5632 三菱製鋼の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1904年設立の東京スプリング製作所(のちに東京鋼材株式会社として法人化)、および1919年設立の三菱造船株式会社(現三菱重工業株式会社)長崎製鋼所(のちに独立、三菱製鋼株式会社に)が前身。1942年に合併し三菱製鋼株式会社となるも、1949年企業再建整備法により東京鋼材株式会社と長崎製鋼株式会社として再分割。東京鋼材株式会社は1950年1月東証に上場、1952年12月に商号を三菱鋼材株式会社に変更。長崎製鋼は1951年4月に東証上場、1953年6月に商号を三菱製鋼株式会社とした。1964年に両社は合併し、三菱製鋼株式会社となった。現在は東証一部に上場し、特殊鋼やばねの生産を行っている。借入コビナンツの財務制限に抵触しており、継続企業の前提に関する重要事象等が存在。

株主構成

有価証券報告書によると2020年9月末時点の筆頭株主は、三菱重工業株式会社で保有割合6.48%。国内銀行信託口が5.89%と続き、以降は保有割合5%以下で明治安田生命、三菱UFJ、三菱UFJ信託などの三菱系企業や、信託口が名を連ねる。尚、2020年12月22日受付の大量保有報告書によると、三井住友トラストAMの保有割合が5.07%になっている。また、2020年11月20日更新のコーポレート・ガバナンス報告書によると、外国人株式保有比率は20%以上30%未満である

取締役会

取締役は9名(社内7名、社外2名)、監査役は3名(社内1名、社外2名)、監査役会設置会社である。社内取締役は6名がプロパー、1名は三菱UFJ銀行出身者である

代表取締役の経歴

同社の代表取締役は2名。代表取締役 取締役社長の佐藤基行氏は1954年12月生まれ。慶應義塾大学工学部卒業後、1978年4月に同社入社。ばね事業部長を歴任後、2006年6月に取締役、2011年6月に常務取締役に就任、2015年6月より代表取締役 取締役社長を務める。代表取締役 常務取締役の永田裕之氏は1963年11月生まれ。一橋大学経済学部卒業後、1987年4月に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。同行にて執行役員等を歴任後、2017年6月に同社入社、代表取締役 常務取締役に就任した。

報告セグメント

「特殊鋼鋼材事業」、「ばね事業」、「素材系事業」、「機器装置事業」の4報告セグメントおよび報告セグメントに含まれない「その他の事業」に大別される。2021年3月期第3四半期の売上高65,157百万円の構成比は、特殊鋼鋼材およびばねがそれぞれ4割強、素材系、機器装置がそれぞれ1割弱だった。同期の営業利益は機器装置とその他以外は赤字で、特に特殊鋼鋼材の赤字幅が大きく、全体4,283百万円に対して、2,503百万円の営業損失だった。

事業モデル

特殊鋼鋼材事業は、室蘭およびインドネシアを所在地とする子会社に工場を持つ。主力は建設機械や産業機械向けばね事業は、主に自動車や産業機械に用いられるスタビライザーや板バネ、巻ばねなどを生産する。千葉に工場を持つほか、カナダ、アメリカ、メキシコ、ドイツ、中国、フィリピン、インドの海外子会社が生産設備を持つ。尚、北米生産についてはアメリカから撤退、カナダ、メキシコに移管する予定。素形材事業は、福島工場およびタイの海外子会社にて、自動車、航空、船舶、エネルギー、エレクトロニクスほか幅広い分野で使用される鋳・鍛造製品および粉末製品を製造する。機器装置事業は長崎の生産拠点にて鍛圧機械などを製造、国内外に納入している。
事業環境は、足許では持ち直しの動きが見られるものの、コロナ禍の影響により需要減少が継続している。

競合他社

特殊鋼メーカーとして、5486日立金属(2020年3月期売上収益881,402百万円)、5471大同特殊鋼(2020年3月期売上高490,421百万円)、5481山陽特殊製鋼(同262,452百万円)、5482愛知製鋼(同242,262百万円)などが挙げられる。

連結の範囲

連結子会社18社、持分法適用関連会社3社で、特殊鋼鋼材を製造する三菱製鋼室蘭特殊鋼株式会社、PT,JATIM TAMAN STEEL MFG.(インドネシア)などで構成される。

強み・弱み

特殊鋼鋼材は高い強度と耐久性が求められる建設機械のマーケットで約3割のシェアを持つ。ばね事業は、素材開発から生産加工まで一貫して対応できる国内唯一のメーカーで、顧客要求にタイムリーな製品が作れることが強み。一方で海外事業は子会社の固定資産に係る減損損失を実施するなど苦戦しており、北米ばね事業、インドネシア子会社のJATIMの立て直しが急務となっている。

2020年3月期決算概要及び「2020中期経営計画」

KPI

①特殊鋼受注数量
②原材料価格(鉄鉱石、石炭等)
②海外事業の営業利益率改善(生産拠点の集約などリストラ策を講じている)
③新車販売台数
④為替(米ドル、インドネシアルピーなど)

業績

2016年3月期から2019年3月期は建設機械業界や自動車業界においての需要が堅調だったことや、海外子会社を新たに連結化したことから連続増収だったものの、2020年3月期は国内新車販売の低迷、東南アジアの需要伸び悩み、コロナ禍における経済活動の縮小などから減収となった。経常利益は原材料価格の高騰や、2019年3月期下半期以降は減産の影響で減益が続く。2020年3月期は海外子会社の減損処理等で、当期純損失を14,070百万円計上している。自己資本比率は40%台から当期純損失計上等の影響で2020年3月期は30.1%となっている。