1890 東洋建設の業績について考察してみた

1890 東洋建設の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1929年7月兵庫県西宮市鳴尾地先を埋立て、工業港を建設することを目的として、南満州鉄道と山下汽船の共同出資で阪神築港株式会社を設立。1961年10月大証2部に上場、翌年には東証2部に上場。1964年東証・大証1部に市場変更。また、同年に東洋建設株式会社に商号変更。1995年阪神淡路大震災の復興工事に従事。2002年には前田建設工業株式会社と業務提携。2011年東日本大震災の復興工事に従事。現在は全国の主要都市とアジアを中心とする海外に支店を広げている。国内土木・建築事業、海外建設・不動産事業を営む

株主構成

有価証券報告書によると2020年9月末時点の筆頭株主は、業務提携先である前田建設工業株式会社で保有比率は20.19%。ついで日本マスタートラスト信託銀行株式会社が5.13%、株式会社日本カストディ銀行が5.06%と続く。以下は5%未満の保有で、国内外の信託銀行や銀行等の信託口などが中心の株主構成である。外国人株式保有比率は20%以上30%未満。

取締役会

2021年6月開催予定の定時株主総会終了後の役員構成は次の通り。取締役は7名(社内5名、社外2名)、監査役は3名(社内2名、社外1名)、監査役会設置会社。取締役建築事業本部管掌の川述正和氏は業務提携先であり大株主の前田建設工業からの出向であるが、それ以外の取締役は全員東洋建設の生え抜き社員である。なお、現在代表取締役執行役員副社長の森山越郎氏と、取締役の井上卓郎氏が退任予定。

代表取締役の経歴

引続き代表取締役執行役員社長を続投する予定の武澤恭司氏は1951年8月生まれ。慶応大学法学部を卒業後、1975年4月に東洋建設入社。2003年4月関東建築支店長就任。2006年6月執行役員に就任。2008年6月に取締役建築本部副本部長、2010年4月常務執行役員建築事業本部長に就任。2014年4月代表取締役社長執行役員社長に就任し、現在に至る。
現在取締役経営管理本部長兼CSR担当(専務執行役員)の藪下貴弘氏は1958年1月生まれで、株主総会を経て、代表取締役専務執行役員へ着任予定。1982年4月同社入社、子会社の株式会社オリエント・エコロジーへの出向で社長経験を有す。
なお、退任予定の代表取締役森山越郎氏は、1952年6月生まれ。1976年4月同社に入社した生え抜き社員。

報告セグメント

「国内土木事業」、「国内建築事業」、「海外建築事業」の3報告セグメントに大別され、2021年3月期の売上高172,976百万円の構成比は国内土木事業62.7%、国内建築事業28.0%、海外建築事業8.7%である。粗利は、国内土木事業76.7%、国内建築事業19.8%、海外建築事業1%未満であった。(兼業事業による相殺分などを除く。)

事業モデル

国内外の海洋土木を中心とした工事の受注により収益を上げている。地方自治体や官公庁案件が多い。また、国内の物流施設の工事案件も豊富で、大型物件の建築を手掛けている。土木技術、環境技術、建築技術を有し、技術研究所での研究、PFI事業なども手掛ける。中期経営計画では、ストック収入につながるReReC(Renewal/Renovation/Conversion)へ注力することも掲げている。官庁、医療福祉、環境施設、宿泊施設、事務所、住宅、生産施設、物流施設を重点8分野とし、受注量の確保に努めている。海外事業はフィリピンを最重要拠点国とし、ケニア、インドネシア、インドシナへ展開する。フィリピンの工場・倉庫建設部門では日系1位の売上高で、スズキフィリピンの倉庫増築や、太平洋セメントのコンベア建設、P&G倉庫などの実績を有す。

2021年3月期 決算短信 補足資料 P.4

競合他社

1893五洋建設(2021年3月期売上高471,058百万円)6269三井海洋開発(2020年12月期売上高309,925百万円)、等があげられる。いずれも海洋土木や海洋掘削に強みのある会社で、売上高や時価総額では同社を上回る水準。

連結の範囲

株式会社トマック、日下部建設株式会社、CCT CONSTRUCTORS CORPORATION、東建サービス株式会社、東建テクノ株式会社、株式会社オリエント・エコロジー、とうけん不動産株式会社、東建商事株式会社の8社が連結子会社に該当する。

強み・弱み

海洋土木工事の技術力の高さが強み。また、それに伴い、官公庁等がメイン顧客であることも強みである。大型の建築物では物流拠点の建築実績を豊富に有す。海洋土木工事は、脱炭素を掲げる政府の後押しもあり、洋上風力発電を成長ドライバーとしており、今後の業績拡大に寄与する可能性がある
官公庁の顧客が多く、政策や予算の方針に業績が影響を受ける点は懸念点である。また、中計で収益性の向上が指摘されるように、海外事業において収益性を高めることや、安定した実績を積み上げていくことが課題と見られる。

KPI

中期経営計画では、2029年7月の創立100周年に向けた、長期計画の1st Stepとして2020-2022年度の3か年計画を開示している。営業利益、営業利益率、純資産額、自己資本比率、ROEの目標値を示しておりKPIとなる。加えて、下記のような数値はKPIとなり得る。
国内工事受注残高
新規大型工事案件数
海外工事受注残高数
洋上風力発電技術進捗率

中期経営計画<2020-2022>

業績

過去10年程度の業績推移をみると、2018年3月期1,726億円までは売上高の水準を徐々に切り上げてきたが、直近3期は売上高は1,750億円を上抜けられずにいる。営業利益は、2018年3月期108億円と100億円を突破するも、その後2期連続で100億円を下回ったが、2021年3月期に142億円で最高益を更新している。新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、企業の建設需要が減少し、売上高は伸び悩んだが、採算の改善により粗利を確保し増益となった。自己資本比率は40%台半ばで推移する。今後は洋上風力発電を成長ドライバーと位置づけ、研究開発、投資を促進していく計画を発表しており、脱炭素・クリーンエネルギーを掲げる政府の国策に沿った経営戦略を取っていく