5981 東京製綱の業績について考察してみた

5981 東京製綱の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1887年に東京製綱会社を設立し、日本で初めてマニラ麻ロープの製造を開始。1893年に東京製綱株式会社へ商号変更。1896年に東京株式取引所に上場。1897年に日本で初めてのワイヤロープの製造を開始。1949年5月に東証一部に上場。本社は東京都中央区。1981年に米国へ子会社を設立するも2003年に清算済、2004年から中国、ベトナム、ロシア、カザフスタン、米国(再進出)へ展開。国内最大手のワイヤロープメーカー

株主構成

2021年3月期有価証券報告書よると2021年3月末時点の大株主は、筆頭株主が5401日本製鉄で19.9%、次いで株式会社日本カストディ銀行が信託口で7.3%、以降は保有割合5%未満で日本マスタートラスト信託銀行株式会社、東京ロープ共栄会、7279ハイレックスコーポレーション、コリアセキュリティーズデポジトリーシンハンインベストメント、5101横浜ゴムと続く。そのほかには海外金融機関や従業員持株会が並ぶ。外国人株式保有比率は10%以上20%未満。尚、筆頭株主の日本製鉄は2021年1-3月にかけて実施した公開買付(同社は反対表明)により持ち分が10%程度増加した後の保有比率である。

取締役会

取締役は10名(社内4名、社外6名)、監査役4名 (社内2名、社外2名)、補欠監査役2名(全員社外)、監査役会設置会社である。社内取締役はプロパーが中心で、事業本部を始め、経営企画部、管理本部等の様々な部署での経験を持つ取締役が揃う。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の原田英幸氏は1963年12月生まれ。東京大学工学部を卒業後、1987年4月に同社に入社。鋼索鋼線事業部に従事し、2009年4月にはベトナム子会社の社長に就任。2020年4月に連結子会社である長崎機器株式会社の代表取締役社長を経て、2021年4月に現職に就任した。

報告セグメント

「鋼索鋼線関連」、「スチールコード関連」、「開発製品関連」、「産業機械関連」、「エネルギー不動産関連」の5セグメントに大別される。2021年3月期の売上高は59,183百万円で、鋼索鋼線関連が25,698百万円で43.4%、スチールコード関連が7,458百万円で12.6%、開発製品関連が17,613百万円で29.8%、産業機械関連が3,197百万円で5.4%、エネルギー不動産関連が5,214百万円で8.8%を占める。
セグメント利益のうち、黒字の事業の合算額の6割以上を鋼索鋼線関連で創出しており、赤字で推移するスチールコード関連と開発製品関連での損失を鋼索鋼線事業の利益で賄いきれない期もある。エネルギー不動産関連の利益率が最も高く、1桁台後半から10%台を推移し、鋼索鋼線関連が1桁台中盤、産業機械関連が1桁台前半を推移する。

事業モデル

鋼索鋼線関連ではクレーンやエレベーター、棟梁等に使用されるワイヤロープや、光ケーブル用のワイヤなどの製造・販売を行う。ワイヤロープ国内シェアは40%であり、トップシェアを誇る。またエレベーター用ロープでは国内60%のシェアを占める。同社の国内製造工場2か所に加えて連結子会社1社と関連会社1社で製造から販売までを担い、一部販売を連結子会社1社が行う。
スチールコード関連では、タイヤやエスカレーターのハンドレールといったゴム製品の補強材などに使用されるスチールコードを製造・販売する。スチールタイヤコードでは国内独立系メーカーにおけるシェアで50%を占める。連結子会社の東鋼スチールコード株式会社と中国子会社1社で製造し、同社で販売する。
開発製品関連では棟梁用ケーブル等の道路安全関連製品や土木用・送電線用炭素繊維複合材ケーブル等の製造・販売を行う他、棟梁をはじめとする土木建築工事の設計・施工を行う。道路安全関連製品等は同社と連結子会社3社が製造から販売までを行い、炭素繊維複合材ケーブルは連結子会社の東京製綱インターナショナル株式会社が製造・販売を担う。土木建築工事は連結子会社のトーコーテクノ株式会社が行う。
産業機械関連では工業用自動計量器や自動包装機等の産業機械や粉末冶金製品を手掛ける。産業機械は連結子会社の長崎機器株式会社、粉末冶金製品は連結子会社の日本特殊合金株式会社が製造から販売までを担う。
エネルギー不動産関連では、石油製品の販売から太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業が含まれる。石油製品は連結子会社の東綱商事で販売し、売電事業と不動産賃貸事業は同社で行う。
海外売上高比率は11.3%で、地域別では中国が3.9%、その他地域が7.4%を占める。(2021年3月期)
国内林業市場は、国産材の供給量が直近10年間で1.5倍以上の増加がみられ、林業用繊維ロープの販売量増加に追い風となる。また道路安全関連製品である道路安全施設の売上は直近3年で年率3.3%の成長傾向であり、国土強靭化関連予算や災害復旧予算による安定成長が見込める分野である。

競合他社

めっき鉄線をはじめとする線材加工大手メーカーの5658日亜鋼業(2021年3月期売上高27,816百万円)、鋼索鋼線加工メーカーの5660神鋼鋼線工業(同26,827百万円)が競合として挙げられる。

連結の範囲

連結子会社19社と持分法適用関連会社4社、持分法を適用しない非連結子会社及び関連会社10社を持つ。主要な連結子会社には鋼索鋼線関連を担う東京製綱繊維ロープ株式会社とスチールコード関連を担う東鋼スチールコード株式会社、開発製品関連を担う東京製綱インターナショナル株式会社とトーコーテクノ株式会社、産業機械関連を担う長崎機器株式会社と日本特殊合金株式会社、エネルギー不動産関連を担う東鋼商事株式会社が挙げられる。

強み・弱み

強みとして複数商品におけるシェアの高さが挙げられる。同社の主力事業であるワイヤロープでは国内約40%のシェアを誇る。エレベーター向けではシェア60%を超え、建設業や水産業、鉄鋼業といった幅広い業界に顧客を持つ。また、スチールタイヤコードでは国内約30%のシェアを有し、独立系メーカーに限ると50%を超えてトップシェアを誇る。その他、繊維ロープにおいてもレンジャーロープや水産用ロープにおいて国内トップシェアを占める。エレベーター用ワイヤロープは世界各地の高層ビルに採用される等、積極的に海外進出を図る。炭素繊維複合材ケーブルでは北米最大級の案件であるハンプトンブリッジトンネル拡張事業で採用。北米子会社における売上拡大を狙う。

KPI

KPIには①設備投資額、②北米子会社売上額が挙げられる
①設備投資額(2021年3月期)
②北米子会社売上額(同)

2021年3月期 決算説明会資料
2021年3月期 決算説明会資料

業績

過去10年を見ると、期によって変動があり売上高は600億円から700億円台で推移していたが2021年3月期は591億円と600億円を割り込んだ。営業利益は赤字だったのは2013年3月期のみで、2014年3月期以降5期連続で30億円超が続いたが2019年3月期以後10億円を割り込んでいる。2021年3月期は、新型コロナ流行に伴う国内の鋼索需要や自動車業界における鋼線需要の低迷を受け、連結売上高は前期比+6.2%の微増、営業利益は環境対策引当金の費用計上に伴い、前期比▲62.7%に減少。利益面はコアワイヤ等の高収益製品の減収や設備投資費の増加、原料価格の値上がりなどの影響が大きい。フリーCFは中国スチールコード事業拠点の売却により2021年3月期に2期ぶりのプラス転換。自己資本比率は20%台後半を推移する