6067 インパクトホールディングスの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

インパクトホールディングスの事業概要

同社は「IT」と「人」をキーワードに店舗店頭に特化したマーケティング支援を目的とした、株式会社メディアフラッグ(資本金3,000千円)として東京都目黒区駒場にて設立。2012年9月には東京証券取引所マザーズも株式上場。多数の子会社設立を経て2019年4月に商号をインパクトホールディングス株式会社に変更。2019年5月にはインドにおけるコンビニ事業参画を企図してCoffee Day Consultancy Services Private Limited(現関連会社)に出資。2020年10月には第三者割当により双日株式会社と資本業務提携を発表した(持株比率2.40%)。本提携の目的としては双日が保有するショッピングモールにおける消費者ビッグデータの取得、海外コンビニエンスストア事業におけるシナジーを期待する為としている。
双日との業務資本提携に伴う新株発行後に同社の株式を5%以上保有しているのは22.05%保有している福井康夫代表取締役のみである。数%を保有する会社には博報堂DYホールディングス(4.62%)や共同印刷株式会社(3.70%)がある。創業者かつ代表取締の福井氏が株式を20%超持っているのに対して他の経営幹部の持ち株比率が2%未満であることを考慮するとカリスマ創業者のワンマン体制に近い可能性がある。2019年12月期の有価証券報告書に経営人材の確保と育成が挙げられていることや、会社組織に関するリスクの項において創業者への依存度への言及があることからも現ワンマン体制以降に対する不安感が見てとれる。
同グループは主にHR(Human Resources)ソリューション事業、IoT(Internet of Things)ソリューション事業、MR(Marketing Research)ソリューション事業に大別されている。さらに国外では前述の通りインドにおけるコンビニエンスストア事業を展開している。それぞれの事業領域の詳細は後段に記載する。同社は機能を連結子会社に継承させて持株会社化に向かってきていたが、2020年10月にセールス&プロモーション
事業を連結子会社に継承する吸収分割契約を終えたことで同社は純粋持株会社となった。同社グループ全体での取引口座数1,500社超、年間フィールド業務数120万件超と強固な顧客資産を保有している点に強みがある。店舗店頭の販促・マーケティング領域では、同社グループが主力サービスとして展開する ラウンダー・推奨販売・デジタルサイネージ・商品POP制作・店頭什器制作・ノベルティ制作・店頭調査以外にも、販促企画・イベント運営・映像制作等、様々なソリューションが様々な企業により展開されている実態がある。同社グループは、「マルチフィールドメニュー」のラインナップを目指し、店頭販促に関する主要業務すべてを網羅すべく事業を推進しており、同領域におけるM&Aや業務提携を積極的に進める方針である模様。
同社の有価証券報告書によると直接的な競合企業はいない模様。一方、上記3セグメントに分けた際の競合が事業領域を店頭販売全般まで拡大した際には全体への影響が生じると考えられる。リスクとして2019年12月期の有価証券報告書においてはリアル店舗依存型のビジネスモデルについて、自然災害や重大な事故が生じた際の事業全般への影響を危惧していたものの、2021年12月期第3四半期では売上ベースで前年同期比139.0%を記録していることからコロナを追い風に需要を捉えたと言えるだろう。

HRソリューション事業

HRソリューション事業では、消費財メーカー向けにラウンダー(店頭へのルート営業代行業務)や推奨販売(店 頭での試飲試食販売員の派遣業務)をはじめとしたフィールド(店頭)業務を年間約120万件という国内最大級の規模で実施している。またこれまでフィールドマーケティング事業で当社が積み重ねてきた647万件に及ぶ店頭ビッグデータ情報(店舗DB)を武器として最適な販促対象店舗を選定し、効果的な販促手法のコンサルティングを交えることが強みとして挙げられる。同社グループの中では、cabic(株)や(株)INSTORE LABA等を含む7社が本セグメントを担っている。
2020年12月期第3四半期連結累計期間においては、コロナウィルス拡大の抑制が見られたものの、引き続き一部小売業で新型コロナウイルス感染拡大を懸念した店頭販売員の配置を自粛する動きあり、それに伴い試飲・試食等の推奨販売サービスが売上高・営業利益とも減少した。一方で、販促物・什器製作や、それを設置し魅力ある売場を創造するためのラウンダーサービスがウィズコロナ時代のニューノーマル販促として大きく需要を伸ばした。既存顧客に対して販促ツール製作、物流、ラウンダーサービス等のグループソリューションのクロスセル推進したことで需要を掴み、最終的に売上高は5,474百万円(前年同期比+59.3% )、営業利益は495百万円(前年同期比53.6%増)と増加した。同期間における本セグメント売上高は対全体で72.0%を占めていることもあり同社の中核事業と言えるだろう。また、2018年12月期第3四半期累計では2,682百万円、2019年12月期第3四半期では3,433百万円と順調に売上高を伸ばしている為、今期の伸びがコロナウィルスに伴う需要を捉えた一時的な成長ではないと考えられる。

IoTソリューション事業

IoTソリューション事業は、消費財メーカーはじめ、流通小売業向けに小型デジタルサイネージを年間約20万 台 提供している。2017年にはPISTA(フィールド・トラッキング・ソリューション)をローンチし、オンラインによるコンテンツ自動更新や人感センサー・顔認識エンジンを活用した店頭棚前顧客情報取得という新たな付加価値の提供を加速させている。これにより従来の筐体販売だけでなく、オンライン利用料やASPサービス利用料などのストック収益を見込めるビジネスモデルの構築を目指している模様。 また同セグメントを本社とともに担う株式会社impactTVで現在集中的に取り組んでいる飲食・流通小売店舗向けオンライン型サイネージに加え、 美容室・ネイルサロン等を媒体とする広告事業者向けインフラ型オンラインサイネージの展開も強化している。
2020年12月期第3四半期連結累計期間においては、試飲・試食等の店頭推奨販売サービスの代替商材として、テレワーク運用中においても遠隔地から店頭の映像コンテンツを切り替えられるオンラインデジタルサイネージを導入推進する消費財メーカーの需要や、エレベーター内・美容室座席前等を広告媒体とする広告事業者向けカスタマイズ版 オンラインサイネージシステムの需要を大きく取り込むことに成功。売上高は1,356百万円(前年同期比+18.3%)、セグメント利益は315百万円(前年同期比+36.3%)と、HRソリューション事業セグメント同様に増加した。同期間における本セグメント売上高は17.7%である。HRソリューション事業セグメントほどの大幅な成長ではないものの、2018年12月期第3四半期累計では950百万円、2019年12月期第3四半期では1,129百万円と着実に20%弱の成長を遂げているセグメントであると言える。

MRソリューション事業

MRソリューション事業では、日本国内で年間約10万件提供している小売業・飲食業・サービス業向けCS(顧客満足度)、ES(従業員満足度)向上のための覆面調査や、店頭オペレーション改善等のための研修プログラムを提供している。また直近では内部監査代行業務を覆面調査の手法により実施するなどの用途開発や、消費財メーカー向けにグループインタビュー、ホームユーステストなどの新規マーケティング・リサーチメニューの展開を展開中。同社グループの覆面調査を中心とするリサーチメニューの特徴として挙げられるのは顧客ごとの異なるサービス方法、調査目的に合わせ同社グループが保有する流通ノウハウを活用し、調査項目等を顧客の希望に合わせ都度設計している点である。
2020年12月期第3四半期連結累計期間においては、消費財メーカー・学術機関向けのマーケティングリサーチサービスは堅調 に推移したものの、新型コロナウイルス感染拡大による外食産業停滞や小売業の営業時間短縮等の影響を受け、リアル店舗を調査対象とする覆面調査大型スポット案件の実施が4四半期以降へ延期となった。売上高は784百万円(前年同期比▲12.2%)、セグメント利益は116百万円(前年同期比▲48.9%) となった。同セグメント売上高は全体比で10.6%である。

インドにおけるコンビニ事業

同社はこれまでインド国内の現地リテール事業会社に対して、チェーン運営・本部機能強化・IT推進・商品開発等のコンサルティングサービスを中心に4年間以上展開をしていた。本事業で蓄積したノウハウを基に、事業として投資とハンズオン経営をすべく、インド全土に2,700店舗のカフェチェーンを展開するCDELグループと2019年4月にJVであるCoffee Day Consultancy Services Private Limited(以下、CDCSPL)及びCDCSPLの子会社となる Coffee Day Econ Private Limited(以下、CDEPL)を設立してコンビニ事業を開始することを決めた。CDCSPL設立に際して同社は1,500万米ドルを出資、CDELグループとECB契約に際して1,000万米ドルの貸付融資を行っている。前者の出資金は、CDELグループが保有する既存店舗 425 店をコンビニエンスストアに業態転換する際にかかる内装工事や設備等、家賃保証金、店舗運営に必要な仕入れ代金等に充てることを目的に、後者の融資金は既存店舗全てをコンビニエンスストアへの業態転換した後、更なる出店に必要となる費用への前貸しを目的としている。
一方拡大への本事業拡大への不安要素についても本項で言及する。それは2019年7月末にCDELの創業会長シッダールタ氏の突然逝去に伴い始まった、シッダールタ氏が生前書簡に記した最高経営者兼財務責任者として決裁した金融取引等に関する第三者機関による調査の動向である。2020年7月24 日付で報告された第三者機関による調査結果に関して、同社はCDELに対して詳細を明らかにするよう請求し、CDCSPL のコンビニエンスストア事業に対する影響の確認を進めている。本状況を踏まえ、同社では、本件投融資の評価については、2019年12月期において、①、②の会計処理を行った。 ①CDGLへの貸付債権1,121百万円について、貸付債権全額に相当する1,121百万円に貸倒引当金を計上②CDCSPLに対する投資持分のうち、のれん相当額である807百万円につき投資損失として営業外費用に計上。

財務状況と経営指標

まず2019年12月期通期において、売上高7,909百万円に対して経常損失▲307百万円、PAT▲1,589百万円と大きな赤字を計上している。これの主な要因は上述の通り、インド事業に関する貸倒引当金1,121百万円、及び負ののれん計上807百万円である。故に営業CFの増加が39百万円(2018年12月期は405百万円)と直近5年で最も低いことも本影響を強く受けている。2020年12月期における業績の前年比を見る際には注意が必要である。一方、仮に繰上金払戻が生じた際には会計上は利益が大幅に改善されたように見られる為、その数字の絶対値を見るのではなく、あくまでもインドにおけるコンビニ事業発展のシグナルとして捉えることが妥当だろう。
2020年12月期第3四半期末時点でのROEは9.5%(PAT217百万円/純資産2,278百万円)である。同社売上高は第4四半期に増加する傾向がある(2019年12月期では四半期毎に20.3%→23.1%→25.6%→31.0%と推移)。コロナウィルスの年末商戦への影響は測りかねるものの、第3四半期累計時点で9.5%という高水準(一般的に上場会社で期待される水準は8%~10%)であるため、通年では更に高水準を記録することが期待される。
2020年12月期第3四半期の流動比率は230.5%(流動資産5,365百万円/流動負債2,327百万円)であり、高い安全性を持っていることが見受けられる(一般的に200%以上が望ましい)。また、2019年12月期末での現金及び現金同等物の残高は1,465百万円と潤沢であり、直近5年間でみても1,350百万円~1,600百万円程度の間で安定して推移していることからも安全性の高さが覗える。
2015年12月期から2018年12月までのC/Sを見ると常に営業CFがプラス、投資CFがプラスとマイナスがある中でもフリーCF(営業CF+投資CF)は常にプラスであった。子会社を多く抱えているものの、それらは2014年付近までに傘下に入った企業が多く、近年投資キャッシュフローがプラスの年もあったことを考慮すると、グループ拡大の勢いは落ち着いていたと考えられる。しかしながら2019年12月期には、投資CFが▲3,321百万円と大きくマイナスになっている。これは主にインドにおけるコンビニ事業への投資資金が占めている。本都市の大型投資を考慮すると、直近で投資の勢いを抑えていたのはインド進出に向けた長期的な準備期間だった可能性はある(インドでの事業開始時期とも概ね一致する)。その観点からもインド事業への期待と重要度が見受けられるだろう。

PCAのカタリスト

同社のカタリストと考えられるのは、主に2点あると考えられる。それはインドにおけるコンビニ事業成功の可否と、IoTソリューション事業の伸長可能性である。

インドにおけるコンビニ事業成功の可否

上述の通り巨額投資によって参入したインドにおけるコンビニ事業は同社にとって非常に重要な事業であることは言うまでもない。また、参入をプレスリリースした後の2019年5月24日には株価が5,760円まで高騰したことからも市場からの期待感も伺える。2019年8月2日には第1号店を出店しており、2020年11月25日付では累計57店舗に達している。バンガロール、デリー、チェンナイ、ハイデラバードといった大都市をドミナント出店で、2021年末までに計425店舗、2023年末までには2,000店舗まで拡大をしていく計画を立てている。また、同社が資本業務提携をした双日のベトナムでミニストップ株式会社とのJVで140店舗のコンビニを展開している実績や、総合商社としてのアジア地域におけるネットワークを生かすことが出来れば同事業を強化することが出来るだろう。
しかしながら、本事業については上述した第三者機関による調査の動向も追う必要があるだろう。同社が2020年11月13日に発表した今期業績予想(期中ではインド事業やコロナウィルスの影響が読めないため未定だった)においては、売上高10,000百万円(前年同期比+26.4%)、営業利益1,000百万円(+94.3%)と公表したものの、経常利益とPATについては公表していない。これはコロナウィルスの同社事業への影響はある程度読めてきたものの、本調査結果がインド事業に与える影響が未だ読めていないことも理由の1つだと考えられる。
また、インドでは2020年11月末日時点でのコロナウィルス感染者9,431,691人、死者137,139人と日本と比較してもコロナウィルスの影響を強く受けていることも懸念である。小型店舗での出店でCAPEXは低いとは考えられるものの、コロナウィルスの終息時期次第では人口密度の高い地域へのドミナント戦略がネガティブに働く可能性は捨てきれない。

IoTソリューション事業の伸長

コロナ禍の小売業界において「非接触」が1つのキーワードになった中で同社ではオンラインサイネージ、手洗いサイネージ、AI検温サイネージといったツールを用いて需要に応えた。また、同社はそれら非接触対応用のツールのみならず、店頭ツールのDX化を支える技術を保有しているため、それらツールを基に店頭でのDX化の促進をさせる企業の筆頭として立ち続けるかが重要だろう。今期においてはコロナの影響で既存の顧客を中心にDX化を加速させた、即ちコロナの有無に関わらず将来得る予定だった収益を先取りしたという見方もできる。故に今後は既存顧客のみならず如何に新規顧客を開拓できるか、及びそれら収益ポイントにおいてどれだけ新たなツールを導入せしめることが出来るか成長角度に大きな違いが生じると思料される。同社は2020年11月4日には渋谷本社オフィスにて 「iTV Private Show 2020 in Shibuya」 を開催し、消費財メーカーを中心に60日間で過去最高となるのべ315社の来場があった。来場数は昨年の262社から53社も増えていることからも同社の注目度が垣間見える。いずれにせよ同領域に追い風が吹いていることは確かであるので、コロナ後の成長を持続することが出来るかは要注目である。