9629 ピー・シー・エーの業績について考察してみた

9629 ピー・シー・エーの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

ピー・シー・エーの事業概要

同社は1980年8月に東京都渋谷区にて公認会計士の融資で設立された(資本金400万円)。1988年4月には株式会社ケーイーシーを同社ソフトの導入指導及び広告代理店業を目的として資本金1千万円で設立。2000年2月には東証二部上場を果たす。2011年5月にはエル・エス・アイジャパン株式会社の就業管理システム部門の譲渡を受け、当該事業委託を目的として資本金5千万円(うち出資比率8割)でクロノス株式会社を設立。2014年12月には東証第一部指定。2019年3月にはビッグデータなどに関連するソフトウェアの開発販売機能のためにKeepdata株式会社を子会社化。 また、同社グループは2020年3月期末時点では同社、上記子会社3社(クロノス株式会社、Keedata株式会社及び株式会社ケーイーシー)で構成されていたが、2020年10月26日付で株式会社ドリームホップを100%買収してメンタルヘルスケア領域への参入を企図している。
同社の株式を5%以上保有する株主は2社おり、株式会社Kawashimaが41.12%、クレディ・スイス証券株式会社が7.09%である。株式会社Kawashimaはピー・シー・エーの創業者である故・川島正夫氏の妻である川島セツ子氏が代表取締役である資産管理会社である。このことから、経営者が交代した現在でも創業者一家の影響が一定以上存在する可能性は高い。同社の代表取締役社長は佐藤文昭氏であり、中央大学法学部を卒業後近畿日本ツーリスト株式会社に入社後2003年に同社に中途入社し、管理本部にてキャリアを積み出世をした人物である模様。同氏のみならず役員は株式を少数所有していることに特徴がある。
ピー・シー・エーグループは、ピー・シー・エー株式会社、上記の通りグループ会社4社(ケーイーシー株式会社、クロノス株式会社、Keepdata株式会社)からなる。単一セグメントではあるものの、大きく分類すると製品(オンプレミス)、商品、保守運用、ソリューション、及びクラウドに分けられる。2021年3月期第2四半期においては、製品:12.2%、商品:2.9%、ソリューション:22.6%、保守:29.7%、クラウド32.6%の売上割合であり、ストック収入(保守+クラウド)で62.3%を占めている点が特徴的である。尚、2020年3月期末におけるストック収入は48%であり、増加傾向が見受けられる。
同社の競争優位性として挙げられるのは2点ある。それは製品周辺サービスの強化、及び他社に先駆けてクラウドの販売開始を行ったことによる強みである。前者の具体例としてはAPIにより他システムとの連携が安価・短期間で可能な点や、ピー・シー・エー製品の前後の工程を補完する他社ソリューションとの連携、子会社勤怠製品と一体提案すること等が挙げられる。また、後者については、2008年から10年以上クラウド製品を範囲してきた運営のノウハウやオンプレミスと同数のサービスラインナップ、他の業務システムと連携するクラウドWeb-APIの整備などが挙げられる。また、代理店販売を中心に全国に販売網がある点も強みではあるものの、昨今業務用アプリケーション市場ではネット販売が拡大している為、ネット販売も新たな販売網として位置付けて拡大を目指している。12月10日、11日にはPCAフェスというオンライン展示会が開けれるが、本イベントはネット販売促進の施策の一環だろう。同イベントではオンライン製品展示のみならず、チャットでの質疑応答やデモ予約などが可能であり、ネット上での同社の営業スタイルを表す場になると考えられる。また、当日は無料、かつ落合陽一氏と小室淑恵氏をゲストで迎えることもあり参加の動機付け及びターゲット層の拡大の目論みが見受けられる。

財務会計・基幹業務支援ソフト関連事業

同社は上記の通り財務会計・基幹業務支援ソフト関連製品を製品、商品、保守運営、ソリューション、クラウドの5つの大分類の元、開発販売を行っている。同社が提供する製品の例としては、会計ソフトであるPCA会計、給与・人事・就業管理ソフトであるPCA給与やクロノスPerformance、販売管理・仕入・在庫管理ソフトであるPCA商魂DX/商管DX、税務計算ソフトであるPCA固定資産やPCA法定調書DXが挙げられる。
上記の製品それぞれに就き、クラウド(サブスク)、及びオンプレミス(サブスク及びパッケージ両方可)が選択できるが、同社として注力しているのはクラウド製品である。その背景にある理由の1つにはオンプレミス製品市場が停滞傾向にあることがある。市場が成熟しつつあり、機能差による差別化が困難な状態であり、新製品を投入しても顧客獲得に繋がらないのが同業界の現状である。一方、同じ機能を有するクラウド製品は社内サーバーが不要である点や常に最新バージョンの利用が可能でありメンテナンスが不要な点、導入・維持負担の軽減など導入側の利点が多いこともあり、同業界において急伸している領域である。2021年3月期第二四半期末においては、クラウドを活用している法人数は15,262であり、これは半年前の2020年3月期末における14,388から874法人増えている。売上ベースでみた場合にも、2020年3月期第2四半期の1,568百万円から24.3%増加して1,949百万円を記録したことからも同社が注力し一定の成果を残していると考えられる。競合他社であるSaaSビジネスでクラウド製品に強みを持つfreee株式会社の2021年6月期第1四半期売上は前年同期比+49.2%の2,225百万円(有料課金ユーザー企業数:233,341)、マネーフォワード株式会社では2020年11月期第3四半期(6月~8月)のビジネス領域売上は前年同期間の+61%の1,862百万円を記録していることを鑑みると業界全体でのクラウド製品の伸長傾向が明らかであろう。また、他社と比較した場合にも現状でピー・シー・エーのクラウド製品も同業態者に引きをとらない売上を上げているといえるだろう。一方、成長率の観点では現状上記競合2社に劣ることは事実である。

財務状況と経営指標

2021年3月期の上期(4月~9月)でのROEは4.2%である。昨年度の上期と下期の売上及び利益がほぼ同程度(上期7,169百万円:下期7,096百万円)であることから同社の業績の季節性変動が少ないことが推察される為、株価の大幅な変動がない限りROEは通期でみると上期の約2倍の8%付近に帰着すると考えられる。上場企業に求められる水準である8%付近ではあるものの、2020年3月期末でのROEが13.3%だったことを考慮すると悪化傾向が見受けられる。株価が大きく変動していない中で大きな影響を与えているのがトップラインの売上の減少に伴う利益の減少である。2020年3月期上期売上は7,169百万円だったが今期上期売上は▲16.6%の5980百万円である。上述の通りクラウドは前年上期比+24.3%(1,568百万円→1,949百万円)で増加したものの、オンプレミス製品が▲61%(1,842百万円→727百万円)と大きく減少したことが大きな影響を与えている。これは、コロナ禍において対面営業が叶わなかったこともあり、オンプレミス製品からクラウドへの移行が加速したことが要因であると思料される。また、売上以外では販管費が156百万円程度増加(2,571百万円→2,727百万円)していることもROEの減少に寄与していると考えられる。一方この販管費の増加の主な理由は同社の人事既定の改正により賞与の時期が2か月ずれたことに由来する会計上のコスト増加(110百万円相当)である為、懸念事項には当たらないと考えていいだろう。
2021年第2四半期時点での流動比率は267.4%であり、最近5年間で200%~300%程度を保持していることから高い安全性があると考えられる(一般的に200%以上が望ましい)。2020年3月期末での現金及び現金同等物の残高は10,063百万円と潤沢である点からも安全性が覗える(前年比+2,384百万円 )。2016年3月期からのC/Sを見ると2018年度を除いて(定期預金の払戻と固定資産の売却により投資CFがプラスだった。)、営業CFが毎年プラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであり、フリーCF(営業CF+投資CF)は大きくプラスである。このことから営業で稼いだ資金を基に堅実な投資を行っていることがわかる。

ピー・シー・エーのカタリスト

ピー・シー・エーのカタリストと考えられるのは、主に2点あると考えられる。

クラウド製品の成長。

これは上記の通りオンプレミス製品市場が停滞する中で今後伸びていくことが間違いないクラウド製品市場において如何に他社と差別化をして新規顧客を獲得するか、またオンプレミス製品を使用している既存顧客をいかに離脱させず同社のクラウド製品ユーザーに転換させていくかが論点になるであろう。その為には、近年多発する自然災害や今後来るかもしれないコロナの第n波でのテレワーク特需などのきっかけに対して、柔軟かつスピード感のある対応ができるかが1つの鍵になると筆者は思料する。

余剰な現金留保を効率的に投資に合わせるか否か。

上記の通り2020年3月時点での現金及び現金同等物の残高は10,063百万円あるが、これは2016年3月時点での残高の2,497百万円の約4倍である。2019年3月にはKeepdata株式会社、2020年10月には株式会社ドリームホップへの投資をしていることから企業投資を拡大する方針を取っていく可能性はあるものの、それぞれの投資額は44百万、108百万円であり留保額と比較すると少額投資であることは明らかである。ベンチャー企業とは一概に比較はできないものの、Freee及びマネーフォワードでは事業の確立・拡大に向け積極戦略をとっているおり、営業CF及び投資CFともにマイナスではあるものの時価総額はそれぞれ438,730百万円、241,857百万円とPCAの36,575百万円を大きく上回っている。同社が他社との差別化を図り市場から評価されるためにも、投資の拡大及びその一つ一つの成功を収めることが出来るか否かが論点の1つになるだろう。その足掛けとなりうる動きとして株式会社ドリームホップの子会社化によるメンタルヘルス領域への本格参入に成功するかは注目に値すると考えられる。