沿革
1914年11月、由良精工合資会社設立、日本初のベンゼン精留装置を建設しアニリンの工業化に成功。1953年6月、東京地方裁判所に会社更生法を申請。同年、第一通商株式会社(現三井物産株式会社)が資本参加。1955年10月、本州化学工業株式会社へ商号変更。1956年3月、会社更生手続終結が決定。1961年10月に大証二部上場、同年12月には東証二部上場。2021年9月、三井化学株式会社ならびに三井物産株式会社による株式公開買付により上場廃止。液晶ポリマー、特殊ポリカーボネート樹脂及び特殊エポキシ樹脂などの高機能樹脂の原料、電子材料、医薬品、農薬などの原料となる各種化学品の製造・販売を事業とする。
株主構成
三井化学株式会社ならびに三井物産株式会社。両者の保有比率は非開示。
取締役会
上場廃止前最後の2021年3月期有価証券報告書によると、取締役は7名(常勤3名、非常勤4名)、監査役は3名(常勤1名、非常勤2名)、監査役会設置会社である。代表権を持たない常勤取締役1名はプロパー。非常勤取締役には、三井化学株式会社ならびに三井物産株式会社から各2名が就任。
代表取締役の経歴
代表取締役は2名。代表取締役社長の福山裕二氏は1958年8月生まれ。九州大学卒業後、1981年4月に三井石油化学工業株式会社(現三井化学株式会社)入社。常務理事などを歴任後、2017年6月に同社代表取締役社長に就任(現任)。
代表取締役の堀部泰男氏は1972年6月生まれ。1995年4月に三井物産株式会社入社。ベーシックマテリアルズ本部高機能化学品事業部次長などを経て、2021年9月より現職。
報告セグメント
「化学品」、「機能材料」、「工業材料」の3セグメントで構成される。2021年3月期の外部顧客への売上高20,478百万円の構成比は、化学品44.3%、機能材料26.2%、工業材料27.8%、その他1.7%であった。また、同期の調整前セグメント利益4,169百万円の構成比は、化学品35.7%、機能材料26.2%、工業材料37.9%、その他0.2%であった。売上高、セグメント利益の両面で化学品ならびに工業材料が二本柱となる。なお、地域別売上高は日本62.5%、ベルギー14.6%、欧州4.9%、北米0.7%、アジア17.3%と、日本国内が主力市場となる。また、売上高に占める主要顧客の割合は、ドイツにおける特殊ビスフェノールプロジェクトに関する合弁会社契約を締結している、三井物産株式会社が35.6%、コベストロ社(ドイツ)が14.6%であった。
事業モデル
各種化学製品の原料となる芳香族化合物の製造・販売を事業とする。「クレゾール誘導体」、「ビフェノール」、「電子材料」、「特殊ビスフェノール」の4事業をコア事業と位置付け、これらの製品を中心に主として情報・通信、自動車、医薬などのニッチ分野向けに国内・海外において積極的な事業活動を展開する。
クレゾール誘導体は、家畜用飼料に使用されるビタミンE原料、農薬及び電子材料、フェノール系酸化防止剤などに利用される。ビフェノールは、パソコンやスマートフォンのコネクターなど耐熱性・精密成形性を必要とする部品に使用されている液晶ポリマー、医療用器具に使用されているポリフェニルスルホンなどの主要原料であり、情報通信・電子関連分野や医療分野では欠かすことのできない製品である。電子材料には、半導体及びフラットパネルディスプレイの製造過程で使用されるフォトレジストの材料となる各種製品が該当する。特殊ビスフェノールは、エレクトロニクス分野やモビリティー分野の高機能部材に使われる樹脂(特殊ポリカーボネート、特殊エポキシ)の原料となる。エレクトロニクス分野では、光学特性に優れた「BisOC-FL」、「BisPEO-FL」(光学レンズ用樹脂原料)、低誘電率や耐熱性など特徴ある機能を有する「Bis-F」、「BisP-AP」(情報・通信機器部品用)などを製造・販売。モビリティー分野では高耐熱樹脂原料「BisP-HTG」(自動車部材)、高耐傷性樹脂原料「S-BOC」(自動車内装部材用)などを製造・販売。
なお、開発段階においては、顧客ニーズに合致した機能材料の提案、開発ステージに合わせたスケールアップなど、効率的な開発~生産への移行技術を展開する。
競合他社
三井化学系列の同社に対し、「4188 (株)三菱ケミカルホールディングス」(売上収益3,257,535百万円)は、ビスフェノールはじめ化学品原料全般を扱う点で競合し得る。
連結の範囲
同社グループは、同社及び子会社2社(うち連結子会社1社)で構成される。連結子会社で技術ライセンスの供与及び業務受託を事業とするHi-Bis GmbH(ドイツ)は、売上高の連結売上高に占める割合が10%を超える(14.6%)。
強み・弱み
創業以来パイオニアとして長年にわたり培ってきたフェノール誘導品の合成技術を活かし、特徴のあるファインケミカル製品を創出・提供している点が強み。ニッチ市場における特長ある製品に特化している点は、競合回避の面で有利。一方、大幅に需要が伸長した場合には大手化学メーカー進出の可能性があり、シェアを失うリスクが生じる。原油価格上昇は生産コスト上昇を招く点も憂慮される。
KPI
生産実績などが主要なKPIとみなせる。
・生産実績(2021年3月期)
化学品:8,728百万円(前期比▲10.0%)
機能材料:5,540百万円(前期比▲5.3%)
工業材料:5,497百万円(前期比+5.6%)
その他:354百万円(前期比▲17.0%)
業績
概ね売上高20,000百万円前後、経常利益3,000百万円前後で推移。2021年3月期は、売上高20,478百万円(前期比▲3.8%)、営業利益3,468百万円(前期比+15.0%)、経常利益3,415百万円(前期比+14.6%)であった。営業CFは恒常的にプラス、投資CFは恒常的にマイナス。2022年3月期第1四半期の自己資本比率は66.9%。