4588 オンコリスバイオファーマの業績について考察してみた

4588 オンコリスバイオファーマの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2004年3月、腫瘍溶解ウイルスの開発及び分子標的抗腫瘍薬の開発を目的に、オンコリスバイオファーマ株式会社設立。同社の主力製品であり、がん治療に利用される腫瘍溶解性ウイルス製剤OBP-301(同社登録商標「テロメライシン」)に関して、2006年10月の米国における第1相臨床試験(以下、P1)開始、2012年4月の米国特許成立、2017年7月の米国におけるP2開始などが実現。2013年12月に東証マザーズ上場。がん治療、抗HIVなどをターゲットに、特定ウイルスを活用した新薬の開発を事業とする創薬系バイオベンチャーである。

株主構成

有価証券報告書によると、2020年12月末時点で5%以上を保有する株主はないが、ライセンス契約を締結しているアステラス製薬株式会社が筆頭で4.97%。オフィス機器商社の株式会社CAN代表取締役と見られる藤岡義久氏が3.95%で2位、創業者で代表取締役社長の浦田泰生氏が3.71%で3位、ライセンス契約を締結している中外製薬株式会社が3.12%で4位などとなっている。外国人株式保有比率は10%未満

取締役会

取締役は5名(社内4名、社外1名)、監査役は3名(1名は社内で常勤、2名は非常勤で社外)、監査役会設置会社である。代表権を持たない社内取締役は、製紙会社、製薬会社、金属製品製造会社などの出身。社外取締役には、光学機器メーカー出身者が就任。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の浦田泰生氏は1955年10月生まれ。京都薬科大学大学院修了後、1983年4月に小野薬品工業株式会社入社。1994年8月には日本たばこ産業株式会社入社、研究開発企画部長、医薬品事業部調査役などを歴任。2004年3月、同社を設立し代表取締役社長に就任、現在に至る。

報告セグメント

2020年12月までは、「医薬品事業」ならびに「検査事業」の2セグメントで構成されていた。前者は医薬品の研究、開発、製造、販売を事業目的とし、後者は検査薬の研究、開発、製造、販売を事業目的としていた。2020年12月期の売上高314百万円の構成比は、前者が99.8%、後者が0.2%であり、セグメント利益はいずれも赤字であった。なお、2021年1月より「創薬事業」の単一セグメントとなった。

事業モデル

創薬ベンチャーではあるが、研究~開発~試験までの全段階を自前で遂行するものではなく、これらの一部に対象を限定することで事業のスリム化とリスク低減を図っている。具体的には、基礎研究を行わず創薬プランの策定に特化するとともに、製品の製造及び試験はアウトソーシングとするなど、主にプロジェクトマネージャの役割を果たす。例えば、がんや重症感染症などの難病を対象とする医薬品候補を大学等の研究機関や企業から導入し、臨床開発の初期段階をアウトソーシングによって推進。その品目の製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)を行った上で、大手製薬企業・バイオ企業等にライセンス許諾を行う。これによる契約一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、上市後のロイヤリティ収入の獲得を収益モデルとする。

公式ウェブサイト内「事業概要」>「ビジネスモデル」

主力製品テロメライシンは、目的に合致するよう遺伝子組換したウイルスでがん細胞を破壊する、一種の抗がん剤である。当該ウイルスは、がん細胞内に侵入・増殖するため投与量が相対的に少なくて済むこと、正常細胞に対する攻撃性は弱いことなどの理由で、テロメライシン療法は患者への負担を軽減できると期待される。

公式ウェブサイト内「パイプライン」>「テロメライシン®(OBP-301)」

競合他社

遺伝子組換ウイルスを用いたがん治療については、大学等の研究機関における基礎研究は比較的活発であるものの、実用化へ向けた動きは初動の段階にある。このような状況下、4568 第一三共(株)は、「がん治療用ウイルスG47Δ」(一般名teserpaturev)の膠芽腫(悪性神経膠腫の一種)を対象としたP2を完了し、再生医療等製品製造販売承認申請済み(国内)など、ベンチャーではないものの一部製品で競合し得る。売上高962,516百万円(2021年3月期)。
また、ウイルス製剤以外へも範囲を広げれば、抗がん剤開発を目的とする創薬系バイオベンチャーという共通点から、4565 そーせいグループ(株)(売上高8,842百万円)、4564 オンコセラピー・サイエンス(株)(売上高332百万円)なども競合の可能性あり。

連結の範囲

同社グループは、同社、非連結子会社1社、関連会社1社で構成される。子会社及び関連会社に関しては、重要性が乏しいとの理由で詳細は非開示。

強み・弱み

ウイルス製剤に早期から着目し複数の製品を同時開発している点は、実用化を目指す上で有利。シーズ発掘とアウトソーシング活用によって開発期間の短縮や事業の合理化を図り、創薬ベンチャー特有のリスクを低減している点も強み。
とはいうものの、副作用等の理由による開発中止あるいは承認拒否など、計画が頓挫するリスクは他業種に比較して大きい。

KPI

製品上市前のため販売実績等のKPIは得られていないが、各製品の開発進捗状況などはKPI的指標と見なせる。
・テロメライシン:頭頚部がんP2第一例目(米国)投与開始(2021年5月発表)

公式ウェブサイト内「パイプライン」>「パイプラインの概要」

業績

いずれの製品も上市に至っていないため、先行投資を回収できない状況にある。赤字幅も年々拡大傾向で、2020年12月期の経常損失は上場来最大の▲1,723百万円(前期比▲1,184百万円)。売上高314百万円(前期比▲75.9%)、営業利益▲1,674百万円(前期比▲1,163百万円)。営業CFは恒常的にマイナス、投資CFは決算期によってまちまち。直近決算期の自己資本比率は71.4%。