4425 Kudanの業績について考察してみた

4425 Kudanの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2011年1月に、同社代表取締役の大野智弘がKudan Limited(現:同社完全子会社)を英国に設立。AP(Artificial Perception:人工知覚)技術の基礎となるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)の研究開発をおこなっていた。APは人間の「眼」と同様に、機械に高度な視覚的能力を与える。またSLAMとはコンピュータが現実環境において自己位置の推定と3次元立体地図の作成を同時におこなう技術を指す。2014年11月、業容拡大による管理部門の拡張を目的として東京都にKudan株式会社を設立し、翌2015年にKudan limitedを完全子会社化。2018年12月、東証マザーズへ上場する。

2021年3月期 通期決算説明

株主構成

有価証券報告書によると2021年3月末日時点の大株主は、代表取締役の大野智弘氏で39.5%を保有する。続いてスイスのプライベートバンクであるUNION BANCAIRE PRIVEEが10.7%を保有。同社CTOのJohn Williams氏と、大株主のJun Emi氏が海外居住者であるため、両氏の所有分がこのプライベートバンクに含まれる。そのほか保有比率3%未満で国内外の金融機関や取締役の飯塚健氏などがならぶ。なお外国人株式保有比率は10%以上20%未満。

取締役会

取締役は7名(社内3名、社外4名)、社外4名のうち3名は監査等委員。監査等委員会設置会社である。取締役CFOの飯塚健氏は監査法人の出身。2015年6月より現職を務め、2019年6月にはKudan Funds株式会社(現:Kudan Vision株式会社)の代表取締役に就任している。

代表取締役の経歴

代表取締役の大野智弘氏は1969年11月生まれ。横浜国立大学経営学部を卒業後、1993年4月にアンダーセン・コンサルティング東京事務所(現:アクセンチュア株式会社) に入社。東南アジアやアメリカ、ヨーロッパでコンサルティング業務に従事する。2001年よりイギリスのベンチャー企業に役員として勤務する。その後2011年、イギリスにてKudan Limitedを創業し、2014年には日本でKudan株式会社を設立した。
代表取締役CEOの項大雨氏は1984年8月に中国で生まれる。小学校時代より日本で育ち、東京大学の修士課程を修了。専攻は機械工学である。2009年4月からトヨタ自動車に勤務し、2014年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。先端技術の領域で経営に近く、グローバルな仕事をしたいとの思いから2016年、同社に入社した。2017年より取締役COOを務める。

報告セグメント

「AP事業」の単一セグメント。コンピュータやロボットの「眼」に相当するAP技術の研究開発と、関連するアルゴリズムをハードウェアに組み込むためのソフトウェアライセンスを提供している。地域別の売上高を見ると、2021年3月期においては127百万円のうち日本が123百万円で96.9%、欧州その他が3.2%を占める。

事業モデル

APアルゴリズムの研究開発および提供を手がける。おもに半導体・センサー・カメラ企業にソフトウェアライセンスを提供する。売上高全体の10%以上を占める取引先はソフトバンク株式会社、エレマテック株式会社である。研究開発の拠点をイギリスに置き、日本では管理業務をおこなう。2020年7月よりグループ会社となった米国のアーティセンス社と共同で研究開発に取り組む。同社と相互補完可能なSLAM技術を有する企業である。
APはカメラや3次元センサがつくあらゆる機器に使用される。たとえば産業用ロボットや自動車、ドローンなどの自動制御や、AR・VRの空間認識に必須の技術である。また関連技術であるAIやIoTとの技術統合も想定され、今後AP市場は拡大すると考えられる。

競合他社

同社のAP技術はSLAMを中心としており、Deep Tech層に位置する。商用としての競合はほぼいない。さらに、同社のようにSLAMを専業にする企業はAppleやFacebook、Nianticなどの大手企業による買収が続いており、国内上場企業の競合は見当たらない。

連結の範囲

連結子会社は3社、持分法適用関連会社が3社である。主要な子会社は研究開発拠点の中核であるイギリスのKudan Limitedで、売上高は連結売上高の10%を超える。

強み・弱み

ボラティリティの低いDeep Tech層でのポジショニングと、技術の柔軟性が強み。同社グループの技術は多様なセンサ、演算処理のプラットフォームに対応できる。2020年5月にNTTドコモ主催の5G DXアワードにおいて準優秀賞を受賞、2021年3月にはヨーロッパの組込みソリューションにおける世界最大級のイベント「embedded world 2021 DIGITAL」のスタートアップカテゴリにおいて最優秀賞を受賞した。一方で市場の成長性が高い領域に絞った大型案件への注力、アーティセンス社との研究開発スケジュールの遅延により、顧客製品に対する技術面での柔軟な対応や継続案件の減少が生じている。結果、2021年3月期の売上高は前年度の27.8%と大きく減少。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、予想よりも早いスピードで市場が成長すると見られる中、資金調達や研究開発が遅れを取らないかが課題だ。

KPI

売上高と、事業開発の進捗を示す累積案件数の推移、また資金調達の面から営業CFがKPIとなりうる。数値は2021年3月期の値である。
①売上高:127百万円(前年同期比▲72.1%)
②累積案件数:108件(前年同期比+2.0倍)
③営業CF:▲349百万円(前年同期比-168.4%)

2021年3月期 通期決算説明

業績

過去5期分の経営状況をみると、売上高は2020年3月期まで堅調に増加し、88百万円から456百万円へ5.1倍となった。2021年3月期は前期比▲72%の127百万円で着地している。経常利益は2018年3月期、2019年3月期を除いてマイナスである。2021年3月期はアーティセンス社に対する投融資に対する減損処理をおこない、▲1,575百万円となった。自己資本比率は2020年3月期以外90%代と高い水準で推移している。投資CFは恒常的にマイナス、営業CFについては2019年3月期をのぞいてマイナス推移である。