7762 シチズン時計の業績について考察してみた

7762 シチズン時計の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

1930年5月に東京都新宿区にてシチズン時計株式会社として設立された。母体は1918年に設立された尚工舎時計研究所であり、1924年に発売した懐中時計「CITIZEN」が同社の名前の由来である。1949年5月に東証に上場、1961年10月には大証に上場した。1970年2月に香港で合弁会社を設立し、以降生産・販売面で海外展開を進める。2001年3月には研究開発拠点である田無工場に本社を移転。2007年4月にはシチズンホールディングスを設立し、純粋持株会社体制へ移行したが、2016年10月には傘下子会社を吸収合併のうえ、以前のシチズン時計株式会社に戻している。2018年には創業100周年を迎えた。世界130カ国以上に展開するグルーバルウォッチブランド「CITIZEN」の時計の製造販売、マザーマシンなどの工作機械、LED・自動車部品などのデバイス、業務用プリンターや電子血圧計などの電子機器等の製造販売を営む。

株主構成

有価証券報告書によると、2021年3月末時点の筆頭株主は、株式会社日本カストディ銀行で18.37%を保有する。そのほか、主要な上位株主は日本マスタートラスト信託銀行のほか、信託銀行などの資産管理銀行が軒並み上位を占める。第5位株主には日亜化学工業株式会社が3.19%、第10位株主には株式会社ニコンが1.60%と、取引先とみられる保有もある。外国人保有比率は20%以上30%未満

取締役会

取締役は9名(社内6名、社外3名)、監査役は3名(社内1名、社外2名)であ り、同社は監査役会設置会社である。社内取締役はプロパー出身者 が占め、同社子会社シチズンマシナリー株式会社の代表取締役社長を務める中島圭一氏のほか、主要子会社で社長を務める人物が名を連ねている。また、社外取締役は、サッポロビール株式会社出身の寺坂文明氏、住友商事株式会社出身の大澤善雄氏など、企業経営の経験が豊富な人物が担っている

代表取締役の経歴

代表取締役社長である佐藤敏彦氏は1955年11月生まれ。北海道大学工学部を卒業後、1981年4月に同社へ入社した。2009年8月に同社開発部長を経験したほか、シチズンファインテックミヨタ株式会社(現シチズンファインデバイス株式会社)、シチズン時計マニュファクチャリング株式会社の代表取締役社長を経験し、2017年6月に同社常務取締役、2018年4月に同社専務取締役を経て、2019年4月に現職である同社代表取締役社長に就任した

報告セグメン ト

「時計事業」・「工作機械事業」・「デバイス事業」・「電子機器他事業」の4つから構成される。2021年3月期の売上高206,641百万円に占める構成比は、時計事業が46.3%、工作機械事業が22.6%、デバイス事業が22.2%、電子機器他事業が8.9%であった。工作機械事業が利益の柱で、時計事業の利益率が一桁なのに対して工作機械事業は10%代と収益性が高い。同期は時計事業の大幅赤字を工作機械事業で賄いきれず、連結でも9,551百万円の赤字であった。新型コロナウィルス感染症による販売低迷から、全4事業で減収、特に時計事業が売上高956億円(前期比▲459億円)と大幅減収であった
20201年3月期の地域別の 売上高は日本34%、アジア32%、アメリカ17%、ヨーロッパ16%、その他1%であった。

2021年3月期 通期決算説明資料

事業モデル

グループ企業理念として「市民に愛され市民に貢献する」を掲げ、グループの中心で、祖業である時計事業、工作機械事業における成長促進を主軸に据えた経営を 展開する。
「時計事業」は、ウオッチ・ムーブメントなど、同社の祖業である腕時計関連の部品製造から完成時計の企画・製造・販売などを手掛けるほか、スポーツ計時、表示システムなどの開発も手掛ける。シチズンブランドを核にしたマルチブランド戦略を推進し、スマートウオッチ・高級品など今後の成長が見込まれる分野などでの製品拡大を進める。
「工作機械事業」は、時計生産のための設備機械開発で得た知識・ノウハウをもとに、自動車・建機業界など向けの部品加工に供する工作機械の開発・提供を行っている。今後成長が期待される新興国市場での事業拡大などを推進する方針。
「デバイス事業」は、時計製造で培った小型・精密加工技術を応用し、電子機器の開発などを手掛ける。「電子機器他事業」では、小型・精密・低消費電力化技術を広く応用する機器の開発を行っており、業務用プリンターや電子血圧計や電子体温計など健康管理機器などの開発を行っている。この両事業で高付加価値製品の拡大を図り、収益力の改善を目指す方針。
特に優先的に取り組む方針の時計事業は、シチズンブランドの強化として、スポーツウオッチ「PROMASTER」などグローバル展開するブランドの拡販、機械式ムーブメントの新商品の投入、など積極的なてこ入れを行う。

競合他社

時計業界は、海外勢を含めて、有力メーカーがひしめき合っている。国内の競合先としては、G-SHOCKが代表的な製品である6952カシオ計算機(2021年3月期売上高2,274億円)、国産初の腕時計開発で知られるセイコーホールディングス(2021年3月期売上高2,026億円)が直接の競合先である。ただ、近年ではアップルウォッチに代表されるスマートウォッチが急速に台頭してきており、同社製品もこれら製品と対抗していかざるを得ないため、カシオ計算機・セイコーホールディングス以外にも、多くのメーカーとの競争が激しくなっている。

連結の範囲

2021年3月末時点において、同社には93社の連結子会社、6社の関連会社がある。シチズン時計マニュファクチャリング、シチズン電子など国内子会社よりも、子会社・関連会社は広く世界中に展開しており、製造販売子会社は、米国・欧州のほか、中国にも重点的に配置されている。工作機械事業における子会社は中国のほか、フィリピン・ベトナムなど東南アジア諸国にも設立されている。

強み・弱み

強みは、長年の時計製造でつちかわれた高い技術力から、時計事業だけではなく、工作機械事業・デバイス事業など関連事業が多角化戦略の一翼を担う体制が構築出来ている点。また、時計事業で、時計の製造・販売後に、アフターフォローまで、一連の過程を全て自社で完結できる体制を構築している点にある。
スマートウォッチの台頭に見られるグローバルな消費者動向として、GARMINやAppleをなどハイテク産業を出自とする“新しいブランド”がシェアを握っており、既存の有名ブランドのスマートウォッチはシェアを得られていない点は懸念点である。自社で開発技術を持たない為、米フォッシル・グループと提携することで、体制構築を急ぎ、売上高規模で200億円程度を目指しているが厳しい状況にある。

KPI

2019年度開始20201年度末までの中期経営計画において、主要な経営指標の定量目標を設定している。新型コロナウィルス感染症の影響が拡大するなか、時計事業を中心に目標を大きく下回っている、達成状況は下記。
「連結売上高」 2,066億円 (2021年3月時点、中期経営計画:3,700億円)
「営業利益」 ▲95億円 (2021年3月時点、中期経営計画:300億円)
「ROE」 -% (2021年3月は赤字のため算出なし、中期経営計画:8.0%)
事業環境の大きくな変化をうけ、業績の落ち込みが特に大きい時計事業の復調の是非が目先のカギとなるだろう。経済活動が回復している中国では実店舗での復調に加えEC販売が好調となり、販売回復の兆しが確認出来ており、今後の売上動向が注目さ れる。

2021年3月期 通期決算説明資料

業績

2014年3月期から2019年3月期までは売上高3,000億円を上回って推移していたが、2期連続で大幅減少が続き2021年3月期は2,066億円。営業利益は2016年3月期の304億円が直近10年の最高値で、足元2期は減収に伴う大幅減益、直近期は赤字転落。2022年3月期の連結業績予想では、売上高2,600億円、営業利益100億円と、急回復を想定。営業CFは74億円だがかろうじてプラスを維持しており、投資CFは急速に抑制しているが恒常的にマイナス。自己資本比率は18年3月期の61.6%をピークに低下基調で2021年3月期は55.7%であった。