3441 山王の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1958年8月に有限会社山王鍍金工業所を設立し、弱電機部品の銀めっき加工・販売を開始。1959年3月に電気部品の金めっきや多層めっきを始めとする量産操業を開始。1969年4月に山王鍍金株式会社に商号変更・改組。1988年4月に株式会社山王に商号変更。2007年10月に東証JASDAQへ上場。本社は神奈川県横浜市。電子機器用コネクタの貴金属表面処理加工が柱

株主構成

四半期報告書によると2021年1月末時点の筆頭株主は、前代表取締役社長の荒巻芳幸氏で保有割合16.0%、次いで常務取締役の荒巻拓也氏の資産管理会社とみられる株式会社山旺商事が11.4%、荒巻芳幸氏が代表を務める山王貴金属株式会社が4.5%、株式会社りそな銀行が4.1%、常務取締役の荒巻拓也が3.3%、創業家一族とみられる荒巻喜代子氏が2.6%などと並ぶ。外国人株式保有比率は10%未満

取締役会

取締役は8名(社内6名、社外2名)、うち監査等委員3名 (社内1名、社外2名)、監査等委員会設置会社である。代表取締役以外の取締役は全員プロパー社員で、営業部や事情統括部、経営企画部等の様々な経歴を持つ取締役が揃う。取締役会長の甲山文成氏は総務部門に長年携わり、取締役や常務取締役を経て、2010年9月に代表取締役社長に就任。2015年10月に現職に就任した。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の三浦尚氏は1955年3月生まれ。1978年に慶應義塾大学経済学部を卒業(卒業直後の経歴は開示なし)、1990年7月に株式会社りそな銀行へ入行。2008年1月に同社へ入社し、総務部や経営企画部を経験。2010年10月に取締役、2014年10月に常務取締役を経て、2019年4月に現職へ就任した。

報告セグメント

貴金属表面処理事業の単一事業であり、報告セグメントは地域別の「日本」、「中国」、「フィリピン」の3セグメントから構成される。2021年7月期第2四半期は売上高3,793百万円の内、日本が2,797百万円で73.7%、中国が345百万円で9.1%、フィリピンが650百万円で17.1%を占める。
利益率は日本がマイナスから1桁台前半、中国とフィリピンが1桁台前半を推移する。日本は相対的に利益率マイナスとなる期が多いが、セグメント間取引による相殺を一部含むためとみられる。

事業モデル

電気機器用のコネクタ・スイッチ等の精密プレス加工や金型の製作、貴金属表面処理加工を一貫して行う
精密プレス加工では電子部品の製造・販売メーカーから依頼を受けて、コネクタのプレス金型の設計から生産までを行う。携帯機器用の小型製品から車載向け等の大型製品まで幅広く対応。日本工場と中国の生産拠点で対応する。
表面処理加工では、プレス成型品への金めっき加工や合金めっき加工を行う。取扱部品はパソコン関連から車載関連、産業機器関連まで様々な電子部品を手掛ける。日本本社と中国の生産拠点、フィリピンの連結子会社で対応する。
国内は需要が旺盛な通信業界の売上構成が高いほか、産業、自動車分野が高い割合を占める。
中国の連結子会社は2021年7月期第2四半期に売却し、連結の範囲から除外。5G基地局向けが堅調な日本と、車載向けが復調なフィリピンの生産拠点に今後は注力していく予定である。海外売上比率は31.1%(2020年7月期)
エレクトロニクス市場は年平均成長率が3%。5G高速伝送対応等は基地局向け→携帯端末→5G車載関連(IoT・コネクテッドカー)、物流・工場ロボット、医療機器といった適用市場の拡大で、半導体の需要増加と連動する形でめっき加工の需要は、同社の行う精密プレス加工や表面処理加工の需要も含めて安定的に拡大していくとみられる。同社では拡大する需要の取り組みに向けて、設備投資を積極的に実施。めっきラインの新設や、プレス加工からめっき加工まで一貫した生産体制(国内工場を東北事業部に、海外をフィリピンにそれぞれ一本化)を整備するなど、生産力強化に取り組む。

2020年7月期決算説明会資料

競合他社

電子部品の接続面への金属表面加工が柱の4973日本高純度化学株式会社(同16,622百万円)、金属表面加工で日本首位の4095日本パーカライジング株式会社(同99,918百万円)、5758FCM (2021年3月期売上高23,506百万円)、菊池製作所 (2021年4月期売上高5,365百万円)が競合とみられる。

連結の範囲

連結子会社1社と非連結子会社1社を持つ 。フィリピンの連結子会社では、表面処理加工を中心に行い、総売上高に占める売上高の比率は10%を超える。

強み・弱み

幅広い製品への対応力が強みの一つ。IoTの普及や工場自動化によって、スマホ向け製品から車載・産業機器向け製品まで製品ニーズの多様化が進む。また半導体等の精密部品ではめっきの微細化や高密度化が求められ、製品の付加価値も増加傾向である。同社は、60年以上に渡ってめっき加工技術を提供しており、国内の主要電気機器メーカーと安定した取引関係を構築。生産体制への積極的な設備投資を実施しており、少量多品種の製品への対応や、量産製品への対応の高速化を進める。またコスト対応力強化を同社は課題と認識しており、生産設備の移管や増設、および省人化設備の導入により顧客のニーズに合わせるとともに効率的な生産体制を整備する。一方で、主材料の金や銅の市場価格変動に伴う売上原価の上昇が懸念点となる。

2020年7月期決算説明会資料

KPI

設備投資の目的のひとつである省人化の進捗を確認するための売上対人件費比率などがKPIとして挙げられる
・操業度
・稼働率
・納期遵守率
・不良経費率

業績

売上高は2016年7月期から2018年7月期までの3期で1.3倍に増加したが、2019年7月期は米中貿易摩擦や産業機器の生産調整の影響を受け、前期比▲15.3%の減収。2020年7月期は5G向け通信機器の需要拡大を受け、前期比+11.9%の増収となった。経常利益は、2017年7月期にプラス転換。2018年7月期にかけては、中国で環境規制をクリアしたことによる大幅増益を受けて前期比+260.9%の増益だった。2019年7月期にマイナス転換したが、2020年7月期にかけてプラスに回復。営業CFは2018年7月期と2019年7月期を除いてマイナス。投資CFはマイナスを継続。国内工場の設備投資により特に直近2期はマイナス幅大きく、フリーCFのマイナス幅も拡大傾向。自己資本比率は2020年7月期で41.6%。前期の46.0%から悪化した