7196 Casaの業績に関して考察してみた

7196 Casaの業績に関して考察してみた

PERAGARU管理人

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2024.Q1 2023.04 2,724 -144 -5.29%
FY2024.Q2 2023.07 2,792 230 8.24%
FY2024.Q3 2023.10 2,836 363 12.8%
FY2024.Q4 2024.01 2,872 337 11.73%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2018.Q3 2017.10 2,069 335 16.19%
FY2018.Q4 2018.01 2,070 340 16.43%
FY2019.Q1 2018.04 2,119 266 12.55%
FY2019.Q2 2018.07 2,130 392 18.4%
FY2019.Q3 2018.10 2,162 453 20.95%
FY2019.Q4 2019.01 2,198 214 9.74%
FY2020.Q1 2019.04 2,298 282 12.27%
FY2020.Q2 2019.07 2,344 429 18.3%
FY2020.Q3 2019.10 2,381 487 20.45%
FY2020.Q4 2020.01 2,413 324 13.43%
FY2021.Q1 2020.04 2,502 -76 -3.04%
FY2021.Q2 2020.07 2,519 444 17.63%
FY2021.Q3 2020.10 2,588 451 17.43%
FY2021.Q4 2021.01 2,617 212 8.1%
FY2022.Q1 2021.04 2,657 134 5.04%
FY2022.Q2 2021.07 2,626 398 15.16%
FY2022.Q3 2021.10 2,554 457 17.89%
FY2022.Q4 2022.01 2,503 48 1.92%
FY2023.Q1 2022.04 2,555 45 1.76%
FY2023.Q2 2022.07 2,546 280 11%
FY2023.Q3 2022.10 2,575 287 11.15%
FY2023.Q4 2023.01 2,610 173 6.63%
FY2024.Q1 2023.04 2,724 -144 -5.29%
FY2024.Q2 2023.07 2,792 230 8.24%
FY2024.Q3 2023.10 2,836 363 12.8%
FY2024.Q4 2024.01 2,872 337 11.73%

Casaの事業概要

同社は2008年に倒産した、不動産賃貸借契約の債務保証会社であったリプラスの事業を引き継いでレントゴー保証株式会社として設立された。2013年に旧株式会社Casaの全株式を取得、翌年吸収合併し、商号を株式会社Casaに変更したすることにより今の形となった。
報告セグメントは家賃債務保証事業のみの単一セグメントであり、2019年6月にITテクノロジーを活用した不動産経営プラットフォームを用いて不動産オーナーの経営支援を行うため子会社を設立して事業を開始しているが、2020年1月期においては業績に与える影響は軽微としており、報告セグメントは分かれていない。

家賃債務保証事業

家賃債務保証事業とは、賃貸物件において入居者からオーナーへ支払うべき賃料等の支払いが滞った際に、保証会社としてオーナーへ賃料等を代位弁済し、入居者に対して滞納した家賃等の督促を行い債権の取立を行う一方で、入居者から保証料として契約締結時や年間保証料として、保証料を受領するビジネスである。


リーマンショックの頃に賃貸物件の家賃の滞納が多く発生したことからニーズが高まってきたビジネスであり、比較的歴史は浅く未開拓の市場が存在する。同業態の大手としては日本セーフティ㈱、全保連㈱、日本賃貸保証㈱が挙げられるがいずれも上場はしていない。上場会社ではイントラスト<7191>、あんしん保証<7183>、ジェイリース<7187>等が挙げられる。Casaの売上高は大手3社には届かないものの、業界4番手の売上高であり、上場会社でトップである。
同ビジネスにおいては、契約を成立させることにより保証料としてストック収入を安定的に得ることができ、利益率も非常に高い。上記の同業他社の業績を見てもここ数年間において確実に売上を伸ばしていることがわかる。
一方で、リーマンショックのような外的要因により家賃滞納者が急激に増加することにより、貸倒損失等の偶発損失が多額に発生するリスクがあるため、入居者の与信管理や、不測の事態に備えた財務の健全性が重要となる業種である。

Casaの家賃債務保証事業

同社では「Casaダイレクト」、「家主ダイレクト」等の家賃債務保証商品を提供している。通常家賃債務保証事業においては、不動産の仲介や管理を行う管理会社に営業を行い、契約を得るのが一般的であるが、同社においては「家主ダイレクト」により賃貸不動産の自主管理を行うオーナとに直接契約の締結を行っている点が特徴的である。

Casaダイレクト

同商品は、リコーリース㈱<8566>と連携した商品であり、家賃の集金代行と家賃保証がセットとなった事前立替型保証であり、不動産管理会社においては滞納管理や滞納報告が不要となり、管理業務の負担が軽減されることで不動産管理会社にもメリットがある。2018年8月には東急住宅リースへの商品提供も開始されており、高級賃貸住宅での家賃債務保証も増加傾向である。

家主ダイレクト

同商品は、不動産管理会社に賃貸不動産の管理委託を行わず、オーナーが自主管理している賃貸不動産に向けた商品であり、リコーリース㈱<8566>と東京海上日動火災保険㈱と連携して提供している商品である。
「Casaダイレクト」と同様に集金代行と家賃保証がセットになった事前立替型保証であり、賃貸物件で孤独死等が発生した場合に備えた保険サービスも組み合わせている。同商品の利用オーナー数も2018年は16千人であったものの2019年には23千人と前年比180%で推移しており着実に利用者数を伸ばし、2020年には41千人に増加する計画である。自主管理市場の85%が未だに保証会社を利用していないことを鑑みると、まだまだ売上増加の余地はあるものと考えられる。

Casaの財務状況と経営指標

財務状況を見ると総資産は前期末比較で996百万円増加の12,671百万円となった。なお、2020年1月期より連結財務諸表を作成することとなったことから、決算短信上前期比較は行われていないが、子会社は100%1社のみであることから前期の個別財務諸表との比較を行うことで差し支えないと考えられるため、対前期比較においては前期数値は個別財務諸表との比較を行っている。総資産の主な増加要因は売上増加に伴う売掛金の増加133百万円、代位弁済の増加に伴い求償債権の増加441百万円となった。また、前受金増加に伴い繰延税金資産が227百万円増加となった。負債合計は664百万円増加の6,061百万円となった。主な増加要因としては、売上増加に伴い未経過保証料が増加したことにより前受金が336百万円増加したことが主な要因となっている。純資産合計は332百万円増加の6,610百万円の増加となった。主な増減要因としては、親会社株主に帰属する当期純利益927百万円を計上して増加した一方で、270千円の配当金の支払、335百万円の自己株式を取得したことによる減少が主な増減要因となっている。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末53.75%から当期末52.25%と概ね横ばいである。数値だけを見ると自己資本比率はあまり高くないが、負債の大部分が資産の流出を伴わない前受金であり当期末時点においては有利子負債も無いことから財務内容は極めて健全であると判断される。
また、収益性について同社が重要な経営指標と捉えている自己資本当期純利益率(ROE)は前期末13.3%から0.7ポイント上昇の14.0%となっており、収益性も順調に上昇してきている。粗利率も65.3%と高く、売上高の増加が大きく利益貢献している。
ストック収入としての年間保証料の積上げがされている他、契約締結時に受領した保証料のうち経過保証料として今後収益化されることになる前受金の残高が4,425百万円あることから、今後も安定的な収益をあげることが期待できる。

Casaのカタリスト

民法改正に伴う新規顧客獲得がカタリストと考えられる。2020年4月に民法の大改正が行われ、賃貸借契約や保証契約に影響を与えている。中でも不動産業界に大きな影響を与える改正が、根保証、極度額規制の拡大(民法465条の2の改正)である。個人の連帯保証契約について責任限度額を契約書に記載しないと連帯保証契約が無効とされてしまうという、賃貸物件のオーナー対して不利な改正が行われた。法改正の概要については以下のホームページを参照。

<神戸合同法律事務所:【民法改正】根保証:極度額規制の拡大(民法465条の2の改正)~民法が変わる>
https://www.kobegodo.jp/LawyerColumn.asp?FId=20&SId=476

これにより、賃貸不動産のオーナーにおいて、個人の連帯保証ではなく、保証会社を利用するニーズが高まればCasaの新規顧客の獲得につながるであろう。
また、昨今の新型コロナウィルスの影響による損失をどの程度抑えられるかも、カタリストとなると考えられる。当該影響により家賃の滞納が増えることが予想されるが、この影響を最小限に抑え、財務の健全性を世間にアピールすることができれば、オーナーからの信頼がより厚くなるであろう。

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