4998 フマキラーの業績について考察してみた

4998 フマキラーの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1890年薬種商として「大下回春堂」を創業し専売特許殺虫剤「強力フマキラー液」を開発し、製造販売を開始。1950年株式会社大下回春堂へ改組、東京に本店、広島に工場設立。1962年フマキラー株式会社に商号変更。1964年5月東証二部上場。1980年代から積極的に東南アジアや中南米へ海外拠点を展開。殺虫用品、家庭用品、園芸用品、業務用品等の製造販売を営む。

株主構成

有価証券報告書によると2020年9月末日時点の大株主は、エステー株式会社10.4%を筆頭に、公衆衛生向上棟の研究助成公益財団法人大下財団で8.0%、株式会社日本カストディ銀行3.5%、株式会社みずほ銀行3.5%、株式会社広島銀行3.4%、子会社の大下産業株式会社3.4%、取引先の住友化学株式会社2.63%や福山通運株式会社1.82%が並ぶ。尚、代表取締役社長大下一明氏の保有比率は1.57%である。2000年代から国内最大の競合アース製薬株式会社が友好的買収を目論み同社株式を一時は15%まで買い増したが、同社との和解に失敗した末、エステー株式会社へ保有株を全売却した経緯から、競合であるエステー化学が筆頭株主となっている。

取締役会

取締役は16名(社内10名、社外6名)、監査役4名 (社内2名、社外2名)、監査役会設置会社である。代表権を持つ取締役は後述する会長、社長、副社長の3名で、それ以外の社内取締役には、筆頭株主であるエステー化学からの入社が3名、プロパー出身者4名で構成される。

代表取締役の経歴

代表取締役会長の大下俊明氏は1948年10月生まれ。広島商科大学(現 広島修道大学)を中退。1978年2月に同社へ入社。その後、1991年に代表取締役社長を経て、2018年に現職へ就任。
代表取締役社長の大下一明氏は1958年5月生まれ。日本大学商学部卒業後、稲畑産業株式会社へ入社し、1984年4月に同社へ入社。1998年に営業本部長、2004年に代表取締役副社長を経て、2012年に現職へ就任。大下俊明の実弟
代表取締役副社長の大下宜生氏は1973年6月生まれ。2000年大王製紙株式会社へ入社。2013年に同社へ入社。2014年に東京支店長を経て、2018年に現職へ就任。大下俊明の娘婿

報告セグメント

製造販売体制を基礎とした所在地別に「日本」、「東南アジア」の2報告セグメントに大別される。
2020年3月期第3四半期の売上高34,473百万円の構成比は日本が19,216百万円で55.7%、東南アジアが15,256百万円44.2%を占める。
事業部門は、「殺虫剤部門」、「家庭用品部門」、「園芸用品部門」、「防疫剤部門」の4部門に大別し、いずれにも該当しないものを「その他」としている。直近2021年3月期第3四半期の売上高34,473百万円の構成比は殺虫剤部門が24,065百万円で69,8%、家庭用品部門が3,391百万円で9.8%、園芸用品部門が2,148百万円6.2%、防疫剤部門が1,230百万円で3.5%を占める。主力事業である殺虫剤部門は在宅勤務や外出自粛など新しい生活様式の広まりにより、好調に推移し前年同期比11.2%の増収となった。

事業モデル

殺虫剤部門は国内及び東南アジア向けにワンプッシュ式蚊取り、電池式蚊取り・虫よけ、液体蚊取り、マット式蚊取り器、蚊取りマット等を製造販売。インド及びメキシコの工場で製造し、国内及び海外へ販売。国内市場の商品ジャンル別売上は2020年3月期見込ベース不快害虫が30.8%、その他が16.1%、ゴキブリが14.9%、ハエ蚊エアゾールが8.7%、リキッド式が8.6%を占める。
家庭用品部門は国内向けに衣類防虫剤、除湿剤、花粉アレルギー対策商品、除菌剤等を販売製造。広島工場にて製造し、国内市場へ販売。現在、アルコール除菌関連製品は新型コロナウイルス感染拡大により増収傾向
園芸用品部門は国内向けに園芸害虫用殺虫・殺菌剤、肥料、活力剤、除草剤、培養土等を製造販売。広島工場及びインドネシア工場、タイ工場にて製造し、国内へ販売。
防疫剤部門は国内で乳剤、油剤、粉剤、殺そ剤等を製造販売。
その他部門は主として金型の製造販売、シロアリ施工工事の受注を実施。国内製造、国内販売。
主力の殺虫剤部門において高い認知度を誇る。東南アジアを中心に蚊が媒介する感染症に因る被害が拡大しており、殺虫剤の需要は旺盛。
原材料の溶剤、噴射剤、化学薬品、樹脂、鋼材等を国内外から輸入しているが為替が仕入れ高に与える影響は限定的。一方海外売上高比率が45.1%あることから、円換算後数値に為替が影響を与える可能性を抱える。

競合他社

国内の殺虫剤市場では約50%のシェアを占める4985アース製薬(2020年12月期売上高196,045百万円)、同社の筆頭株主である4951エステーに次いで、同社は3番手とみられる。そのほか、大日本除虫菊株式会社(2020年12月期売上高32,500百万円)なども競合として挙げられる。トップシェアのアース製薬がゴキブリ対策用品に強みをもつ反面、当社は蚊取対策用品に強いなどの違いもある。

連結の範囲

同社グループは、同社及び連結子会社11社、非連結子会社3社から構成される。連結子会社は海外8社、国内3社で、東南アジアで殺虫剤及び園芸用品の製造販売を行う6社、メキシコで殺虫剤の販売を行う1社、インドで殺虫剤の販売を行う1社、東京に防疫剤の販売を行う1社、広島に家庭用品及び園芸用品の製造販売を行う1社、殺虫剤及び家庭用品の製造を行う1社。非連結子会社はブラジルに1社、インドネシアで仕入れを行う1社、広島で仕入れを行う1社である。

強み・弱み

国内市場の頭打ちが見える中、同社の最大の強みは1980年代からの海外展開で製造拠点、販売体制ともに強固な基盤をもつことが強み。ウイルス、殺菌など暮らしの周りに潜む見えないリスクに対して、高い効果を発揮する商品開発能力が強み。主力である殺虫剤や花粉対策商品、園芸用品は天候によって大きく影響を受けることが課題

KPI

国内の殺虫剤業界では、特殊な商慣行により、需要期に小売店で売れ残った製品の返品を受け付けており、業績に与える影響も大きい。そのため、各事業における返品率と酷暑になりすぎないことや残暑の長期化がKPIとなりうる
①全体の返品率:2020年3月時点で8.3%(前年同期比▲1.5%)
②殺虫剤の返品率:2020年3月時点で11.3%(前年同期比▲1.5%)
③酷暑・残暑の天候変動

業績

売上高や経常利益の推移は、数年の短期間では増減があるが、10年間ではいずれもほぼ倍増しており、安定的な成長を継続している。営業CFは安定してプラス、投資CFは恒常的にマイナス、財務CFは変動がある。2021年3月期第3四半期の自己資本比率49.0%