3663 アートスパークホールディングスの業績について考察してみた

3663 アートスパークホールディングスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2023.Q3 2023.09 1,933 195 10.09%
FY2023.Q4 2023.12 1,905 428 22.47%
FY2024.Q1 2024.03 2,011 565 28.1%
FY2024.Q2 2024.06 2,049 540 26.35%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q1 2017.03 840 140 16.67%
FY2017.Q2 2017.06 882 113 12.81%
FY2017.Q3 2017.09 1,035 263 25.41%
FY2017.Q4 2017.12 879 -93 -10.58%
FY2018.Q1 2018.03 1,012 213 21.05%
FY2018.Q2 2018.06 911 89 9.77%
FY2018.Q3 2018.09 904 126 13.94%
FY2018.Q4 2018.12 962 -54 -5.61%
FY2019.Q1 2019.03 1,179 256 21.71%
FY2019.Q2 2019.06 1,355 -27 -1.99%
FY2019.Q3 2019.09 1,513 14 0.93%
FY2019.Q4 2019.12 1,334 -2 -0.15%
FY2020.Q1 2020.03 1,443 143 9.91%
FY2020.Q2 2020.06 1,564 215 13.75%
FY2020.Q3 2020.09 1,657 274 16.54%
FY2020.Q4 2020.12 1,709 141 8.25%
FY2021.Q1 2021.03 1,779 421 23.66%
FY2021.Q2 2021.06 1,726 360 20.86%
FY2021.Q3 2021.09 1,687 325 19.26%
FY2021.Q4 2021.12 1,698 272 16.02%
FY2022.Q1 2022.03 1,827 456 24.96%
FY2022.Q2 2022.06 1,926 508 26.38%
FY2022.Q3 2022.09 1,791 269 15.02%
FY2022.Q4 2022.12 1,999 232 11.61%
FY2023.Q1 2023.03 2,211 548 24.79%
FY2023.Q2 2023.06 2,042 181 8.86%
FY2023.Q3 2023.09 1,933 195 10.09%
FY2023.Q4 2023.12 1,905 428 22.47%
FY2024.Q1 2024.03 2,011 565 28.1%
FY2024.Q2 2024.06 2,049 540 26.35%

沿革

2012年4月、株式会社セルシス(1991年5月設立)と株式会社エイチアイ(1989年4月設立)が株式移転により同社を設立し、両社はその完全子会社となり、東証二部に上場。2019年1月にSocionext Embedded Software Austria GmbHの全株式を取得、翌月にCandera GmbHへ商号変更。2019年6月には株式会社カンデラジャパン、2019年12月にはCandera America Inc.を設立。 2021年3月にはIT及びソフトウェアの受託開発を行う株式会社エイチアイを売却。2022年4月市場区分の見直しによりスタンダード市場へ移行イラスト制作ソフトでシェアNO.1の「CLIP STUDIO PAINT」を有し、自動車の先進運転システム開発に欠かせないソフトウェア開発プラットフォームを提供する

株主構成

有価証券報告書によると2021年12月末時点の筆頭株主は、BNYM SA/NV BNYM FOR BNY GCM CLIENT ACCOUNTS M LSCB RDで保有割合5.45% 。Line Digital Frontier株式会社が5.03%で続き、以降は保有割合5%未満で海外金融機関、国内信託銀行信託口、国内証券、短資会社、個人名が並ぶ。尚、大量保有報告書によると、2022年4月に資本業務提携した6727ワコムの保有割合が5%を超えているとみられる。外国人株式保有比率は10%以上20%未満

取締役会

取締役は7名(社内6名、社外1名)、監査役は3名(全員社外)、監査役会設置会社である。社内取締役は同社前身の株式会社セルシス出身者が多い。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の成島啓氏は1974年8月生まれ。千葉工業大学卒業後、1997年4月株式会社セルシス入社。2001年2月取締役に就任、2016年3月からは代表取締役社長を務める。2017年3月には株式会社セルシスの親会社である同社の取締役に就任。2021年3月に代表取締役副社長、2022年3月より代表取締役社長を務める

報告セグメント

「クリエイターサポート事業」と、「UI/UX事業」の2報告セグメントに大別される。2022年12月期第1四半期の売上高1,827万円の構成比は、クリエイターサポート事業85.2%、UI/UX事業14.8%。同四半期のセグメント利益は、クリエイターサポート事業が566百万円を稼いだ一方、UI/UX事業は赤字で、連結の営業利益は456百万円。

事業モデル

クリエイターサポート事業はイラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT」シリーズ等の企画から開発までを、子会社の株式会社セルシスにて行う。「CLIP STUDIO PAINT」は、世界最大級のイラストSNS「pixiv」での使用率が1位と高いユーザーシェアを有し、大手メーカーのPCやGalaxyのAndroidタブレットなどにプリインストールされている。無料利用期間後にサブスクリプション契約を行うことで継続利用できる形をとり、同契約の増加が期待される。販売は自社運営のWebサイト「CLIP STUDIO」からのDLやソフトウェアのCDを電気量販店などの小売業者等を通じて提供し、ユーザーに使用許諾を与える形式。2022年6月末時点の累計出荷本数は2,100万本、日本語以外の売上比率が70%以上。海外利用ユーザーの増加を目的とし、全世界に向けたプロモーション活動を実施している。また、同ソフトウェアの研究開発成果をもとに、ソフトウェアやサービスノウハウのソリューション提供を行う。
UI/UX事業はHMI(Human Machine Interface:人間と機械が情報をやり取りするための手段や、そのための装置やソフトウェアなどの総称)ソフトウェア開発プラットフォーム「CGI Studio」等の企画・開発を行う。子会社のCandera GmbHが独自の技術で開発した同製品は、欧州の自動車メーカーや、家電メーカー等で多数の採用実績を有す。自動車業界ではTier1の6社、OEMの8社が同社製品を採用するほか、エヌビディアやインテルなどのハードウェアやMicrosoftやAndoroidなどのソフトウェアなど幅広いプラットフォームをサポートする。市場規模が拡大していくとみられる自動車の先進運転システム開発に欠かせないHMIで、今後も需要増加が見込まれる。またUIのデザイン、ソフトウェア開発、組込み業務までを受託開発し、開発・保守・サポート料を得ている。自動車関連分野はコロナ禍に端を発した新車開発の遅れやモデルサイクルの長期化、半導体不足等による生産台数の減少を受け、完成車メーカーの設備投資には慎重さがみられる。

同社HP TOP https://cgistudio.at/ja/

競合他社

イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT」の競合として、Adobe社の「Photoshop」が挙げられる。

連結の範囲

持株会社である同社の傘下に、事業子会社として、クリエイターサポート事業を行う株式会社セルシス、UI・UX事業を行う株式会社カンデラジャパンと在外子会社のCandera GmgHの3社と、非連結子会社1社を有しグループを形成。

強み・弱み

「CLIP STUDIO PAINT」はプリインストールの実績を有するなどメーカーからの信頼と高いシェアを有する製品力が強み。今後も需要増加が見込まれる「CGI Studio」は、自動車産業界の投資意欲に左右され、コロナ禍の慎重姿勢を受け足元は販売が低迷している。また海外売上高も相応にあるため、為替の業績影響が大きい点も懸念点である。

株式会社セルシス > イラスト・マンガ描き方ナビ
https://www.clipstudio.net/oekaki/archives/151996

KPI

下記などが挙げられる。①~③などは月次事業進捗レポートとして同社HP上で公開されている。
①「CLIP STUDIO PAINT」出荷本数(2,100万本:2022年6月時点)
②「CLIP STUDIO PAINT」サブスクリプションモデル契約数(60.9万契約:2022年6月時点)
③「CLIP STUDIO PAINT」サブスクリプション売上3か月移動平均ARR(2,173百万円:2022年6月時点)
④車載ソフトウェア市場規模(2030年に9,950億円と予測、矢野経済研究所調べ)
⑤為替(米ドルなど)

業績

Candera GmbH の子会社化などにより、2017年12月期から2021年12月期までに売上高は約1.9倍に成長。営業利益はのれん償却等の影響で2019年12月期まで減益が続いたが、2020年12月期はクリエイターサポート事業の増収、利益率改善により一転、過去最高益を更新した。2021年12月期も同様の傾向続き、営業利益率は20%に。フリーCFは、2019年12月期に子会社化に伴う株式取得により投資CFが大幅マイナスとなった以外はプラス。自己資本比率は70%台で推移。有利子負債は2019年12月期よりゼロ。

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