3612 ワールドの業績について考察してみた

3612 ワールドの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1959年1月株式会社ワールドとして、故木口衛氏と畑崎廣敏氏が共同で兵庫県神戸市に創業。創業時からしばらくは婦人服衣料の卸売事業を中心としていたが、徐々にトータルコーディネイトブランドを開発しながら、総合アパレルメーカーとして業容を拡大させてきた。1993年11月には大証第二、1998年12月に東証第二部へ上場し、1999年9月には東証第一部及び大証第一部に指定替え。2005年11月には長期的、持続的な企業価値の最大化を図ることを目的に、MBO(経営陣による自社株式取得)を行い、上場廃止。その後、2018年9月に東証一部に再上場。

株主構成

有価証券報告書によると、2020年3月末時点の筆頭株主は創業家で、旧代表取締役社長などを歴任した寺井秀蔵氏が7.0%を保有。第2位(5.3%)及び第3位(4.8%)はそれぞれ日本マスタートラスト信託銀行(信託口)及び日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口)が占めるが、第4位以下は創業家や旧経営陣の個人及び資産管理会社が名を連ねる。第9位株主には創業家で旧代表取締役会長であった畑崎重雄氏が2.6%保有する。

取締役会

取締役は9名(社内4名、社外5名)、社内1名と社外2名は監査等委員。監査等委員会設置会社である。代表権を有するのは会長の上山健二氏と社長執行役員である鈴木伸輝氏である。そのほか、創業家出身の畑崎充義氏、長くワールドに勤務する高月氏が社内取締役。社外取締役は一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻長の一條和生氏のほか、実業界出身者や弁護士が務める。

代表取締役の経歴

現代表取締役社長執行役員である鈴木伸輝氏は1974年生まれ。京都大学大学院法学研究科修士課程終了後、1999年にアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)に入社した。その後、企業再生支援機構、ボストンコンサルティング・グループなどを経て、2012年9月にワールドに入社。グループ専務執行役員(グループ戦略統括兼グループ企画本部管掌兼D-GROWTH戦略本部管掌)などの役職を経て、2020年6月に現職に就任した。鈴木氏の社長就任に伴い、旧住友銀行出身で長崎屋などの再建の手腕を買われて入社した上山健二氏は代表取締役会長に就任している。

報告セグメント

報告セグメントは前連結会計年度より、「ブランド事業」、「デジタル事業」、「プラットフォーム事業」及び「共通部門」の4報告セグメントに大別され、2021年3月期第3四半期の売上高1,328億48百万円の構成比は、「ブランド事業」56.4%、「デジタル事業」9.3%、「プラットフォーム事業」31.8%、「共通部門」2.5%である。新型コロナウィルス感染拡大に伴う店舗の臨時休業などの影響から、軒並み各報告セグメントでは減収となっている

事業モデル

創業以来60年前後の長い歴史のなかで、多くのブランドを世に送り出してきた。「ブランド事業」が主力事業で、ターゲットは婦人服や子供服、紳士服など多岐にわたり、服飾雑貨・生活雑貨のほか、ジュエリーなども手掛ける。店舗での対面販売を行う他、ブランドなどのバリューアップを行う投資活動も同事業に含まれる。
「デジタル事業」は、主にインターネットを介して通販サイト経由での販売戦略を担う。デジタル技術を梃子にした販売チャネルの拡充を重点投資領域と位置付け注力している。
「プラットフォーム事業」は、ブランド運営や衣料の製造販売などのビジネスモデルそのものを外部に拡販するユニークな事業。製造面での生産性改善について指導・助言を行うほか、今まで多くの店舗開発を行ってきた経験を活かし、店舗デザインの提供活動なども行う。
「共通部門」は各事業間の調整などを行う事業持株会社としての位置づけである。
ファッション業界は、国境を超えて、ハイブランド、SPA有名ブランド、ファストファッションなど多種多様な企業が参入し、変化も著しい競争環境にある。加えて、新型コロナウイルスの営業により店舗での販売が苦戦し、ECへのシフトが各社進む。 「イッセイミヤケ」のブランド休止やレナウンの破綻など老舗アパレルメーカーの苦戦も相次ぐ。

競合他社

8016オンワードHLD(2021年2月期売上高1,743億23百万円)、3608TSIHLD(2021年2月期売上高1,340億78百万円)、8011三陽商会(2021年2月期売上高379億39百万円)などが競合となる。同社もコロナ禍で厳しい経営環境であるが、競合先各社も同様に大きな減収となっている

連結の範囲

同社グループは、2020年6月時点で同社及び連結子会社47社、持分法適用関連会社6社から構成される。その後、2020年7月に連結子会社のうち、Fashionwalker全株式を売却したため、連結子会社から除外されている。

強み・弱み

かつてはビジネススクールの題材としても注目されたサプライチェーンが同社の強み。顧客の需要予測に基づく短いリードタイムで店舗に商品を供給できる仕組みは2000年代に注目された。店舗販売を担う販売員などから顧客動向をヒアリングし、商品に改良を重ね、速やかに店頭に商品を並べる手法で、現在もそれらの経験値が「プラットフォーム事業」の一つとして生かされている。一方、これらの強みが業界で普遍化し同社の競争優位性が薄れ、対面での店舗販売に依存したビジネスモデルの転換が迫られていることは懸念点である。同社もeコマースへと舵を切っているものの、連結取扱高に占めるEC比率は22%にとどまっている。また、世界中のアパレル企業へ影響を及ぼしているウイグル問題に代表されるように、サプライチェーンにおけるCSRの高まりはリスクである。

KPI

経営計画で示された連結P/L計画の前提とされている下記の項目をKPIとして挙げる。「EC売上伸び率」は競合他社との比較をするうえでも参考となる。既存店売上高の回復状況、店舗戦略の見直し状況などは、コロナ禍において厳しい環境である。
「既存店売上伸び率」 95.0% (2020年下期計画、2020年上期実績は56.8%)
②「店舗増減数(出店数)」 123店 (同、2020年上期実績は45店)
③「店舗増減数(退店数)」 414店 (同、2020年上期実績は79店)
「EC売上伸び率」 173.0% (同、2020年上期実績は138.8%)

2021年3月期 決算説明会資料

業績

2017年3月期から2019年3月期までは、売上収益はほぼ横ばいながら、営業利益は120億円から148億円まで1.2倍へ伸長していた。2020年3月期・2021年3月期は2期連続で減収減益が続き、2021年3月期の営業損益は▲216億円と大幅赤字。店頭販売を主力とするアパレルメーカーとして、コロナ禍での緊急事態宣言などに基づく外出自粛の長期化が大きく業績に打撃を与えている。希望退職の実施(350名超)や店舗削減(327店舗、2020年度見込)などによる固定費削減を行っている。営業CFはプラス、投資CFはマイナスを継続。2021年3月期の親会社所有者帰属持分比率は32.0%。