6191 エアトリの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

沿革

2007年5月オンライン旅行事業者「株式会社旅キャピタル」として取締役CGOの吉村英毅氏と取締役会長の大石崇徳氏により創業、事業拡大や商号変更を経て2020年1月より「株式会社エアトリ」となった。2016年1月東京証券取引所マザーズ市場上場、2017年3月に東京証券取引所第一部に変更。ベトナムに現地法人設立や関連会社を展開し、航空券の販売・予約を中心に国内外の旅行に付随する周辺事業を積極的に子会社化し、現在はITオフショア開発や成長企業投資、ヘルスケアまで事業拡大している。

株主構成

2020年9月30日時点の大株主を見ると、大石崇徳氏31.1 %、吉村英毅氏の資産管理会社と見られる法人が13.8% と、創業者2名で45%近くを保有。他は、国内外の信託銀行の信託口が上位で、目立った他の株主はない。外国人株式保有比率は10%以上20%未満。

取締役会構成

同社HPでは、取締役は11名(社内9名、社外2名、内1名は社外独立役員)、監査役4名 (社外2名、内1名は社外独立役員。)が紹介されており、監査役会設置会社である。 40歳前後の柴田社長やここ2、3年に採用した30歳半ばのコンサルや会計ファーム出身者2名、会長大石氏が学生時の起業時から所属する40歳前半が2名、吸収合併したDeNAトラベルからの就任が2名と事業が多岐にわたり取締役も多い。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の柴田裕亮氏は1982年生まれ、東京大学卒業。監査法人トーマツ出身で野村證券出向を経て2015年5月より同社取締役CFOに就任、2019年1月より代表権のある取締役CFOへ昇格し、翌年1月より現職へ就任。尚、創業者の2名は現在代表権のない取締役である。

報告セグメントと事業の構成、ビジネスモデル

同社のセグメントは、オンライン旅行事業、ITオフショア開発事業、投資事業の3つと、それ以外の教育関連事業をまとめたその他の合計4つに区分される。2020年9月期はコロナの影響を大きく受け減損も実施しているが、各事業の売上高及び営業利益は、オンライン旅行事業が売上高18,794百万円で全体の88%を占め、営業損失7,544百万円、ITオフショア開発事業は売上高1,888百万円で全体の9%、営業利益は0百万円、投資事業は売上高558百万円で全体の3%、営業損失は247百万円である。

競合他社

オンライン旅行事業は、楽天トラベル、じゃらん、JTB、H.I.S. などの国内大手や、海外大手のTrip Advisor、トリバゴ、Ctripなど、その他にも知名度を持つブランドで複数事業者がサービス提供中と競合は多いが、同社はOTA業界で唯一国内全航空グループの自社発券が可能で航空券取扱高が最多である

連結の範囲

2020年9月期本決算では、連結子会社27社が報告されている。内1社は現在東京証券取引所JASDAQに2020年9月より上場中の株式会社まぐまぐである。

事業モデル

「アジア経済圏の中で生まれる変化を事業機会と捉え」て、「アジア黄金期におけるリーディングカンパニー」を目指すビジョンを示しており、エアトリ旅行事業の収益回復を待ちつつ、旅行領域以外の4つの事業の成長継続と、ヘルスケア事業の新規立ち上げに取組中。
オフライン旅行事業は、エアトリ事業と訪日旅行事業、ライフイノベーション事業の3事業で構成され、エアトリ事業は比較・予約サイト「エアトリ」の運営による自社直営、OEM提供、ビジネストラベルマネジメント(BTM)からなる。訪日旅行事業は訪日旅行客向けにWi-fiやキャンピングカーの提供、旅行客の母国語でのホテル・旅館情報の株式会社ジャルパックへの販売や、Airbnbの公式パートナーとして民泊オーナー向けに物件の登録・運用を提供。ライフイノベーション事業は、ヘルスケア分野やメルマガ・Webメディア、スーツケースの販売・レンタルを手掛ける。
ITオフショア開発事業は、ベトナムのホーチミンとハノイ、ダナンにおいて日系企業では東南アジアにおいて最大規模のラボ型開発サービスを提供。EC・Webソリューション・ゲーム・システム開発企業が顧客となる。1年以上の契約で専属チームを阻止し、賃金は雇用時から顧客負担の契約である。
投資事業は、協業によるシナジーを見込める成長企業を中心に、キャピタルゲインも狙いつつ2020年9月期時点で64社、23億円に投資している。

強みや弱み

オンライン旅行事業では、国内全航空会社との契約に代表される「仕入れ力」、BTMなどを含めた「多様な販路」、自社のオフショア開発事業を活用した安価で迅速な「システム開発」が強みと謳われている。オフショア開発はスケールメリットが強みであるがコロナを受けて従業員数が急減している(KPI⑧参照)。ポイント経済圏を構築している楽天やリクルート(じゃらん)、シニア層から支持の熱いJTBなどの大手競合に対して、消費者に対する「エアトリ」ブランド独自の訴求力が低い点は弱みと言える。

KPI

エアトリ旅行事業では各国の出入国規制や経済回復の状況、同社事業へ影響のある政策動向が業績へ与える影響が大きい。それらを反映する指標として次の①~⑥などが考えられる。また、同社の実績を確認できる⑦~⑨などのKPIも重要である。

①「エアトリ」がインターネットで検索された回数(Google トレンド検索)
②JR各社の輸送量の月次推移(JR各社HP)
③空港の利用者数の動向(半期毎の開示、ニュース報道)
④訪日外国人の月次推移(日本政府観光局)
⑤ホテルの稼働率の月次推移(STR調査結果を日本経済新聞社が報道)
⑥Go to施策や東京オリンピック開催の動向
⑦BTM契約者数(2020年9月期3,529社、前期比+254社)
⑧ITオフショア開発事業の従業員数の推移(2020年9月期712名、前期比▲229名)
⑨連結取扱高 月商推移(同社HP)

懸念点

コロナの影響を大きく受ける事業を海外含め多岐にわたり展開しており、急激な環境変化に適応するための高い経営執行能力が求められる。また、同社が今後開拓を狙う「アジアの黄金期」の収益機会は、国内外さまざまな資本・バックグラウンドをもつ競合が狙っている。それらを相手にどのように優位性を出していけるかは未知数である。

業績の進捗

2020年9月期本決算は、売上高21,191百万円(前期比▲12.8%)、営業損失8,956百万円(赤転)、当期包括損失▲8,483百万円(赤転)と、大幅な減収減益である。コロナ禍の状況を踏まえ、74.6億円の減損を実施。減損控除前の営業損失も7.8億円と赤字である。