4461 第一工業製薬の業績について考察してみた

4461 第一工業製薬の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2023.Q4 2023.03 15,983 198 1.24%
FY2024.Q1 2023.06 13,884 -572 -4.12%
FY2024.Q2 2023.09 15,316 123 0.8%
FY2024.Q3 2023.12 16,434 978 5.95%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q4 2017.03 13,200 1,113 8.43%
FY2018.Q1 2017.06 13,695 991 7.24%
FY2018.Q2 2017.09 14,376 1,366 9.5%
FY2018.Q3 2017.12 15,028 1,577 10.49%
FY2018.Q4 2018.03 13,856 1,119 8.08%
FY2019.Q1 2018.06 14,655 1,036 7.07%
FY2019.Q2 2018.09 14,783 1,027 6.95%
FY2019.Q3 2018.12 15,314 1,278 8.35%
FY2019.Q4 2019.03 14,822 1,000 6.75%
FY2020.Q1 2019.06 15,065 559 3.71%
FY2020.Q2 2019.09 15,334 1,031 6.72%
FY2020.Q3 2019.12 15,746 1,246 7.91%
FY2020.Q4 2020.03 15,311 1,318 8.61%
FY2021.Q1 2020.06 13,632 707 5.19%
FY2021.Q2 2020.09 14,380 1,070 7.44%
FY2021.Q3 2020.12 15,368 1,203 7.83%
FY2021.Q4 2021.03 15,760 1,505 9.55%
FY2022.Q1 2021.06 14,413 1,094 7.59%
FY2022.Q2 2021.09 15,974 1,353 8.47%
FY2022.Q3 2021.12 16,310 1,278 7.84%
FY2022.Q4 2022.03 15,975 901 5.64%
FY2023.Q1 2022.06 15,441 291 1.88%
FY2023.Q2 2022.09 17,324 426 2.46%
FY2023.Q3 2022.12 16,333 271 1.66%
FY2023.Q4 2023.03 15,983 198 1.24%
FY2024.Q1 2023.06 13,884 -572 -4.12%
FY2024.Q2 2023.09 15,316 123 0.8%
FY2024.Q3 2023.12 16,434 978 5.95%

沿革

1909年4月に匿名組合負野薫玉堂解舒液部を設立し、工業用薬剤の製造を開始。繊維工業向けに精練剤や油剤を販売。1914年12月に合名会社負野工業製薬所に改組。1918年8月に第一工業製薬株式会社を設立。1949年5月に東証一部に上場。本社は京都府。界面活性剤の老舗メーカーであり、工業用薬剤で国内ト ップシェアを誇る

株主構成

2021年3月期有価証券報告書よると2021年3月末時点の 筆頭株主は株式会社日本カストディ銀行の信託口で13.6%、次いで日本マスタートラスト信託銀行株式会社の信託口が7.9%、第一生命保険株式会社が6.0%、BNP PARIBAS SECURITIES SERVICESが5.0%、以降は保有割合5%未満で株式会社みずほ銀行、8369京都銀行、朝日生命保険相互会社、DKS取引先持株会と続く。その他には従業員持株会や国外の金融機関が並ぶ。外国人株式保有比率は10%以上20%未満

取締役会

取締役は8名(社内5名、社外3名)、監査役5名 (社内2名、社外3名)、監査役会設置会社である。取締役の河村一二氏は株式会社みずほ銀行や株式会社みずほコーポレート銀行を経て、2016年4月に同社に入社。2018年6月に現職に就任した。その他2名の取締役はプロパーとみられ、それぞれ研究部門、営業部門、管理部門を統括する。

代表取締役の経歴

代表取締役会長兼社長の坂本隆司氏は1947年8月生まれ。京都大学経済学部を卒業。1970年4月に現在の株式会社みずほ銀行に入行後、富士投信投資顧問株式会社の常務取締役を経て、2001年6月に同社に入社、同時に取締役に就任。2004年6月に常務取締役、2007年6月に専務取締役、2011年6月に代表取締役副社長を経て、2013年6月に代表取締役会長に就任。2015年6月より社長を兼任する。
代表取締役専務取締役の浦山勇氏は1956年8月生まれ。1975年4月に同社に入社。2009年6月に取締役、2016年6月に常務取締役を経て、2020年4月に現職に就任した。

報告セグメント

「界面活性剤」、「アメニティ材料」、「ウレタン材料」、「機能材料」、「電子デバイス」、「ライフサイエンス」の6セグメントに大別される。2022年3月期第1四半期の売上高は14,413百万円で、界面活性剤が4,395百万円で30.5%、アメニティ材料が1,914百万円で13.3%、ウレタン材料が1,815百万円で12.6%、機能材料が4,549百万円で31.6%、電子デバイス材料が1,635百万円で11.3%、ライフサイエンスが103百万円で0.7%を占める。
セグメント利益の6割以上を機能材料が創出する。利益率は界面活性剤が1桁後半から10%台前半、アメニティ材料が1桁前半、機能材料が10%台前半、電子デバイス材料が1桁後半を推移し、ウレタン材料とライフサイエンスはマイナスが続く

2021年3月期 決算説明会資料

事業モデル

工業用薬剤製造で国内トップシェアを誇る、総合化学メーカーである。
創業当時から注力してきた界面活性剤事業では、石けんや洗剤を始めとした各種界面活性剤を製造し、ゴムやIT、電子、塗料分野に幅広く供給する。乳化や浸透、表面改質等の機能を加え、様々な用途に対応できる界面活性剤を開発する。
アメニティ材料事業では、セルロースナノファイバーや産業用脱臭剤等といった生活環境製品に使用される材料や周辺技術を手掛ける。食品や医薬品、トイレタリー、セラミックス等の幅広い産業分野に提供する。
ウレタン材料では、塗料や接着剤、電気絶縁材料等のウレタン原料や工業用素材を取り扱う。ウレタン素材の弾力性を活かして、工業用クッションや断熱材等のインフラ整備用製品を開発。IT・電子、土木・建設分野に提供する。
機能材料事業では、PCやスマートフォン、家電等に使用されるゴムや、プラスチックに使用される帯電防止剤や酸化防止剤、樹脂等を取り扱う。主にITや電子材料分野に供給する。
電子デバイス材料事業では、イオン導電性高分子を基に自動車やスマートフォン、太陽電池に使用される各種材料を取り扱う。各分野で分社化を進め、リチウムイオン電池用材料やセラミックス材料、導電性ペースト等を開発する。リチウムイオン電池では製造から販売までを一貫して行う。
ライフサイエンス事業は2018年に本格参入した新規事業であり、健康補助食品の製造・販売や、天然物から抽出・高濃縮化技術を提供する。
生産拠点は主力の四日市工場と大潟工場、滋賀工場の3拠点を有し、同社の他に国内外の製造・販売会社に製品の製造から販売までを一部委託している。
海外売上高比率は17.1%で、地域ごとで見るとアジアが14.7%、北米・欧州等のその他地域が2.4%を占める。(2021年3月期)
2020年~2025年中期経営計画では、電子・情報、環境・エネルギー、ライフサイエンスの3分野に集中投資を行い、不採算事業からは2022年4月までの撤退を目指す。

競合他社

界面活性剤に強い化学メーカー4409東邦化学工業 (2021年3月期売上高40,649百万円)、繊維工業用の界面活性剤が主力の4463日華化学(2020年12月期同41,179百万円)、界面活性剤と高吸水性樹脂の2本柱の4471三洋化成工業(2021年3月期144,757百万円)が競合として挙げられる。

連結の範囲

連結子会社11社と非連結子会社2社、持分法適用関連会社2社を持つ。連結子会社の四日市合成株式会社は界面活性剤事業やウレタン材料事業、機能材料事業を担っており、連結売上高に占める売上高の割合が10%を超える。

強み・弱み

強みとして老舗化学メーカーとしてウレタン材料や機能材料等といった幅広い科学分野に事業展開をしている点が挙げられる。 顧客の製品ニーズに応じて、各事業での知見を組み合わせて最適な提案を実現少量生産のニッチな製品にも対応ができ、幅広い産業分野に顧客網を広げる。また特定業種に依存することなく、事業を分散している点も強みである。
懸念点としては、地政学リスクや、原油・ナフサ等原料価格の高騰が挙げられる。

KPI

KPIには①セグメント別構成比と②設備投資額、③研究開発費が挙げられる
①セグメント別構成比(2021年3月期)
②設備投資額:4,617百万円(同)
③研究開発費:2,821百万円(同)

2021年3月期 決算説明会資料

業績

売上高は2017年3月期から2020年3月期にかけて、緩やかな増収を継続し約1.2倍へ成長した 。2021年3月期はIT・電子分野で機能性ウレタンや光硬化樹脂用材料の売上高が増加したものの、新型コロナ流行による自動車関連分野での需要減少が影響して、前期比▲3.8%の減収となった。経常利益は研究開発費がかさんだことやのれんの償却等により減益 が続いていたたが 、2021年3月期は、電子デバイス材料事業における増収や価格調整、移動制限による営業経費の削減、金融収支の改善等が貢献して、2期ぶりの増益で前期比+22.4% となった。営業CFは安定しているものの、フリーCFは固定資産の取得等、投資活動が活発な期(直近は2019年3月期と2020年3月期)はマイナス となる。自己資本比率は30%台後半から40%台前半を推移する

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