4596 窪田製薬ホールディングスの業績について考察してみた

4596 窪田製薬ホールディングスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2023.Q1 2023.03 5 -445 -8900%
FY2023.Q2 2023.06 12 -302 -2516.67%
FY2023.Q3 2023.09 14 -284 -2028.57%
FY2023.Q4 2023.12 9 -363 -4033.33%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q1 2017.03 0 -1,080 0%
FY2017.Q2 2017.06 0 -991 0%
FY2017.Q3 2017.09 0 -851 0%
FY2017.Q4 2017.12 0 -698 0%
FY2018.Q1 2018.03 0 -751 0%
FY2018.Q2 2018.06 0 -737 0%
FY2018.Q3 2018.09 0 -853 0%
FY2018.Q4 2018.12 0 -933 0%
FY2019.Q1 2019.03 0 -750 0%
FY2019.Q2 2019.06 0 -780 0%
FY2019.Q3 2019.09 0 -879 0%
FY2019.Q4 2019.12 0 -879 0%
FY2020.Q1 2020.03 0 -741 0%
FY2020.Q2 2020.06 38 -551 -1450%
FY2020.Q3 2020.09 0 -624 0%
FY2020.Q4 2020.12 0 -568 0%
FY2021.Q1 2021.03 0 -686 0%
FY2021.Q2 2021.06 0 -649 0%
FY2021.Q3 2021.09 0 -573 0%
FY2021.Q4 2021.12 0 -677 0%
FY2022.Q1 2022.03 0 -644 0%
FY2022.Q2 2022.06 0 -528 0%
FY2022.Q3 2022.09 3 -481 -16033.33%
FY2022.Q4 2022.12 5 -385 -7700%
FY2023.Q1 2023.03 5 -445 -8900%
FY2023.Q2 2023.06 12 -302 -2516.67%
FY2023.Q3 2023.09 14 -284 -2028.57%
FY2023.Q4 2023.12 9 -363 -4033.33%

沿革

2002年4月に代表執行役の窪田良氏が変性眼疾患の治療法開発を目的に設立した、米国Acugen Neuropeutics Inc.が同社の起源。網膜疾患治療薬「エミクススタト塩酸塩」の開発を主力事業とする。その後、商号変更及び子会社設立を経て2016年12月に三角合併によって窪田製薬ホールディングス株式会社となり、同月には東証マザーズ上場。引き続きエミクススタト塩酸塩の開発を推進し、現時点では遺伝性の網膜疾患であるスターガルト病に対する第3相臨床試験(Phase 3)を実施中。並行して、在宅・遠隔医療向け眼科医療機器への進出も模索。眼疾患治療に特化した創薬ベンチャーである。

株主構成

有価証券報告書によると、2021年2月末時点での筆頭株主は代表執行役の窪田良氏で22.70%保有。以下は5%未満の保有率で国内の証券会社や個人などが続くが、2016年6月までエミクススタト塩酸塩の共同開発契約を締結していた大塚製薬株式会社の関連会社である株式会社大塚製薬工場が3.36%保有している。外国人株式保有比率は10%以上30%未満

取締役会

取締役は6名(社内3名、社外3名)、うち3名は監査委員(全員社外)、指名委員会等設置会社で監査委員会を設置している。代表権を持たない社内取締役には、日本生命保険相互会社出身者ならびにアルコンラボラトリー社出身者が就任。社外取締役はインターネット関連会社、難治性疾患患者支援団体、コンサルティング会社の関係者で構成。

代表取締役の経歴

取締役代表執行役会長兼社長の窪田良氏は1966年10月生まれ。1991年慶應義塾大学卒業後、虎の門病院、ワシントン大学を経て、2002年4月にAcugen Neuropeutics Inc.設立。2016年12月の現商号への移行とともに現職に就任。

報告セグメント

「医療用医薬品・医療機器事業及びこれらに関連する事業」の単一セグメントであるが、製品別に「エミクススタト塩酸塩」、「遠隔眼科医療網膜モニタリングデバイス」、「ウェアラブル近視デバイス」に大別される。2020年12月期の事業収益38百万円の全ては、遠隔眼科医療網膜モニタリングデバイスに関して米国TRISHより受領した開発受託金であった。

2020年12月期通期決算説明会資料 p.5

事業モデル

眼科領域に特化した開発を事業とする。創薬と補助用デバイス開発に分類でき、前者は主力のエミクススタト塩酸塩に加え、遺伝子治療に用いるヒトロドプシンも前臨床の段階にある。後者は治療補助及び視力矯正を目的とした簡易機器を対象とし、創薬に付随する長期間の臨床試験を要しない利点がある。
エミクススタト塩酸塩は同社が15年間にわたって開発を推進してきた主力製品であり、現在進行中のPhase 3の結果如何が同社の命運を左右しよう。主要ターゲットは遺伝性の網膜疾患であるスターガルト病であり、エミクススタト塩酸塩は同疾患の原因となる有害物質の蓄積を抑制する働きを持つ。現在のところ、症状の進行を抑制する治療法は認可に至っていないため、有効な治療薬の実用化が待たれている。また、同薬は服用薬であるため、投与が容易なことも利点である。なお、2016年5月に解消となった大塚製薬との共同開発及び販売契約は地図状萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性が対象で、P2b/3の試験結果を受けた解消であった。
補助デバイスのひとつ遠隔眼科医療用網膜モニタリングデバイス「PBOS」は、患者が自宅で網膜の状態を測定する検査デバイスである。網膜の状態変化など病状の経過を、インターネットを介して医師が遠隔で診断するシステムで、迅速性と患者の負担減を両立する。また、ウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」は、網膜に人工的な光刺激を与えて近視の進行の抑制、治療を目指すユニークな製品である。

2020年12月期通期決算説明会資料 p.18

競合他社

主要な開発対象がスターガルト病治療薬である点は他に類を見ないが、眼疾患全般に範囲を拡大すると、緑内障の治療薬などを開発する4576 (株)デ・ウエスタン・セラピテクス研究所が競合し得る。売上高355百万円(2020年12月期)。

連結の範囲

同社グループは、同社及び連結子会社2社で構成される。連結子会社のうちクボタビジョン・インク(米国)は特定子会社であり、同社グループの研究開発拠点である。

強み・弱み

スターガルト病治療薬を主力に据えているため、同業他社との直接的な競合を回避できる。希少性の高い疾患で米国での推計患者数は約4万人とFDAよりオーファンドラッグ(稀少疾病用医薬品)指定を受けており、確立された治療法のないアンメット領域の疾患である。同疾患を対象とする治療法の市場は2027年には1,600億円規模に達すると予想され、エミクススタト塩酸塩による治療が成功した暁には大きな収益を期待できる。一方、それ以外の開発品目に関しては具体的な見通しが立たないので、エミクススタト塩酸塩のPhase 3が芳しくない場合には将来性が危ぶまれる

KPI

製品上市前のため、パイプライン進捗、臨床評価などが主要KPIと見なせる。
・エミクススタト塩酸塩の対スターガルト病試験:Phase 3の24ヶ月試験2018年11月開始
・上記試験に対する臨床評価:開示なし(2021年5月時点)

業績

事業収益は減少傾向にあり、特に大塚製薬株式会社との共同開発契約終了後の、2016年12月期以降の落ち込みが著しい。2020年12月期は、事業収益38百万円(前期比+38百万円)、営業利益▲2,484百万円(前期比+804百万円)、税引前利益▲2,437百万円(前期比+668百万円)。営業CFは恒常的にマイナス、投資CFは恒常的にプラス。直近決算期の自己親会社所有者帰属持分比率は89.6%。

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