現国立研究開発法人)理化学研究所との間に、iPS細胞等を用いた網膜色素上皮細胞治療に係る特許実施権許諾契約を締結。同年9月に商号を株式会社ヘリオスに変更、2015年6月には東証マザーズ上場。2016年1月、米国Athersys, Inc. (アサシス社)との間で国内における幹細胞「MultiStem」を用いた再生医療等製品に関するライセンス契約を締結。体性幹細胞ならびにiPS細胞を活用した再生医薬品の、研究・開発・製造を事業とするバイオベンチャー。

株主構成

有価証券報告書によると、2020年12月末時点での筆頭株主は創業者で代表執行役社長の鍵本忠尚氏で48.13%保有。以下は5%未満の保有率で国内外の金融機関等が大勢を占めるが、提携や共同開発などの契約を締結している株式会社ニコン(2.98%)及び大日本住友製薬株式会社(2.90%)も名を連ねる。また、バイオベンチャーの大株主リストにしばしば登場する藤岡義久氏(オフィス機器商社の株式会社CAN代表取締役と見られる)が1.30%保有。外国人株式保有比率は10%以上30%未満

取締役会

取締役は8名(社内4名、社外4名)、うち3名は監査委員(委員長1名は社外、委員2名は社内社外各1名)、監査委員会設置会社である。CEOの鍵本氏を除く社内取締役は森総合法律事務所(現 森・濱田松本法律事務所)出身で弁護士資格を有する松田良成氏ゴールドマンサックス証券出身で金融畑のリチャード・キンケイド氏海外のバイオ系製薬メーカーを複数経験してきたデイビッド・スミス氏の3名である。代表権を持たない社内取締役は弁護士、証券会社出身者、製薬会社出身者。社外取締役には弁護士、公認会計士、コンサルティング会社出身者、製薬会社出身者が就任。

代表権を持つ取締役の経歴

取締役兼代表執行役社長CEOの鍵本忠尚氏は1976年12月生まれ。九州大学卒業後、2003年5月に九州大学病院にて眼科医として勤務。国家公務員共済組合連合会浜の町病院勤務などを経て、2005年4月にアキュメンバイオファーマ株式会社(現アキュメン株式会社)設立、眼科手術補助剤を開発。2011年2月に同社設立、2012年2月には代表取締役社長に就任。2018年3月より現職

報告セグメント

「医薬品事業」の単一セグメントであるが、製品分野別に「体性幹細胞再生医薬品」ならびに「iPS細胞に関連する技術を活用した再生医療等製品(iPSC再生医薬品)」に大別される。それぞれの売上高、利益等は開示されていない。

事業モデル

前述のとおり、体性幹細胞再生医薬品とiPSC再生医薬品の開発を事業とする。体性幹細胞再生医薬品は、生体の様々な組織に存在する幹細胞である体性幹細胞を利用して、現在有効な治療手段がない疾患等に対する新たな治療法の提供を目的とする。主力製品は「MultiStem」(HLCM051)であり、脳梗塞、急性呼吸窮迫症候群などを治療対象とする。同製品は同社開発品ではなく、上記アサシス社から供給を受け同社が国内販売する予定であり、現在のところ第2相臨床試験(Phase2)実施中である。MultiStemは、作用機序及び投与方法の両面で従来型医薬品に近いため、後述のiPSC再生医薬品に比較して扱いやすい点が特長である。

公式ウェブサイト内「事業分野」>「体性幹細胞再生医薬品」

一方、iPSC再生医薬品の研究開発に関しては、同社が中心的役割を果たし自社内研究も実施している。対象疾患は、固形がん、加齢黄斑変性、代謝性感疾病などであり、現在4種の製品が前臨床試験の段階にある。iPS細胞(iPSC)は生体を構成するすべての組織や臓器に分化誘導することができるため、例えば皮膚などの採取が容易な部位に由来するiPS細胞を、肝細胞など他の臓器等の細胞へ誘導することも可能である。このような特性を利用して、機能不全に陥った細胞等を置換して機能を回復することが、iPSC再生医薬品の目的である。
同社ではまた、iPS細胞を応用した独自のユニバーサルドナーセル(UDC)を開発し、次世代プラットフォームに位置づけている。UDCは免疫拒絶反応を人工的に抑えた細胞のため、患者以外から採取した細胞由来の他家iPS細胞を、免疫抑制剤の併用なしに移植可能である。
2021年12月期第1四半期決算説明資料 p.21

競合他社

iPS細胞を利用した再生医薬品の分野では、4901 富士フイルムホールディングス(株)(売上高2,192,519百万円)が、ベンチャーではないものの一部製品で競合し得る。
ベンチャーに限れば、7774 (株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(売上高2,257百万円)、4592 サンバイオ(株)(売上高ゼロ)などが、再生医薬品開発を事業とする点で競合する。

連結の範囲

同社グループは、同社、連結子会社2社で構成される。連結子会社のうち、米国Healios NA, Inc. は医薬品の開発等を事業とし、同社100%出資で取締役兼執行役CFOのリチャード・キンケイド氏が社長を務める。

強み・弱み

新設された、再生医療等製品に対する早期承認制度が追い風となる。体性幹細胞再生医薬品に関しては、提携先であるアサシス社の製品を扱う点がリスク低減に寄与すると推測される。
一方、自前で開発のiPSC再生医薬品は前臨床試験の段階にあり、上市までの間により多くのリスクが見込まれる。

KPI

製品上市前のため、パイプライン進捗状況が主要KPIと見なせる。
・体性幹細胞再生医薬品:MultiStem(HLCM051)がPhase2
・iPSC再生医薬品 :各製品とも前臨床試験

2021年12月期第1四半期決算説明資料 p.3

業績

いずれの製品も上市に至っていないため、先行投資を回収できない状況にある。上場以来、売上高は100百万円未満で経常利益は赤字。2020年12月期は、売上高27百万円(前期比▲69.1%)、営業利益▲4,183万円(前期比+114百万円)、経常利益▲5,378百万円(前期比▲819百万円)。営業CFは恒常的にマイナス、投資CFもほぼマイナス。直近決算期の自己資本比率は29.3%。