8098 稲畑産業の業績について考察してみた

8098 稲畑産業の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1918年6月に大阪府大阪市において、株式会社稲畑商店として設立された。ただ、同社の起源となる稲畑染料店を開業したのは1890年10月であり、創業者である稲畑勝太郎(現代表取締役社長である稲畑勝太郎氏の祖父)が京都府京都市で開業したのが始まりである。その後、染料に加え、工業薬品、紡績、紡織、染色用諸機械、雑貨、洋酒などの輸入で営業を拡大し、大阪へ移転。1943年4月には商号を稲畑産業株式会社に変更1961年10月には大証市場第二部、1962年6月には東証市場第二部に上場した。1973年8月には東証および大証の市場第一部に指定替え。2020年10月には創業130周年を迎えた。情報電子、化学品、生活産業、合成樹脂の4分野に特化する化学品専門商社。

株主構成

有価証券報告書によると、2021年3月末時点の筆頭株主は、戦前より事業における関わりが深い住友化学株式会社が22.87%を保有する。その他は国内外の信託銀行等金融機関の信託口が並び、5%未満の保有には創業家出身の現相談役である稲畑勝雄氏が1.92%を保有(同氏は2021年4月22日に逝去。現代表取締役社長である稲畑勝太郎氏の父)。丸石化学品株式会社やあすか製薬株式会社など取引先の保有も見られる。外国人株市域保有比率は20%以上30%未満。なお、上位10位までの株主が占める割合は47.53%である。

取締役会

取締役は9名(社内6名、社外3名)、監査役5名(社内2名、社外3名)、監査役会設置会社である。うち、女性は1名。代表権を有するのは、社長執行役員である稲畑勝太郎氏、専務執行役員の赤尾豊弘氏、横田健一氏の3三で、稲畑氏と横田氏は30代で同社へ入社しており前職は不明。社内取締役の杉山氏も40代での中途入社。赤尾氏と安江氏がプロパーの社内取締役とみられる。残る社内取締役の大野顕司氏は住友化学株式会社にて常務執行役員を兼任している。また、社外取締役の佐藤潔氏は東京エレクトロンで、渡島健爾氏はウシオ電機にて、それぞれ社長の経歴を有す。

代表取締役の経歴

代表取締役社長執行役員である稲畑勝太郎氏は1959年12月生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、1984年に第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年1月に当社に入社した。2005年12月に前社長である故・稲畑武雄氏の逝去を受け、現職である代表取締役社長執行役員に就任した。
代表取締役専務執行役員である赤尾豊弘氏は1959年12月生まれ。1982年4月に当社に入社後、長年にわたり、情報電子事業の責任者などを歴任してきた。2010年6月に取締役、2015年6月に現職に就任した。
代表取締役専務執行役員である横田健一氏は1962年11月生まれ。1996年7月に当社に入社後、長年にわたり、財務経理部門の責任者などを歴任してきた。2008年に取締役、2017年6月に現職に就任した。

報告セグメント

「情報電子事業」・「化学品事業」・「生活産業事業」・「合成樹脂事業」・「その他」の5つから構成される。2021年3月期売上高5,775億円の事業セグメント別構成比は、情報電子38.9%、化学品11.5%、生活産業6.5%、合成樹脂43.1%であった。営業利益では、情報電子が4割強、化学品が1割弱、生活産業が1割強、合成樹脂が4割弱と、合成樹脂よりも情報電子の利益率がやや高い。営業利益は149億円であった。
地域別の売上高は日本が46.6%、北東アジア27.2%、東南アジア21.1%、米州3.5%、欧州1.6%と、海外売上高比率が国内を上回る。

事業モデル

社是を「愛」(I)、「敬」(K)として定め、経営理念として、「人を愛し、敬う」ことで、社会の発展に貢献することを掲げている。グローバルに展開する専門商社として、顧客や社会のニーズに応えることで価値ある存在であることを目指している。
商社である同社では扱う商材も多岐にわたり、情報電子事業では液晶・有機EL関連、フラットパネルディスプレイや周辺部材、インクジェットプリンター関連の取引、合成樹脂事業の樹脂コンパウンド事業では、供給先となる家電や自動車関連の部材関連の取引がビジネスの中心である。
「情報電子事業」は、液晶・有機ELディスプレイ、デジタル印刷、半導体・電子部品などに関する部材の仕入・販売などを手掛ける事業であり、「化学品事業」は、石油化学関連企業向けの原料や中間物、塗料・インキ・接着剤、などの仕入・販売などを手掛ける。また、「生活産業事業」は、医農薬・防虫剤の原料などに関する仕入・販売、「合成樹脂事業」は、生活用品、建築部材などへの合成樹脂をはじめとして、様々な企業に合成樹脂関連製品の供給を担っている。「その他」は上記4事業のいずれにも含まれないものである。
同社では長期ビジョン「IK Vision 2030」を策定し、連結売上高1兆円の実現とする定量目標を掲げるほか、2021年4月よりスタートした中期経営計画「New Challenge 2023」では、2024年3月期売上高目標を6,700億円に設定し、主力ビジネス(情報電子事業・合成樹脂事業)のさらなる深掘りと成長分野への横展開、将来の成長が見込める市場への多面的な取り組みと確実な収益化、などを主力重点施策として掲げている。また、各事業においては、環境負荷低減に資する商材の拡充や5G関連、再生医療関連、など成長が見込める分野における商材の発掘、などにも注力している。

競合他社

化学品専門商社の最大手8012長瀬産業(2021年3月期売上高8,302億円)が規模も近く、取扱品目でも直接的な競合となる、なお同社は2番手に位置する。3番手とされる三菱グループ企業の8103明和産業(2021年3月期売上高1302億円)は規模では上位2社と開きがあり、かつ取扱品目で直接の競合もしにくい。同社と長瀬産業は連結売上高1兆円を目指している

連結の範囲

2021年3月末時点において、同社には54社の連結子会社が存在し、関連会社が10社、その他の関係会社1社(筆頭株主の住友化学)がある。特にアジア圏を中心に海外売上高比率が50%を超える同社では、40社以上の連結子会社が海外子会社である。

強み・弱み

創業100年を超える間に培われてきた顧客基盤が強み。電機、自動車、住宅関連など幅広い業種・メーカーに及び、顧客業界の状況による業績変動リスクが分散されている。また、同社では、アジアを中心に現地子会社を多数設立しており、豊富な海外ネットワークで手厚い顧客サポート体制を構築している点も強みである。一方で、情報電子事業と合成樹脂事業の収益源に加えて、将来の成長が見込める食品・農業や再生医療などの領域へビジネスを更に拡大することを中計で掲げている。同社の掲げる成長分野への投資は、競合も投資を積極化しており、これまでの堅実経営から一転してリスクテイクを積極的に行っていけるかが今後の課題である。

KPI

中長期的な経営戦略を策定し、定量目標を明示している。それらの進捗状況が
KPIとなる。
「連結売上高」 5,775億円 (2021年3月時点、長期ビジョン:1兆円)
「海外比率」 53.4% (2021年3月時点、長期ビジョン:70%)
「情報電子・合成樹脂以外の事業比率」 約23% (021年3月時点、長期ビジョン:1/3以上)
「ネットD/Eレシオ」 0.06 (2021年3月時点、新中期経営計画:0.3以下)

同社HP TOP>IR(投資家情報)>業績・財務情報 >ファクトシート

業績

2012年3月期から2019年3月期までの売上高は毎期増収も、2020年3月期以降は樹脂価格の下落と新型コロナウイルス感染拡大の影響をうけて2期連続減収。営業利益は欧州で大規模な貸倒引当金を計上した2018年3月期を除いて、概ね右肩上がりで増益しており、2021年3月期には販管費の削減により過去最高益を更新。営業CFは増収基調なこともあり期によってマイナスとなることもあるが、均して見ればプラス傾向で、投資CFは安定せずプラスマイナス50億円前後の期もあればプラスマイナス5億円以下の期もある。財務内容は、ネットD/Eレシオを経営指標に掲げており低位で安定推移しているほか、2021年3月期の自己資本比率は49.2%と良好である