【上場廃止】2398 ツクイホールディングスの業績について考察してみた

【上場廃止】2398 ツクイホールディングスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1969年6月に津久井土木株式会社として、創業者である津久井督六氏が横浜市港南区で創業。当初は建設会社としてビジネス展開を行っていたが、1983年3月には福祉事業部を新設し、現在のビジネス領域である福祉関連分野で訪問入浴から事業を開始。在宅介護事業などを中心に全国展開を進め、2000年4月には介護保険制度がスタートするなかで業容を拡大し、2004年4月には店頭登録、同年12月にはジャスダック証券取引所に株式を上場。2011年3月には東証第二部、2012年3月には東証第一部に指定替えとなっている。2020年10月持株会社体制移行に伴い株式会社ツクイホールディングスに商号変更のうえ、会社分割し事業部門を株式会社ツクイに承継。2021年2月にMBKパートナーズによるTOBが行われ、筆頭株主となっている。デイサービスを主力に介護事業全般を展開する介護大手2022年4月に上場廃止

株主構成

会社からの開示情報として確認できる株主構成は、四半期報告書で2020年9月末時点が最新で、その時点の筆頭株主は、創業一族の資産管理会社である株式会社津久井企画で保有比率は25.58%。そのほか、第4位株主としてツクイ従業員持株会が2.78%、第9位株主として株式会社横浜銀行が1.44%を保有し、その他は国内の信託銀行等の信託口が中心であった。なお、2021年3月24日をもって終了したMBKP Life合同会社によるTOBの結果、64.07%を保有する筆頭株主となったことが開示されている。

取締役会

2020年10月1日付けのリリースによると同社の取締役は8名(社内4名、社外4名)、うち監査等委員4名(社内1名、社外3名)、監査等委員会設置会社である。プロパーと言える社内役員の高畠毅がCOOを務める。社外取締役には、公認会計士や弁護士資格を有する人材や株式会社野村総合研究所にてヘルスケア関連のコンサルティング業務を担った経験を有する山田謙次氏が登用されている。なお、代表取締役社長CEOである津久井宏氏及び代表取締役社長の髙橋靖宏氏は2021年6月に退任し、高畠毅氏が代表取締役社長へ就任している

代表取締役の経歴

代表取締役社長の高畠毅氏は1972年8月生まれ。1997年に同社へ入社し、有料老人ホーム第二推進本部長や執行役員経営戦略推進本部長などを経て、2021年6月より現職を務める。

報告セグメント

第3期(2021年10月1日から2022年3月31日まで)の決算報告書内の損益計算書によると、売上高は6,872百万円、営業利益は400百万円であった。

第3期 決算報告書

事業モデル

同社はツクイグループ企業理念において、ミッションを「超高齢社会の課題に向き合い人生100年幸福に生きる時代を創る」を掲げており、介護を通じて安心した長生き社会への課題に向き合うことを目指している。
創業者である津久井督六氏が体験した介護の大変さを家族だけで負担するのではなく、広く社会で助け合うため、同社の事業の主軸である「デイサービス事業」(介護保険法に規定する通所介護サービス)を中心に、様々な介護サービスを提供している。「デイサービス事業」では、自宅での介護を基本とする一方、「住まい事業」では、中核都市を中心に介護保険で規定される「特定施設入居者生活介護」(いわゆる介護付有料老人ホーム)を手掛けるほか、「在宅事業」では訪問介護を行うサービス提供など、介護を必要とする高齢者各人の希望に応じたサービスを提供できる包括的なサービス展開を行う
また、「人材事業」や「リース事業」では、介護にまつわる人材や機器の供給など、主要事業の周辺サービスを手掛ける。
高齢化社会の進展に伴い、社会環境や介護に対する人々の意識も変化してきている。さらに新型コロナウイルス感染症拡大により人々の生活も大きく変化した。一方で、財政上の見通しから介護保険制度は介護事業者にとって今後も厳しい改定が予想されるとともに、介護人材不足への対策も急務となっている。

競合他社

主力事業のデイサービス分野では9792ニチイ学館(2020年3月期売上高2,979億円、2020年11月に上場廃止)が最大手、同社は二番手。なお、ニチイ学館はベインキャピタルとの共同でMBOを行い上場廃止済。
また、有料老人ホームを中心とする「住まい事業」では、9783ベネッセホールディングス(直近決算期売上高4,319億円)傘下のベネッセスタイルケアが最大手であるほか、8630SOMPOホールディングス(直近決算期売上高4兆1,674億円)傘下のSOMPOケアが競合先。このほかにも、様々な規模感の非上場の競合が存在。特に、東京・神奈川県など首都圏では大手を含めた各社間での競争が激しくなっているのが現状である

連結の範囲

2022年8月時点では、同社、子会社6社及び関連会社3社から構成されている

強み・弱み

同社の強みは通所介護サービスをはじめとした介護にまつわる複数のサービスを総合的に手掛けている点にある。全国47都道府県すべてに事業所を持ち、10万人を超える利用者を抱えている。メインとする事業領域を介護事業に定めながらも、周辺ビジネスへ積極的に拡大している点は大きな強みである。複合的なサービス展開により、従業員へ様々なキャリアパスを提示できることや、上場大手としての安心感も人材確保の観点から強みと言える。また、介護報酬改定により頻繁に変更される点数加算体制に対し、柔軟に対応可能な事業基盤を構築していることは強みである。今のところ対応できているが、今後一層の引き下げ圧力が高まる介護報酬改定への対応は恒常的な課題であり懸念点ともいえる。また、ワクチン接種は進むものの、新型コロナウイルスに対して脆弱な高齢者のサービス利用控えも引き続き予断を許さない。

KPI

HP等に具体的な開示はないが、デイサービス事業所の拠点数や月間利用者数などがKPIと想定される。

業績

売上高は右肩上がりの増収を続けている一方で、3年ごとの介護報酬改定の影響もあり、営業利益は過去10年ほど、約30から50億円のレンジで変動がある。上場廃止前である2021年3月期の業績は、売上高93,249百万円(前年比+2,053百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益2,640百万円(同+675百万円)と増収増益である。ただ同期は、主力の「デイサービス事業」において、新型コロナウイルス感染症支援の一環として臨時的に導入されたデイサービス2区分上位の時間区分での介護報酬適用による顧客単価の引き上げによる影響が見られた点は特殊要因であるといえる。恒常的に営業CFはプラス、投資CFはマイナスでFCFもプラスで維持している。自己資本費比率は30%前後で推移。
なお、吸収合併の影響や決算期の変更等もあり単純比較はできないが、第3期(2021年10月1日から2022年3月31日)までの売上高は6,872百万円、当期純損失は185百万円であった。

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