4572 カルナバイオサイエンスの業績について考察してみた

4572 カルナバイオサイエンスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

オランダの製薬企業Organon N.V. の日本法人である日本オルガノン株式会社に開設された医薬研究所が、Organon N.V. の経営不振を機に分離・独立する形で2003年4月にカルナバイオサイエンス株式会社設立。キナーゼ(後述)関連の創薬及び創薬支援事業の展開を目的とする。2004年8月に神戸バイオメディカル創造センターに研究室を新規開設し低分子化合物の初期評価のための動物実験開始、2007年10月には創薬研究の加速を目的として神戸健康産業開発センターに化学実験施設開設。2008年3月にJASDAQ NEO上場、2013年7月には東証JASDAQへ市場変更。がん領域ならびに免疫炎症領域を対象とし、キナーゼ阻害薬等の研究開発及び関連する製品・受託サービスの提供を事業とする創薬ベンチャー

株主構成

四半期報告書によると、2021年6月末時点での筆頭株主は、小野薬品工業株式会社で4.05%保有。以下は国内外の証券会社、金融機関の他、代表取締役社長の吉野公一郎氏など個人が続く。外国人株式保有比率は10%以上20%未満

取締役会

取締役は8名(社内4名、社外4名)、うち4名は監査等委員(全員社外)、監査等委員会設置会社である。社内取締役は、日本オルガノン出身者が2人、その他大日本住友製薬株式会社、CSKベンチャーキャピタル株式会社の出身者で構成。社外取締役には、鐘紡株式会社、製薬会社、監査法人の幹部が就任。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の吉野公一郎氏は1949年3月生まれ。東京工業大学大学院修了後、1974年4月に鐘紡株式会社入社。1999年4月には日本オルガノン株式会社入社、医薬研究所長などを経て2003年4月に同社設立、代表取締役社長就任(現任)

報告セグメント

「創薬支援事業」、「創薬事業」の2セグメントで構成される。2020年12月期の売上高1,133百万円の構成比は、創薬支援事業95.3%、創薬事業4.7%であった。また、同期のセグメント利益▲1,057百万円の構成比は、創薬支援事業458百万円、創薬事業▲1,515百万円であった。同期に関しては売上高、セグメント利益の両面で創薬支援事業が稼ぎ頭であったが、前期においては創薬事業が売上高、セグメント利益ともに2/3を占めるなど、構成比は大きく変動する。なお、地域別売上高は日本24.5%、北米58.1%、欧州6.3%、中国10.1%、その他1.0%と北米市場が主力となる。また、売上高に占める割合が40.2%に及ぶ主要顧客が報告されているが、秘密保持条項の存在を理由に社名は非開示。

事業モデル

がん疾患、リウマチなどの免疫・炎症疾患、アルツハイマー病などの神経変性疾患では、生体内で異常なシグナル伝達が起こっていることが知られている。この原因と考えられている分子のひとつに細胞内外の情報伝達をつかさどるキナーゼと呼ばれる酵素があり、このキナーゼが遺伝子変異やストレスなどによって異常な働きになった場合にシグナル伝達機能に支障をきたす。同社はキナーゼに焦点を絞り、画期的な新薬の創製を目指し研究開発を行っている。

第18期 有価証券報告書 p.9

創薬支援事業では、製薬企業やバイオベンチャー、大学等の各種研究機関を顧客として、これらの研究者に対してキナーゼ阻害薬の創薬研究において基盤となる技術を提供し、これら顧客の創薬活動を支援する。特に、創薬における研究プロセスの初期段階であるヒット化合物の抽出、これに続く前臨床試験の手前までの研究段階(新薬候補となる新規化合物の創製及び絞り込み)に特化。また、同事業の収益を自社創薬に係る研究開発資金に充当するなど、創薬事業に融通している。
一方の創薬事業においては、キナーゼ阻害薬等の創薬研究を行い、これによって得られた新薬候補化合物の前臨床試験ならびに臨床試験を行う。また、研究開発成果を製薬企業等へ導出(ライセンスアウト)し、その対価獲得をビジネスモデルとする。この対価には、製薬企業等へ医薬品候補化合物を導出した時点で獲得する契約一時金、その後の研究開発の進展に伴い目標を達成した時点で獲得するマイルストーン収入、さらに新薬上市後の売上の一定割合を獲得するロイヤリティ収入がある。
第18期 有価証券報告書 p.10

競合他社

4974 タカラバイオ(株)(売上高46,086百万円)が、がん治療などを対象とする創薬ならびに創薬支援を事業とする点で競合する。また、キナーゼ阻害薬開発の観点からは4576 (株)デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(売上高355百万円)も競合の可能性あり。

連結の範囲

同社グループは、同社及び連結子会社1社で構成される。連結子会社で同社製品・サービスの販売を事業とする米国CarnaBio USA, Inc. は、売上高の連結売上高に占める割合が10%を超える(22.3%)

強み・弱み

創薬事業に比較してリスクの低い創薬支援事業を併設することによって、ベンチャーでありながら確実な収益源を確保している点は強み。またパイプラインにはGilead Sciences Inc.といった大手が開発バートナーの化合物を有することも強みである。一方、開発対象をキナーゼ阻害薬に特化しているため、これに勝る治療薬が開発された場合には市場を失うリスクがある。

KPI

パイプラインなどが主要なKPIとみなせる。なお、AS-1763について中国で承認申請した旨2022年1月5日に開示されている。

2021年12月期第3四半期決算説明資料 p.2

業績

売上高は500百万円~2,000百万円で推移してきたが、2019年12月期は、米国ギリアド・サイエンシズ社への新規がん免疫療法の創薬プログラムにかかる独占的権利供与の契約一時金20百万ドルを獲得したことにより、3,000百万円を超え3期ぶりに黒字を達成。しかしながら、2020年12月期には通常営業へ戻り、売上高1,133百万円(前期比▲64.7%)、営業利益▲1,057百万円(前期比▲2,034百万円)、経常利益▲1,077百万円(前期比▲2,034百万円)となった。営業CF、投資CFともに概ねマイナスで推移。2021年12月期第3四半期の自己資本比率は82.4%。