2678 アスクルの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1993年3月、プラス株式会社アスクル事業部にてオフィス用品の中小事業所向けカタログ通信販売を目的として新規に事業開始。また同年同月休眠会社だったプラス工業株式会社をリンクス株式会社に商号変更。1997年2月、リンクス株式会社をアスクル株式会社に商号変更、同年3月よりインターネットによる受注を開始。同年5月、プラス株式会社よりアスクル事業を譲り受け分社化。積極的な物流体制の強化によりセンターを全国区に物流センターを配備し、早くから当翌日配送を実現してきた。2000年11月にJASDAQ上場、2004年4月東証一部に変更。2012年5月ヤフー株式会社(現Zホールディングス)との業務資本提携、第三者割当増資を実施。主としてOA・PC用品や事務用品のeコマース事業を展開しており、BtoCでは「LOHACO」を運営

株主構成

有価証券報告書によると2020年11月20日時点の筆頭株主は、親会社のZホールディングス株式会社で保有割合45.02%。次いでプラス株式会社が10.82%と続き、以降は保有割合5%以下で国内信託銀行、海外金融機関、同社創業社長であった岩田彰一郎氏、プラス株式会社の代表取締役社長で同社取締役の今泉忠久氏および今泉氏の親族とみられる個人名が並ぶ。また2021年3月17日更新のコーポレート・ガバナンス報告書によると、外国人株式保有比率は10 %以上20%未満である。

取締役会

取締役は9名(社内4名、社外5名)、監査役は3名(社内1名、社外2名)、監査役会設置会社である。全員中途入社で、社内取締役1名と社外取締役1名は親会社のZホールディングス出身

代表取締役の経歴

代表取締役社長CEOの吉岡晃氏は1968年1月生まれ。青山学院大学卒業後、1992年4月株式会社西洋環境開発入社。2001年1月に同社入社しメディカル&ケアおよびBtoC部門の要職を歴任後、2019年8月代表取締役社長CEOに就任した。尚、前代表取締役で創業社長であった岩田彰一郎氏は、当時の親会社ヤフーへの個人向けネット通販事業譲渡に反対し、2019年7月の株主総会にて再任が否決され、退任となった。

報告セグメント

「eコマース事業」と「ロジスティクス事業」の2報告セグメント、および報告セグメントに含まれない製造事業などの「その他」で構成される。2021年5月期第3四半期累計期間における売上高構成はeコマース事業が全体の約98%を占め、営業利益に関してもロジスティクス事業が赤字のため、eコマース事業にて利益のほぼ全額を計上している。なお、LOHACOを含むBtoC事業は永らく赤字である。

2021年5月期第3四半期 決算説明資料

事業モデル

同社主力のeコマース事業は、中小事業所から中堅大企業を顧客とするBtoB事業と、個人消費者を顧客とするBtoC事業に大別される。カテゴリ別では生活用品やOA・PC用品、事務用品の売上比率が高く、購買データはパートナー企業に開放し商品開発やマーケティングにも還元される。
BtoB事業は仕事場の必需品となる消耗品など、オリジナル商品(売上高の約32%)を含めた幅広いアイテムを提供する。中小事業所向けのオフィス用品を中心とした「アスクル」、中堅企業や大企業向けの購買一括ソリューション「SOLOEL ARENA」、間接材・サービスのワンストップ購買代行「APMRO」などの販売チャネルを持ち、カタログ、ウェブで販売する。また、エージェントと呼ぶ販売店を置き、顧客新規開拓および代金回収を委任している。
BtoC事業は「LOHACO」、「チャーム」を展開し、ウェブで暮らしの必需品を販売する。LOHACOは広告収入も収益源となる。
BtoB事業で8か所とBtoC事業で2か所の物流センターを配備し、当日または翌日中に配送できる体制を構築。配送は効率良く配送できる都市部を中心に約7割を自社配送し、残りはその他キャリアと連携。
コロナ禍の影響により多くの業種において需要低迷が続く中、eコマース市場は人との接触を減らす購買活動として需要は増加傾向にある。一方で配送ドライバー不足等に起因する配送運賃の高止まりや同業他社とのサービス品質競争が続いている。

新規投資家向け資料

競合他社

オフィス用品の通販を行う競合として、7984コクヨ(2020年12月期売上高300,644百万円)3064MonotaRO(同157,337百万円)4768大塚商会(2020年12月期売上高836,323百万円)などが挙げられる。

連結の範囲

連結子会社は10社が該当し、eコマース事業とロジスティクス事業を行うASKUL LOGIST株式会社および株式会社エコ配、eコマース事業を行うビジネスマート株式会社およびソロエル株式会社などで構成される。

強み・弱み

差別化と収益化を両立するオリジナル商品を含めた豊富な取扱商品、注文翌日配送を可能にする高効率な物流・配送システムエージェントモデルと呼ぶ新規開拓、代金回収を委託するとともに顧客毎のきめ細かな個別対応を可能にする仕組みなどが強み。BtoC事業はPayPayモールなどZホールディングスのリソース活用も出来る。しかし競争の激しい業界のため品質・サービスが陳腐化しないかという点と、カタログ通販が成長を牽引してきたが、今後ウェブへの更なる対応が課題になると考えられる。

KPI

①購入顧客数(BtoB)前年同期比(2021年5月期第2四半期104.8%)
②顧客別購入単価(BtoB)前年同期比(2021年5月期第2四半期98.7%)
③ロングテール商品売上前年同期比(2021年5月期第3四半期120%)
④オリジナル商品数(2021年5月期第3四半期9,996品)

業績

売上高は増収基調で2020年5月期は5年前から1.27倍に成長。経常利益は物流施設の火災やいわゆる宅配クライシスの影響を受け2018年、2019年5月期は低迷するも、自社配送の拡大や売上拡大に伴う固定比率の低下から2020年5月期は以前の水準まで回復している。尚、火災発生後は物流施設の譲渡および賃貸借への切り替えを進めている。自己資本比率は30%前後、フリーCFはプラスを維持している。