2158 FRONTEOの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2003年8月に米国製フォレンジック(法的証拠の調査や情報解析)ツールの輸入販売を事業目的とし株式会社Universal Business Incubatorsとして創業。2004年株式会社UBICへ商号変更。その後順調に業績を拡大し、2007年6月東証マザーズへ上場。2012年に後の「KIBIT」となる自社開発の人工知能ツールを発表。2013年5月米国ナスダック市場へ上場も2020年2月に上場廃止。2015年11月に「KIBIT」を発表。2016年株式会社FRONTEOへ商号変更。独自の人工知能(AI)エンジン「KIBIT(キビット)」と「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」を柱とする高度な情報解析技術を駆使し、創薬支援や診断支援、金融・人事・営業支援などを行う。

株主構成

2020年9月末日の有価証券報告書によると、筆頭株主は創業者で代表取締役社長最高経営責任者の守本正宏氏で18.1%を保有。次いで業務提携先である株式会社フォーカスシステムズが7.8%、取締役副社長の池上成朝氏が7.1%を保有するが、他の上位株主はいずれも1%未満の保有である。外国人株式保有比率10%未満。

取締役会構成

取締役は7名(社内5名、社外2名)、監査役は3名(全員社外)、監査役会設置会社である。取締役副社長最高執行責任者の池上成朝氏は創業時からのメンバーである。

代表取締役の経歴

代表取締役社長最高経営責任者で創業者の守本正宏氏は1966年4月大阪府生まれ。防衛大学を卒業後、海上自衛隊に勤務。退官後、アプライドマテリアルズジャパン株式会社に入社し、2003年8月に同社の前身である株式会社Universal Business Incubatorsを創業した。

報告セグメント

「AIソリューション事業」、「リーガルテックAI事業」の2報告セグメントに大別される。2021年3月期第3四半期の売上高7,562百万円の内、AIソリューション事業が1,443百万円で19.1%を占め、リーガルテックAI事業が6,118百万円で80.9%を占める。AIソリューション事業は2019年3月期に初の通期営業黒字に転換したが、その後、両事業とも損益分岐点を超える売上高を維持できず赤字が続いた。2021年3月期第3四半期はかろうじて連結営業利益65百万円を確保した。
日本・アジア地域の売上高は50.7%、米国・欧州の売上高は49.3%であった。

2021年3月期 第2四半期決算説明会資料

事業モデル

リーガルテックAI事業はeディスカバリ(電子証拠開示制度)総合支援企業のアジアにおけるパイオニアとして、データの特定、保全、処理等をワンストップで提供する。ディスカバリは米国の民事訴訟における証拠開示制度である。訴訟における証拠となる電子データの保全やデータ処理、提出データ作成等を支援。また、フォレンジックサービス(情報漏洩や内部不正等のPC調査サービス)も提供しており第三者委員会への協力や、人口知能「KIBIT」を搭載したデジタルフォレンジックソフトウェア「Lit iView XAMINER」も販売する。AIを活用して効率的な文書確認による証拠発見を実現する「KIBIT Automator」を用いた高利益率の案件獲得も同時に進めている。同事業の売上高の9割以上を本サービスで稼いでおり、導入先企業からは月額の利用料によるストック収入が見込める。現在は顧客の意思決定が米国子会社へ移行していることに伴い、クロスボーダー案件の営業活動を米国子会社へシフトしている。
AIソリューション事業では独自の自然言語処理解析AIエンジン「KIBIT」や「Concept Enconder」によるメール監視、特許調査、論文探索、創薬研究の候補化合物の発見、営業、SNS解析など幅広い領域での支援システムを各業界のリーディングカンパニーに提供している。また、2020年10月には日本マイクロソフト社と認知症診断支援AIシステムなどで協業するとのリリースも出ている

2021年3月期 第2四半期決算説明会資料

競合他社

リーガルテックAI事業の分野では3788GMOグローバルサインホールディングスが挙げられる。GMOグローバルサインホールディングスは電子認証等の分野に強みがあるが、FRONTEOはその他のフォレンジック調査(デジタル鑑識)にも力を入れている

連結の範囲

連結子会社の数は7社。米国、韓国、台湾などにeディスカバリ関連事業を行う海外子会社を有する。

強み・弱み

KIBITを活用した情報解析支援を主に司法領域向けに提供するアジア圏のリーディングカンパニーとして豊富な実績を有することは強み。司法領域向けに情報解析支援を展開している事業者は他になく、同社の優位性は高い。人事や医療などの他分野への進出も進めている。2018年3月期までは順調に売上高を伸ばしてきたが、取扱件数の規模が小さく、茲許は大型案の遅延等を理由に成長が見られない。利益の安定性も低く、社内の経営・執行体制の不安を払拭しきれない

KPI

リーガルテックAI事業における米国子会社の案件受注数が主要なKPI。これは、eディスカバリによるクロスボーダーの大型案件の選定が日本ではなく米国で行われていることに起因している。

2021年3月期 第2四半期決算説明会資料

業績

2016年3月期から2020年3月期までの5期間を見ると、2018年3月期までは売上高は伸びていたが直近2期は減収が続く。営業利益を確保できる年とできない年の落差も大きく、売上高が足りないことを要因と説明しており事業の安定性に懸念が残る。2020年3月期は営業損失844百万円の赤字であったが、2021年3月期は営業利益200百万円の会社計画。営業CFは利益の水準によるところが大きく安定しない、投資CFは恒常的にマイナスである。自己資本比率は2021年第3四半期時点で33.4%であった。