2160 ジーエヌアイグループの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2001年11月に米国法人Gene Network, Inc.の日本法人として株式会社ジーエヌアイを東京都に設立、その後の組織変更で現在は米国法人は当社傘下の子会社へ。2005年5月中国法人「上海ジェノミクス有限公司」の株式を76.7%を取得し、F647の第一相(以下P1)を開始。これが現在中国で販売中の「アイスーリュイ」である。2006年12月F351の中国における治験許可を申請。2007年6月上海ジェノミクス有限公司を100%子会社化し、2007年8月東証マザーズ上場。2011年6月株式会社ジーエヌアイグループへ商号変更。2011年8月北京コンチネント薬業有限公司の持ち分を51%取得し子会社化。2011年9月中国でF647(アイスーリュイ)が特発性肺繊維症の適応で新薬承認を取得し、2014年2月より「アイスーリュイ」販売開始現在は中国においてアイスーリュイの適応症拡大やF351の肝線維症薬などを開発中。

株主構成

有価証券報告書によると2020年6月末時点で同社の株式を5%以上保有する株主はおらず、取締役代表執行役社長兼CEOであるイン・ルオの保有比率は3.3%で筆頭株主。ただし、大量保有報告書に基づき新株予約権の持ち分を考慮すれば同氏の持ち分は7.0%。その他は個人投資家や各証券会社、信託銀行など1%程度の保有で安定株主が少ない

取締役会構成

取締役は7名(社内3名、社外4名)、社外4名のうち3名は監査委員。監査委員会設置会社である。CFOは証券業界出身で事業投資や財務の経験を豊富にもつ外国人、もう1名の取締役は日本たばこ産業の企画・中国事業経験を持つ日本人。社外取締役も金融や中国医薬事業の豊富な経験を持つ日本人2名、中国人ドクター2名で構成されている。

代表取締役の経歴

取締役代表執行役社長兼CEOのイン・ルオ氏は1965年7月生まれ、1982年に北京ユニオン医科大学を卒業し、1991年に米国コネティカット大学ヘルスケアセンターで理学博士号を取得。1993年からカリフォルニア大学サンフランシスコ校でHIVの研究に従事。その後ベンチャーキャピタルの出資を受けて上海ジェノミクス社(現在のジーエヌアイグループ)を創業

報告セグメント

「医薬品事業」と「医療機器事業」の2報告セグメントに大別され、2020年12月期第3四半期は売上収益6,953百万円、営業利益1,411百万円だが、医薬事業が売上収益の82.7%、営業利益の7割程度を占める

事業モデル

医薬品事業は、創薬ターゲットの研究開発、低分子化合薬の治験・臨床開発、新薬販売を主に中国で行う。薬品となる可能性を持つ候補物や途中まで治験や臨床試験の済んだ化合物を他社へ売却するライセンスアウトは前提とせず、自社グループ内での化合物の収益化を方針とする。特発性肺線維症を適応症とし販売中の「アイスーリュイ」は、自社で開発した化合物のため収益性が高く、中国内で採用する病院数が増加し、業績拡大に寄与している。研究開発のパイプラインには化合物が4つ。進捗状況は下図参照。

2020年12月期第3四半期連結決算概要

F351は自社開発の化合物で、F573はImmune Pharmaceuticals Inc.から導入した化合物である。「タミバロテン」は東光薬品工業が日本で急性前骨髄球性白血病治療薬として販売済みで、2015年に中国で輸入薬として承認申請済だが進展がない
なお、中国子会社の北京コンチネント薬業有限公司(以下BC、議決権保有比率55%)へ、F351を含む化合物の知的財産権を譲渡することで中国での効率的な新薬承認体制を構築している。新設されたBCの持株会社Continent Pharmaceuticals Inc.は2021年中に上海もしくは深圳に上場予定。

医療機器事業では、2017年に株式の70%を取得し、2020年12月に完全子会社化した米国のBerkeley Advanced Biomaterials LLCを拠点に独自開発した人工骨を生体材料として製造販売する。

競合他社

創薬ベンチャー企業のため、パイプラインの観点から競合を挙げると、特発性肺線維症薬ではドイツ本社のベーリンガーインゲルハイムが発売する「オフェブ」4507塩野義製薬が日本国内でP3中の「ピレスパ」などがあり、新薬開発にはグローバル各社が取組中。中国内の販売は独特のネットワーク構築が鍵となる傾向にあり、9割程のシェアを持つアイスーリュイの脅威となる劇的な効果・効能差が認められる新薬をもつ競合はいまのところない

連結の範囲

連結子会社は13社あるとみられ、ジーエヌアイグループは同社を筆頭に、上海ジェノミクス社、GNI Hong Kong Limited、GNI USA ,Inc、Continent Pharmaceuticals ,Incの4社が中核企業となり、その4社の傘下に米中の11社ほどが所属する。主に研究開発拠点をそれぞれの国ごとに置いている形である。

同社HP トップページジー>エヌアイグループについて>会社概要・グループ体制

強みや弱み

販売中の新薬を持ち安定した収益源を保有していることは強み。一般的に、研究開発から発売までは長時間を要すことが多く、その開発も必ず成功するとは限らない。また、中国の現地子会社を通じて中国における医師や病院とのネットワークを構築しており、治験・臨床開発から販売までを中国市場で有利に進めるうえで大きな強みとなる。医薬品業界は、創薬開発の難易度が一層増しており、成功した化合物をグローバル展開することで幅広く投資回収することが定石となっているが、同社はライセンスアウトを戦略の前提としないため、中国外の地域におけるネットワークは脆弱と見られる。

KPI

創薬ベンチャーにおいては前述の図に示されるパイプラインの進捗状況と、対象疾患の患者数と効能からみこめる価格帯がKPIとなる。パイプラインの進捗状況としては新薬開発の治験者数の推移が参考となり得る。
① パイプラインの進捗状況(どれかの試験が進んだり、中止となること)
② 新薬開発の治験者数の推移

業績

2014年2月にアイスーリュイを販売開始して以降、売上高は急拡大し、2017年12月期には税前利益も黒字化。2020年12月期第3四半期決算によると、売上収益は6,953百万円(前年同期比+30.4%)、営業利益1,411百万円(同+30.6%)足元でもアイスーリュイの販売拡大は継続しており、高い成長率を維持している。営業CFは2018年12月期からプラス転換、投資キャッシュフローは子会社の資本関係変更なども多くマイナス傾向である。