4390 アイ・ピー・エスの業績について考察してみた

4390 アイ・ピー・エスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1991年10月、株式会社アイ・ピー・エスとして、海外の人材を日本企業に紹介する事業を目的に設立される。1992年に国際デジタル通信株式会社(現:ソフトバンク株式会社)の代理店となり、在留外国人向け通信サービス事業を開始。1999年にはマニラにコールセンターを設置する。2012年になると通信事業の海外展開に踏み出し、フィリピン国内のCATV事業者向けに国際通信回線の提供をスタートした。また2013年、コールセンター事業者向けに「秒課金サービス」とコールセンターシステムの提供を始める。2018年6月に東証マザーズへ上場。続いて2019年、フィリピンの子会社が5G無線通信サービス用の周波数の割当を受ける。2020年12月に東証一部へ変更。

株主構成

有価証券報告書によると、2020年9月末時点の筆頭株主は代表取締役の宮下幸治氏で40.95%を保有する。続いて信託銀行の信託口が8.56%を保有。以下、5%未満で国内外の金融機関やベンチャーキャピタル、個人が名を連ねる。外国人保有比率は10%未満。

取締役会

取締役は8名(社内6名、社外2名)、監査役は4名(社内1名、社外3名。社内・社外より1名ずつ計2名が常勤)、監査役会設置会社である。代表取締役をのぞく社内取締役1名はプロパー社員とみられ、ほか3名の出身は日本電気株式会社、三井物産株式会社など業界はさまざまである。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の宮下幸治氏は1965年2月生まれ。下関市立大学を中退し、1985年5月に株式会社リクルートへ入社した。リクルートは同年の通信自由化をきっかけに通信事業に参入。そのときの経験から宮下氏は同社を創業した。国際デジタル通信株式会社(現:ソフトバンク株式会社)の販売代理店となり、在留外国人向け国際電話サービスを始める。当時は外国人といえば中国、韓国、ブラジル、フィリピンの4ヵ国で8割を占め、外国人の同胞をターゲットに起業する事業者が少なくなかった。しかしその中でもフィリピン人起業者が少なかった点に目をつけ、フィリピン人市場に特化したビジネス展開をおこない、現在にいたる。

報告セグメント

「海外通信事業」、「フィリピン国内通信事業」、「国内通信事業」、「在留フィリピン人関連事業」「医療・美容事業」の5つの報告セグメントに分類される。直近2021年3月期では、売上高9,515百万円の44.7%が海外通信事業、39.0%が国内通信事業にて計上されている。一方で同期の営業利益1,920百万円は、62.5%を海外通信事業で構成している。

事業モデル

主力の海外通信事業はフィリピンがおもな事業地域である。現地のCATV事業者をメインターゲットとして、海底ケーブルを用いた国際データ通信回線を提供している。CATV事業者との契約形態は2種類。通信事業者から回線を取得し、その回線の長期使用権を転貸するIRU契約と、IRU契約に付随する保守運用をおこない使用権の5%を得るO&M契約である。
同社の2本目の柱となる国内通信事業では、日本国内で国内電話サービス・国際電話サービス、コールセンターシステムを提供する。国内電話サービス・国際電話サービスのおもな対象は3者に分類される。①在留外国人、②MVNO事業者(携帯電話などの通信回線網を、ほかの事業者から再販を受けて自社ブランドで通信サービスをおこなう事業者)、③コールセンター事業者である。同社の②MVNO事業者向けサービスは、携帯電話事業者がエンドユーザーの料金を決めるのではなく、MVNO事業者が料金を決められる点が特徴。③コールセンター事業者向けサービスは「10円ごと、3分ごと」の一般的な料金体系ではなく、秒単位で課金できる。
在留フィリピン人関連事業では人材派遣・紹介や海外送金サービスのあっせんなどを手がけてきた。しかし新型コロナウイルス感染症の影響による求人数の激減を受け、2021年1月に人材関連事業から撤退している。
最後に医療・美容事業についてはフィリピンにおいて美容外科・皮膚科、レーシック施術に特化したクリニックを運営する。本邦と比較して施術用の機器が高額なことから、平均単価は本邦よりも高い水準で推移している。
フィリピンは平均年齢が24歳と若く、ASEAN諸国でも成長率が高い。通信環境は未整備の面が多く、有望な市場環境である。

競合他社

同社のようにフィリピンに特化した通信サービスを提供する企業は国内では見当たらず、フィリピン現地の通信事業者が競合といえる。2020年、同社は国際海底ケーブルの一部使用権を得て、フィリピン現地でも3番目となる国際データ通信キャリアとなった。

連結の範囲

フィリピン国内の4社が該当する。フィリピン国内通信事業を営むInfiniVAN, Inc.とCorporateONE, Inc.、在留フィリピン人関連事業を運営するKEYSQUARE, INC.、そして医療・美容事業を手がけるShinagawa Lasik & Aesthetics Center Corporationである。

強み・弱み

「選択と集中」の戦略で、現地の大手通信業者と差別化を図り、高採算なビジネスである点が強み。需要と収益の伸びが期待できる地域に特化した事業展開を徹底している。提供域内全域に通信設備を敷設し、多くの顧客の多様なニーズを獲得する従来の通信事業モデルとは一線を画す。一方で同社が顧客とするCATV事業者を取りまく環境は厳しい。動画配信サービスの拡大にともないテレビの視聴時間は減少傾向で、各国のCATV事業者はインターネットサービスプロバイダ事業へと収益源の移行を試みている。同時に通信事業者も家庭用インターネット接続サービスに積極的に取り組んでおり、競争の激化が懸念材料である。

KPI

2020年5月にフィリピンとアジア諸国を結ぶ海底ケーブルの使用権を取得、商用提供を開始したことから、海外通信事業の売上高はKPIといえる。また5G専用の周波数帯のあらたな割当てがあったことから、フィリピン国内通信事業の売上高もKPIとなりうる。以下どちらも2021年3月期の数値である。
海外通信事業 売上高:4,259百万円(前期比+234.9%)
フィリピン国内通信事業 売上高:837百万円(前期比-3.2%)

2021年3月期 決算説明会資料

2021年3月期 決算説明会資料

業績

売上高・経常利益ともに安定的な成長を継続しており、2017年3月期から2021年3月期までの5年間で売上高は2.2倍、経常利益は4.2倍となった。自己資本比率も17.4%から45.1%へと2.5倍に成長。営業CFについても安定してプラスで推移している。