4112 保土谷化学工業の業績について考察してみた

4112 保土谷化学工業の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2024.Q3 2023.12 11,191 1,167 10.43%
FY2024.Q4 2024.03 12,619 1,539 12.2%
FY2025.Q1 2024.06 14,489 2,842 19.61%
FY2025.Q2 2024.09 12,118 1,512 12.48%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q4 2017.03 11,064 1,232 11.14%
FY2018.Q1 2017.06 9,720 1,303 13.41%
FY2018.Q2 2017.09 9,218 744 8.07%
FY2018.Q3 2017.12 9,216 945 10.25%
FY2018.Q4 2018.03 10,539 911 8.64%
FY2019.Q1 2018.06 8,553 615 7.19%
FY2019.Q2 2018.09 8,660 514 5.94%
FY2019.Q3 2018.12 9,609 1,002 10.43%
FY2019.Q4 2019.03 10,726 897 8.36%
FY2020.Q1 2019.06 8,497 472 5.55%
FY2020.Q2 2019.09 9,052 339 3.75%
FY2020.Q3 2019.12 9,869 945 9.58%
FY2020.Q4 2020.03 10,353 1,146 11.07%
FY2021.Q1 2020.06 10,353 2,260 21.83%
FY2021.Q2 2020.09 9,067 532 5.87%
FY2021.Q3 2020.12 10,206 1,469 14.39%
FY2021.Q4 2021.03 11,573 1,183 10.22%
FY2022.Q1 2021.06 10,173 1,571 15.44%
FY2022.Q2 2021.09 10,156 1,790 17.63%
FY2022.Q3 2021.12 10,778 1,621 15.04%
FY2022.Q4 2022.03 10,772 1,439 13.36%
FY2023.Q1 2022.06 9,965 1,001 10.05%
FY2023.Q2 2022.09 10,614 962 9.06%
FY2023.Q3 2022.12 11,245 1,169 10.4%
FY2023.Q4 2023.03 11,500 569 4.95%
FY2024.Q1 2023.06 10,041 337 3.36%
FY2024.Q2 2023.09 10,410 908 8.72%
FY2024.Q3 2023.12 11,191 1,167 10.43%
FY2024.Q4 2024.03 12,619 1,539 12.2%
FY2025.Q1 2024.06 14,489 2,842 19.61%
FY2025.Q2 2024.09 12,118 1,512 12.48%

沿革

1915年3月に苛性ソーダの製造を目的として、横浜市保土ヶ谷区にて設立された「程谷曹達工場」が起源である(法人としては1916年12月設立)。1939年12月に現社名である「保土谷化学工業」と改称、1949年5月には東証、大証、名証へ上場。戦後は1949年8月に大阪営業所(現大阪支店)、1953年9月に名古屋営業所を開設するなど、国内の事業基盤の拡充だけではなく、1967年4月にはニューヨークに駐在員事務所を開設するなど、海外展開も加速させた。2016年11月には創業100周年を迎えた。現在は、苛性ソーダなどの有機工業薬品の製造・販売、関連する物流、研究開発などを主な事業とする

株主構成

有価証券報告書によると、2021年3月末時点の筆頭株主は、同業である東ソー株式会社で発行済株式の8.84%を保有する。日本マスタートラスト信託銀行(7.93%)、日本カストディ銀行(6.81%)と続く。以下は5%未満でみずほ銀行(3.77%)などの取引金融機関や生損保が中心。なお、外国人株式保有比率は10%以上20%未満である

取締役会

取締役は7名(社内3名、社外4名)、うち4名が監査等委員(社内1名、社外3名)で監査等委員会設置会社である。社内取締役4名のうち、代表取締役を含めた3名はプロパーとみられる。社外取締役は、通商産業省出身の加藤周二氏、農林水産省出身の坂井眞樹氏、農林中央金庫出身の山本伸浩氏である。

代表取締役の経歴

取締役社長である松本祐人氏は1960年11月生まれ。1983年に東北大学工学部を卒業後、同社に入社した。2004年6月にHODOGAYA CHEMICAL(U.S.A.), inc.取締役社長、2014年4月に執行役員事業推進部長、2015年4月に取締役兼常務執行役員を経て、2016年11月に取締役社長兼社長執行役員(現任)に就任した。

報告セグメント

報告セグメントは、製品・サービスの類似性を基準として区分されており、「機能性色素」(有機EL材料など)・「機能性樹脂」(建築材料など)・「基礎化学品」(工業薬品)・「アグロサイエンス」(農薬)・「物流関連」の5つに分けられる。2021年度第1四半期の実績で見ると、各報告セグメントの売上高構成比は、「機能性色素」が39.9%、「機能性樹脂」が26.2%、「基礎化学品」が16.9%、「アグロサイエンス」が11.9%、「物流関連」が4.7%を占める。調整前のセグメント利益の7割以上を機能性色素が占めており、機能性色素、機能性樹脂が事業の中心である。なお、セグメント毎の売上高の状況は以下の通り。

2022年3月期第1四半期決算説明資料

事業モデル

「化学技術の絶えざる革新を通じ、お客様が期待し満足する高品質の製品・サービスを世界に提供し、環境調和型の生活文化の創造に貢献する」を経営理念に掲げ、研究開発から生産・販売まで行う。
機能性色素セグメントは、有機EL材料、イメージング材料、色素材料、食品添加物(食用色素)の4つの事業で構成される。スマートフォンのディスプレイや、複写機やプリンター等のOA機器、高品質な染料製品等に使用する色素を製造販売し、食品用色素のパイオニアとしても知られる。同社および連結子会社のSFC CO.,LTD.及びHODOGYA CHEMICAL KOREA CO.,LTD.が製造・販売し、国内外の連結子会社を通じて販売する。
機能性樹脂セグメントは、樹脂材料、建築材料、特殊化学品の3つの事業で構成される。衣類、自動車部材、レジャー用品などに使用されるポリウレタンに、柔軟性や弾性を持たせるPTGが樹脂材料の中心。建築材料はウレタン塗膜防水材が主軸で、オフィスビルや学校の屋上、大型店舗の立体駐車場の屋上防水等に利用される。医薬品や化粧品分野などで使用される中間材料や添加剤を特殊化学品で扱う。同社及び連結子会社の保土谷建材株式会社が製造・販売及び工事を行い、国内外の連結子会社を通じた販売も行う。
基礎化学品セグメントは、50年以上にわたり過酸化水素及びその誘導品を開発、製造・販売しており、紙パルプの漂白や工業薬品、動物薬などに用いられる。アグロサイエンスセグメントでは自社原体を中心に製品展開し、除草剤で業界トップクラスのシェアを誇る他、土地改良のための酸素供給材の市場開拓も行う。物流関連セグメントは、横浜・郡山・南陽の3ヵ所に大規模設備を保有し、危険物や化学品から重量物、機械、プラントまで、貨物に適した保管サービスや、総合物流サービスその他事業では、ファインケミカル分野の研究受託を提供する。
特に、今年度からスタートしている中期経営計画では、「スペシャリティ製品を軸としたオリジナリティにあふれるポートフォリオと環境に優しいモノづくりで、持続可能な社会の実現に貢献する企業」を目指す企業像とし、基盤事業(主に機能性色素、機能性樹脂)と戦略事業をわけ、安定的な収益を確保しつつも、機動的に新製品を立ち上げ、市場のニーズに適切に応える体制づくりを中長期の経営戦略としている。

競合他社

化学品メーカーの多くはビジネス領域が多岐にわたるため、完全に競合する先は難しいが原材料に化学反応を施した化学原料の製造技術を有する競合として、住友化学の子会社で、精密機器や自動車に用いられる機能性材料に強みを持つ4113田岡化学工業株式会社(2021年3月期売上高315億円)、印刷用インキやPPSコンパウンドなどで世界トップシェアを持つ4631DIC株式会社(2020年12月期売上高7,012億円)がある。また、紙おむつなどに使われる高吸水性樹脂などを手がける4114株式会社日本触媒(2021年3月期売上高2,731億円)などが挙げられる。

連結の範囲

2021年3月末時点において、同社グループは同社のほか、連結子会社11社、非連結子会社3社、関連会社3社から構成される。桂産業(議決権保有割合100%)など連結子会社の半数は国内会社であるが、HODOGAYA CHEMICAL(U.S.A)など米国をはじめ、韓国(2社)、中国(1社)、欧州(1社)など、世界の主要地域に拠点を展開している。

強み・弱み

染料や樹脂分野で高い技術力を有し、食用品色素や除草剤などのニッチな市場で高いシェアを有する製品を持つことや、安定した事業基盤を有する点が強み。また、様々な製品に使用される化学材料を製造していることから、多くの異なる業種の顧客との取引があり、景気変動などのリスクが分散されている。一方で、化学製品は技術進歩が著しく、新商品の開発、次世代のニーズに応える製品開発による市場開拓が持続的成長には欠かせないことから、中計に掲げるオリジナリティを有する製品群・ポートフォリオを構築できるかどうかは課題となる。また、安定した財務基盤を有すものの、自己資本利益率が6.7%(2018年3月期)から低下傾向にあり、2021年3月期では3.2%となっており収益性の改善が課題

KPI

2021年度より開始した新中期経営計画「SPEED 25/30」では、具体的な経営指標(KPI)は明示されていないが、新製品立ち上げによるポートフォリオの構築、DXによる競争力強化など掲げており、①「研究開発費」が参考になるとみられる。また、変化の中で、同社の安定した財務基盤が損なわれていないかを確認する指標として②「自己資本比率」、③「D/Eレシオ」を挙げる。
「研究開発費」 3,384百万円 (2021年3月期)
「自己資本比率」 61.8% (2022年3月期第1四半期)
「D/Eレシオ」 0.19倍 (2022年3月期第1四半期)

同社ホームページ(「SPEED 25/30」概要)より

業績

2021年3月までの直近5期は、売上高がは34,739百万円(2017年3月期)から、41,199百万円へ緩やかに増加した。特に、2021年3月期については、機能性色素セグメントで有機EL材料の用途として開発していた PCR診断キット用材料が、複数のメーカーに採用され前期比+9.0%の高い伸びとなった。恒常的に営業CFはプラスで投資CF
はマイナス、FCFはプラスを維持している。自己資本比率は70%前後を推移。

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