4058 トヨクモの業績について考察してみた

4058 トヨクモの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2010年8月に東京都文京区において、サイボウズ株式会社の100%子会社(旧社名サイボウズスタートアップス株式会社)として創業。新規クラウドサービスを手掛ける会社として設立。2014年3月にはMBOによりサイボウズから独立。2017年1月には現本社所在地である東京都品川区五反田に移転、2019年7月にはサイボウズから独立した会社であることを明確にすることを目的に、社名をトヨクモ株式会社に商号変更。2020年9月東証マザーズへ上場。主にサイボウズの業務システム「kintone」と連携可能なアプリケーションをクラウドで提供するほか、「安否確認サービス」を提供している。

株主構成

有価証券報告書によると、2020年12月末時点の筆頭株主は、代表取締役社長山本裕次氏の個人資産管理会社である株式会社ナノバンクで保有比率は48.29%。また同氏は個人名義で5.91%の保有比率を持つ第3位株主でもあることから、山本氏個人で過半数の株式を実質的に占有する。第2位株主は、旧親会社で、現在も業務上の結びつきが強いサイボウズ株式会社で保有比率は7.89%である。そのほか、3名の現取締役などの経営陣が3~5%程度保有するほか、ベンチャーキャピタル(インキュベイト2号投資事業有限責任組合)などが上位株主として名を連ねる。

取締役会

同社の取締役は5名(社内4名、社外1名)、監査役3名(常勤1名、全員社外)である。また、同社は監査役会設置会社である。代表権を持たない社内取締役は3名。経営管理本部長である石井和彦氏はサイボウズ株式会社出身であるが、そのほかの2名(マーケティング本部長田里智彦氏、開発本部長木下正則氏)は同社設立以降に加わったメンバーである。

代表取締役の経歴

現代表取締役社長である山本裕次氏は1968年生まれ。関西大学工学部を卒業後、野村證券に入社し、およそ10年勤務。外資系証券勤務を経て、2000年4月にサイボウズへ入社、2005年から2014年3月まで執行役員を担った。 2010年8月にサイボウズ子会社として同社設立後、一貫して代表取締役社長を担っている

報告セグメント

「法人向けクラウドサービス事業」の単一セグメント。同事業は「安否確認サービス」と「kintone連携サービス」の2つから構成される。サービス毎の売上内訳は公表されていないが、両サービスの有償契約数は安否確認サービスが2,035件、kintone連携サービスが4,254件である。有償契約数は順調に増加しており、2020年12月期売上高は1,095百万円(前年比+334百万円)、当期純利益は150百万円(前年比+78百万円)と増収増益である。

事業モデル

企業理念は「情報サービスをとおして、世界の豊かな社会生活の実現に貢献する」こと。シンプルで初心者でも安心して使うことが出来るアプリケーション開発・提供を通じて、企業における生産性向上に寄与することを目指す。
「安否確認サービス」は同社独自のサービスで、東日本大震災などに代表される大規模災害の発生に備えるツールを提供する。TVコマーシャルの積極活用により、認知度が高い。酒田市役所や公益財団法人などの地公体の他、ラクスル株式会社、TDK株式会社、株式会社マーベラスなどの大手企業や、中堅・中小企業など幅広い顧客への導入実績を有す。
「kintone連携サービス」は、サイボウズ株式会社が提供する業務システム「kintone」と連携し、帳票出力や外部公開のWebフォーム作成、データ自動バックアップ、メール送信サービスなどが可能なサービスをクラウド上で提供する。安否確認サービス同様に、地公体から大企業、中堅・中小企業まで幅広い導入実績を有す。同サービスの今後の成長は、kintoneに依存する部分が大きい。非公表ながらkintone連携サービス内でのシェアは高い水準を獲得しており、今後も積極的な拡販はせず、引き合いベースで対応するとの同社方針である。

同社HP>製品/導入事例

競合他社

「安否確認サービス」は企業のBCP対策の一環として近年では多くの企業が導入しており、競合多数の市場である。9735セコム(2021年3月期売上高3,973億円)が最大手で、安否確認サービスだけでなく、ホームセキュリティを含む広く危機管理関連サービスを提供する。また、9432NTT(2021年3月期売上高119,440億円)の子会社であるNTTコミュニケーションズも法人向けの安否確認サービスを提供。このほか、非上場企業にも複数競合が存在し、各社間のサービス競争は激しくなっている

連結の範囲

2020年12月期において、連結対象となる関連会社を持たない。

強み・弱み

営業員を抱えず、問い合わせにはオンラインや電話でのサポートに徹する体制で、間接コストを抑えた効率的な事業運営を実現している点は強み。また、同社では顧客毎のカスタマイズを行わず、ユーザーフレンドリーなアプリケーション提供にこだわることで画一的な製品提供をしている点も効率的な事業体制に寄与している。なお、従業員数は33人である。一方で、「安否確認サービス」と「kintone連携サービス」の2つに収益を依存する構造はリスクといえる。「安否確認サービス」は東日本大震災後に提供を開始したサービスであり、実際に大規模災害が発生した際に、当初想定したサービスが提供できるかどうかが未知数なことは潜在的な懸念点である。

KPI

有償契約数の獲得状況に応じて収益を計上するビジネスモデルであることから、下記の項目をKPIとして開示している。
「有償契約数」 6,289件 (2020年12月期)
「安否確認サービス契約数」 2,035件 (2020年12月期)
「kintone連携サービス契約数」 4,254件 (2020年12月期)
「月次解約率」 0.8%程度 (2020年12月期)
「宣伝広告費」 272百万円 (2020年12月期)
同社では営業員の配置による営業活動を行わない代わりに、近年では認知度向上のために積極的に広告宣伝を行っている。そのため、広告宣伝にどれだけ費やすことが出来ているかも、同社の経営状況を図る一つのバロメータと考えられる。

2021年12月期 第1四半期 決算説明資料

2021年12月期 第1四半期 決算説明資料

業績

上場直後で長期的な業績の開示はない。2020年12月期の業績は、売上高1,095百万円(前期比+334百万円)、経常利益234百万円(同+136百万円)、当期純利益150百万円(前年比+78百万円)と増収増益である。「安否確認サービス」及び「kintone連携サービス」ともに有償契約数は順調に増加していることを反映した結果となっている。また、同社が開示している月次売上速報(2021年5月分まで)を確認すると、2021年12月期は、各月とも前年同月比で約+140%と好調な事業環境が継続していることが確認できる。第3四半期に新サービスの投入を計画しているほか、従来無配当であったところを期末当期純利益の20%程度をめどに配当実施を計画していることが公表されている。