5707 東邦亜鉛の業績について考察してみた

5707 東邦亜鉛の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1937年2月に日本亜鉛製錬株式会社を設立し、6月に電気亜鉛の製錬を開始。1941年9月に東邦亜鉛株式会社に商号変更。1949年5月に東証・大証に上場、現在は東証一部。1955年5月に電気鉛の製錬を開始。1967年3月に電解鉄の製錬を開始。本社は東京都千代田区。大手亜鉛・鉄の精錬メーカーであり、鉛の国内生産トップシェアを誇る

株主構成

有価証券報告書よると2021年3月末時点の大株主は、日本マスタートラスト信託銀行株式会社の信託口が20.2%保有 、次いで株式会社日本カストディ銀行の信託口が7.1%、以降は保有割合5%未満で三菱商事RtMジャパン株式会社、三菱UFJ信託銀行株式会社、株式会社日本カストディ銀行の証券投資信託口、JPモルガンの顧客代理口座 と続く。その他には国内外の金融機関や取引先が並ぶ。外国人株式保有比率は10%以上20%未満

取締役会

取締役は6名(社内3名、社外3名)、うち監査等委員3名 (社内1名、社外2名)、監査等委員会設置会社である。取締役専務執行役員の山岸正明氏は三菱UFJ信託銀行株式会社を経て、2011年6月に当社執行役員に就任。2014年6月に取締役兼執行役員を経て、2021年3月に現職に就任した。その他の取締役はプロパーとみられる。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の丸崎公康氏は1957年10月生まれ。福岡大学法学部を卒業後、1980年4月に同社入社。亜鉛・鉛事業本部に長年に渡り従事する。2014年6月に取締役兼執行役員、2016年6月に取締役兼常務執行役員を経て、2017年6月に現職に就任した。

報告セグメント

「製錬」、「資源」、「電子部材」、「環境・リサイクル」の4セグメントに大別される。報告セグメントに含まれない事業として、防音建材や土木・建築・プラントエンジニアリング、運輸、環境分析等が含まれるその他事業がある。2022年3月期第1四半期の売上高28,556百万円の構成比は、製錬が23,863百万円で83.6%、資源が1,154百万円で4.0%、電子部材が1,305百万円4.6%、環境・リサイクルが1,125百万円で3.9%、その他が1,107百万円で3.9%であった。
2022年3月期第1四半期はセグメント利益の7割以上を製錬が創出する。直近2期の利益率は環境・リサイクルが10%台後半から20%台前半、電子部材が1桁後半、製錬がマイナスから1桁台、資源がマイナスを推移する。

事業モデル

製錬事業では、亜鉛製品と鉛製品、電気銀の製錬を行う。亜鉛製品では国内シェア約20%を誇り、鉱山開発から製錬まで一貫して手掛ける。群馬県の安中製錬所を主力に、自動車や家電製品、各種構造物向けに幅広く亜鉛製品を供給する。鉛製品は、自動車用バッテリーや電線、はんだ向けが中心。国内の鉛生産量トップを誇り、広島県の契島製錬所で国内自動車用バッテリー向け鉛の40%以上を生産する。
資源事業では、亜鉛・鉛鉱山会社である豪州連結子会社CBH社を中心に、亜鉛や鉛鉱石の探査から生産・販売まで行う。製錬事業における原料の安定供給を担い、その他にはアジア各地へ輸出販売する。
電子部材事業では、車載用部品や産業機器用部品、OA機器用部品向けに電子部品をカスタムメイド形式で開発から販売まで一貫して対応する。また航空機や自動車の重要部材や、研究材料、特殊合金向けに高品質な電解鉄の生産を行う。電解鉄では世界トップシェアを誇る。電子部品は中国子会社等の海外の生産拠点に加工を委託し、同社で販売する。電解鉄は同社の藤岡事業所が中心となって製造・販売を行い、一部機器部品については中国子会社を通して、現地で販売を行う。
環境・リサイクル事業では、電炉ダストから酸化亜鉛を回収・製造(世界唯一の技術)し、自動車タイヤ用ゴム向けに販売する。福島県の小名浜製錬所が中心となり、その他に酸化鉄や硫酸等の各種産業廃棄物のリサイクルを行う。
その他事業では、防音建材の製造・販売や、土木・建築・プラントエンジニアリング事業、物流・環境分析等のサービスを展開する。防音建材は同社が手掛け、土木・建築・プラントエンジニアリング事業は連結子会社1社、物流・環境分析等のサービスは連結子会社4社を通して行う。
海外売上高比率は12.5%で、地域ごとの売上高ではアジアが8.4%、オセアニアが4.1%を占める。(2021年3月期)
今後は製錬事業の国内需要縮小に見合った製錬工程のコンパクト化やコスト競争力の強化を行い、事業基盤の強化を狙う。また金属市況に左右されづらい川下事業の強化を急ぐ。電子部品事業においては、電動車や産業機器用分野等の成長分野での売上拡大を図る。

競合他社

大手非鉄金属メーカーである5706三井金属 (2021年3月期売上高522,936百万円)、非鉄金属と電子部品の製造を行う5713住友金属鉱山(同926,122百万円)、製錬事業や環境・リサイクル事業、電子材料事業等を展開する5714DOWAホールディングス(同588,003百万円)が競合として挙げられる。

連結の範囲

連結子会社13社と非連結子会社6社、持分法適用関連会社1社、持分法を適用していない関連会社4社を持つ。主要な連結子会社には、資源事業を担う豪州のCBH社やその他事業を担う株式会社ティーディーイー、安中運輸株式会社、契島運輸株式会社、東邦キャリア株式会社、株式会社中国環境分析センターが挙げられる。

強み・弱み

強みとして鉛や電解鉄におけるシェアの高さと、安定供給体制が整備されている点が挙げられる。同社は鉛では国内生産トップシェア、電解鉄では世界トップシェアを誇る。鉛や亜鉛の供給では、鉱山を管理する豪州CBH社を完全子会社化し、川上から川下まで自社で安定的な供給体制を整える。またトップグレードの高純度電解鉄の開発に成功し、耐衝撃・耐熱・耐食等に富んだ高品質な応用製品を製造する。
懸念点としては、金属価格の変動リスクや為替変動リスクが挙げられる。市況の悪化から営業損失・減損損失を計上したことを踏まえ、在庫管理の厳格化を中期経営計画に掲げる

KPI

KPIには①製錬セグメントにおける主要製品市況・ 生産量と②セグメント別営業利益が挙げられる
①製錬セグメントにおける主要製品市況・生産量(2021年3月期)
②セグメント別営業利益(同)

2021年3月期 決算説明会資料
2021年3月期 決算説明会資料

業績

売上高は2018年3月期を二ピークに22期連続減収で3割近く減少したが、2021年3月期は貴金属価格の高騰や増販により、新型コロナ流行による需要減少や豪州鉱山の休山影響を吸収して、前期比+6.0%の増収となった。経常利益は金属相場の下落や減販が影響が大きく、ここ10年程度の10~50億円の利益水準から2017年3月期・2018年3月期の2期は125億円・131億円と水準を切り上げたが、2019年3月期が9億円、2020年3月期は▲144億円、2021年3月期は製錬事業での在庫評価損益の改善や資源事業での赤字縮小が貢献し、54億円の黒字に回復した。フリーCFは鉱山開発にかかる投資を主因に2019年3月期と2020年3月期がマイナスだったが、2021年3月期はプラスに転換。自己資本比率は当期損失計上、有利子負債の増加により2020年3月期に30%台に低下