9782 ディーエムエスの業績について考察してみた

9782 ディーエムエスの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

ディーエムエスの事業概要

同社は1961年にダイレクト・メール・サービス株式会社として設立され、創業以来ダイレクトメール(以下DM)の取り扱いを中心としてセールスプロモーション業務を行っており、2004年にはジャスダック証券取引所に上場している。子会社は家電製品の販売を行う東京セールス・プロデュース㈱の1社のみであり、100%連結している。
報告セグメントは「DM事業」「物流事業」「セールスプロモーション事業」「イベント事業」「賃貸事業」の5セグメントとなっているが、「DM事業」が同社の主な事業であり売上の8割を占める。なお、「物流事業」は従来「DM事業」に含めていたが、2020年3月期第1四半期より管理体制の見直しにより区分することとしている。

DM事業

DMとは、個人や法人に対して商品案内やカタログを送付することにより商品やサービスの宣伝を行う手段である。同社においては、DMの企画制作から、ビックデータを活用したDM送付先の最適化、DMデリバリーまで、DMに関する一連の業務の外注を請け負っており、DM事業が同社の主力事業となっている。同様の事業を行う会社では株式会社ショーエイコーポレーション<9385>、ディーエムソリューションズ株式会社<6549>等が挙げられるものの、DM事業においてはディーエムエスが売上トップである。
売上先は、株式会社ジャパンネットメディアクリエーション等の通販、凸版印刷株式会社<7911>等の出版会社のほか、金融・保険業などへの売上が多い。

デジタル時代のDM

DM事業の市場はインターネット広告の台頭により代替されるリスクが考えられるが、同社によるとDM事業の市場環境は近年横ばいで推移しているとのことである。また、同社は「紙とデジタル」の相乗効果による新たな価値創造につなげている。紙のDMとeメール、Webサイト等のデジタルメディアとの組み合わせやビックデータの活用により新たなDMの利用を推し進めており、今後も需要の拡大が期待できる。
2019年10月においては、顧客のWebサイトの閲覧情報をもとにAIがおすすめ商品を選んで印字したDMをタイムリーに発送するAIレコメンドDMサービスの開始がリリースされており、AIを利用した新たなDM事業を展開している。

DM事業における業務提携

同社においては、定期的に業務提携のリリースをしており、2019年5月には、AIを用いたWeb上のマーケティング支援ツールを提供しているシルバーエッグ・テクノロジー株式会社<3961>との業務提携をリリースしており、上記の通りデジタル時代のDM事業に大きな影響を与えている。
また、直近では2020年1月に子育て家族アルバムアプリ「Famm(ファム)」を展開する株式会社Timersとの業務提携をリリースしている。Fammとはサービスの会員は100万人を超えるサービスであり、アプリを通じて家族写真や子供の写真を毎月フォトカレンダーやフォトアルバムを作成し、家族や親戚宛に配送するサービスである。当該業務提携によりフォトカレンダーやフォトアルバムの送付に合わせて、ファミリーをターゲットとした保険等のDMや、子供の入学や七五三等のライフイベントに合わせたDMを同封することで、DMの効果を高く発揮することができる。一般社団法人日本ダイレクトメール協会の公表している「DMメディア実態調査2019」によると、取引経験があるところからのDMについては「受取りたい」「まあ受け取ってもよい」とする割合が74%と高い一方、取引関係のない相手からのDMについては17%と低く、既存の取引先からのDMであることが重要であることを鑑みると、当該提携により同社のDM事業に与える影響が期待できる。
<「DMメディア実態調査2019」調査報告書要約版:一般社団法人日本ダイレクトメール協会>
https://www.jdma.or.jp/upload/research/20-2020-000016.pdf

物流事業

同社においては、埼玉県にある川島ロジスティクスセンターにおいて通販・ネットショップの商品保管、出荷代行サービスや、プレゼントキャンペーンや販促品を中心とした物流事業を行っている。川島ロジスティックセンターは圏央道川島ICから約4kmの場所に位置しており、2018年に開設された約7,000坪の物流センターである。比較的新しいロジスティックセンターで最新機器を導入しているため、多品種少量の商品をスムーズに出荷する機能に長けている。また、同社においては出荷代行サービスのみならず、受注管理やコールセンターなどのバックヤード業務も併せて行っている点が特徴である。
新型コロナウィルスの影響により、人との接触や外出を避けるライフスタイルへの移行等により物流事業は今後伸びると期待されている業態であることから、今後の同社の物流事業の売上増加も期待できると考えられる。

セールスプロモーション事業

同社においては、プレゼントキャンペーンの事務局や通販運営業務のほか、販売促進ツールの企画制作も行っている。ポスターや、チラシ、パネル、POP等、様々な販売促進ツールについて、デザインから制作、保管、配送まで行っており、DM事業や物流事業で培った基盤をもとにセールスプロモーションのトータルサポートを行っている。

イベント事業

同社においては、イベントの企画・演出・運営も手掛けており、スポーツイベントなどの運営も行っている。同事業においては、車いすバスケットボールやボッチャといったパラスポーツ振興イベントが好調であり、新型コロナウィルスの影響により開催が後ろ倒しになったが、オリンピック需要の取り込みも期待できる。

賃貸事業

同社においては、千代田小川町クロスタビル(東京都千代田区)のほか、埼玉や大阪にも賃貸施設を保有しており、それを賃貸することにより収入を得ている。2020年3月期には旧大阪本社(大阪府大阪市旭区)についても賃貸している。
同事業による収入は他の事業と比べて金額こそ小さいが、利益率は高く、安定的に収益が得られている。また、同社の保有する賃貸不動産は2020年3月期において帳簿価格で2,211百万円あるのに対して、同物件を担保とした借入残高は368.5百万円のみであり、2022年3月期には返済が完了する予定である。そのため、同物件を担保とした追加の借入も可能であると考えられ、財務基盤の安定につながっている。

ディーエムエスの財務状況と経営指標

財務状況を見ると2020年3月期においては総資産は前期末比較で727百万円増加の17,405百万円となった。総資産の主な増加要因としては、現金及び預金が1,263百万円増加した一方、新型コロナウィルスの発生に伴い2020年に入ってからの決算期末直前の売上が減少傾向であったことから、売上債権343百万円減少している。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末72.8%から当期末75.8%と前期と比べても良化している。これは、1,171百万円の当期純利益を計上したことによる良化であると考えられる。また、有利子負債についても、368.5百万円のみであり、財政状況は健全であるといえる。
収益性について同社が重要な経営指標と捉えている純資産当期純利益率(ROE)は前期末8.6%から1.2ポイント上昇の9.8%、総資産当期純利益率(ROA)は前期末5.9%から1.0ポイント上昇の6.9%、となっており、収益性も順調に上昇してきている。2018年に公表された中期経営計画によると、2023年3月期においてROEは10.0%、ROAは7.0%とすることを目標に掲げているが、2020年3月期において既に達成しつつある水準まで迫っている。また、同計画によると、2023年3月期における目標を売上30,000百万円、営業利益2,000百万円としている。2020年3月期時点において、売上については前期比367百万円増の27,146百万円となっており大幅な増加はないものの、高採算案件の増加や業務効率化等により営業利益については前期比296百万円増の1,663百万円となり、目標額に着実に近づきつつある。

ディーエムエスのカタリスト

同社のカタリストとして、公正取引委員会の検査結果の公表が考えられる。2019年10月において、同社は日本年金機構が発注する帳票の作成及び発送代行業務の入札に関して独占禁止法の疑いがあるとして、公正取引委員会による立ち入り検査を受けた旨リリースを行っており、その後同社からは当該検査の結果に関するリリースは無い状況にある。結果によっては公的機関との今後の取引にも影響を与える可能性があり、投資家心理に不安を与えているため、当該検査結果の公表により投資家の不安を拭い去ることができれば株価の上昇につながるであろう。