7003 三井E&Sホールディングスの業績について考察してみた

7003 三井E&Sホールディングスの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2024.Q3 2023.12 79,825 6,830 8.56%
FY2024.Q4 2024.03 86,514 6,149 7.11%
FY2025.Q1 2024.06 70,062 4,299 6.14%
FY2025.Q2 2024.09 74,979 4,917 6.56%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q4 2017.03 236,350 10,324 4.37%
FY2018.Q1 2017.06 162,215 -9,914 -6.11%
FY2018.Q2 2017.09 179,312 855 0.48%
FY2018.Q3 2017.12 178,410 7,451 4.18%
FY2018.Q4 2018.03 183,279 -3,616 -1.97%
FY2019.Q1 2018.06 152,944 1,107 0.72%
FY2019.Q2 2018.09 158,757 -29,087 -18.32%
FY2019.Q3 2018.12 167,695 899 0.54%
FY2019.Q4 2019.03 177,108 -32,622 -18.42%
FY2020.Q1 2019.06 160,136 2,205 1.38%
FY2020.Q2 2019.09 196,721 -69,942 -35.55%
FY2020.Q3 2019.12 190,841 -4,615 -2.42%
FY2020.Q4 2020.03 238,779 10,273 4.3%
FY2021.Q1 2020.06 160,779 -15,092 -9.39%
FY2021.Q2 2020.09 163,445 5,853 3.58%
FY2021.Q3 2020.12 160,524 4,110 2.56%
FY2021.Q4 2021.03 159,938 -7,114 -4.45%
FY2022.Q1 2021.06 185,927 2,760 1.48%
FY2022.Q2 2021.09 170,472 -7,249 -4.25%
FY2022.Q3 2021.12 152,139 -4,929 -3.24%
FY2022.Q4 2022.03 70,825 -611 -0.86%
FY2023.Q1 2022.06 50,575 -6,701 -13.25%
FY2023.Q2 2022.09 61,157 -1,804 -2.95%
FY2023.Q3 2022.12 61,462 5,963 9.7%
FY2023.Q4 2023.03 89,107 11,918 13.37%
FY2024.Q1 2023.06 61,556 1,720 2.79%
FY2024.Q2 2023.09 73,980 4,931 6.67%
FY2024.Q3 2023.12 79,825 6,830 8.56%
FY2024.Q4 2024.03 86,514 6,149 7.11%
FY2025.Q1 2024.06 70,062 4,299 6.14%
FY2025.Q2 2024.09 74,979 4,917 6.56%

沿革

1917年11月三井物産株式会社造船部として岡山県児島郡日比町(現玉野市)にて創業、第1船「海正丸」を竣工。1924年日本初となるディーゼルエンジン搭載の「赤城山丸」を建造。1937年7月旧三井物産株式会社から分離独立し株式会社玉造船所を設立。1942年1月三井造船株式会社へ商号変更。1949年5月東証、大証へ株式上場。産業の裾野も広く幅広い関連会社を合弁等も用いて設立・九州・移管したり、合併や海外企業の買収などの変遷を経て、2018年4月より持株会社体制へ移行し、商号を株式会社三井E&Sホールディングスへ変更。2021年3月には千葉造船所での新規造船事業を終了。造船事業や舶用ディーゼル機関などの機械製造販売、海洋開発やプラントエンジニアリングの設計・運用等を行う総合重工メーカー。 直近4期連続で連結営業赤字、継続疑義注記

株主構成

有価証券報告書によると2021年3月末時点の大株主は、日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で7.96%、以降は5%未満で今治造船株式会社や三井物産株式会社、国内信託銀行信託口、生保やメガバンクなどの国内金融機関、等が並ぶ。外国人株式保有比率は10%以上20%未満。

取締役会

取締役は6名(社内4名、社外2名)、監査役は4名(社内2名、社外2名)、監査役会設置会社である。代表取締役副社長の松原氏以外の社内取締役はプロパー入社。社外取締役の2名はそれぞれ、大手総合化学会社の経営者、大手製紙会社の経営者としての経歴を有す。。

代表取締役の経歴

代表取締役社長CEO、 エンジニアリング事業管理室及び成長事業推進室担当の岡良一氏は1958年10月生まれ。東京大学を卒業後、当社へ入社。主に機械・システム事業本部長や役員などの要職を歴任後、2017年6月より現職。
代表取締役副社長、社長補佐、CFO、財務経理部及びIR室担当の松原 圭吾は1955年12月生まれ。早稲田大学を卒業後、1979年4月三井物産株式会社に入社。経理部長や執行役員、CFOなどの要職を歴任後、2019年3月より同社へ入社し、2019年6月より現職。

報告セグメント

「船舶事業」、「海洋開発事業」、「機械事業」「エンジニアリング」の4報告セグメントに大別され、いずれにも含まれないものをその他としている。2021年3月期の売上高663,834百万円の構成比は、船舶事業が92,394百万円で13.9%、海洋開発事業が309,949百万円で46.7%、機械事業主が159,048百万円で24.0% 、エンジニアリング事業が38,426百万円で5.8%、その他が64,015百万円で9.6%。船舶事業と海洋開発事業は赤字の期が多く、機械事業とその他は安定的に黒字。直近4期連続で連結赤字。

事業モデル

船舶事業は、LNG運搬船やオイルタンカー、防衛省向けの艦艇、海上保安庁向けの巡視船などを製造。造船に関する事業は、商船事業及び艦艇事業のそれぞれで事業株式譲渡や資本提携を進めており、設計開発力を生かしたファブレス事業への転換を図っている
海洋開発事業は、石油・ガス開発会社に対しFPSO/FSO (Floating Production,Storage and Offloading system: 浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備) 、TLPなど浮体式生産設備の設計から資材調達、建造据付、試運転までを一括で提供。また、完工したFPSO/FSOに対し、リースサービスおよび洋上で保守点検・生産活動を行うオペレーション&メンテナンスサービスも提供。
機械事業は、船舶用ディーゼルエンジン、港湾クレーンなど、海上物流輸送領域に欠かせない様々な機械の開発、設計、製造、保守を行う。また、原子力関連施設を始めとする極限作業現場に、遠隔操作機器を提供。
エンジニアリング事業は、火力発電所の土木・建築工事を中心に、海上土木工事、陸上土木・建築工事などを行う。
2019年5月に公表した事業再生計画に沿った再生プランを進めている最中、新型コロナウイルスの感染拡大が生じ、影響を見極めつつも事業構造の転換を図っている

2020年3月期決算(2020年5月12日) 決算説明資料

機械・システム事業で扱う製品において、 「電子制御エンジンが主流化」「コンテナクレーン自動化が加速」「人手・目視による点検作業のメカトロニクス・モニタリング化が進む」という3つの上昇トレンドから、パワーメカトロニクス製品の市場投入機会は各事業で加速すると同社は予測。

競合他社

船舶の建造や船舶輸送、自衛隊の潜水艦の製造などを手がける7012川崎重工業株式会社 (2021年3月期売上高1,488,486百万円)、航空エンジンや大型ボイラーなどを主に手がける7013株式会社IHI (同売上高1,112,906百万円)、タービンやタンカー、建機などの総合重機大手6302住友重機械工業株式会社 (同売上高849,065百万円)などが競合他社として挙げられる。

連結の範囲

持株会社である同社の傘下に、主要な事業子会社として海洋石油・ガス生産設備の設計・建造事業を行う三井海洋開発株式会社と空気・各種ガスの高圧・超高圧コンプレッサ製品を手がける株式会社加地テックなど連結子会社82社、持分法適用非連結子会社1社及び持分法適用関連会社 49社により構成。

強み・弱み

強みとして幅広い分野・高い技術力が挙げられる。造船・機械・エンジニアリング・海洋開発・IT など、総合重工メーカーとして100年以上の歴史を有す。機械事業を中心に舶用ディーゼル機関やクレーンの国内案件で高いシェアを有している点も強み。機械事業のアフターサービス事業は安定的な収益源として利益を底支えしている。懸念点は、エンジニアリング事業の海外大型EPC(Engineering, Procurement, Construction の略称)プロジェクトの損失により、大きく毀損した財務基盤の回復が喫緊の課題であること。

2021年3月期決算(2021年5月11日) 決算説明資料

KPI

経常利益率目標を4%(2021年3月期▲9.1%)引き上げることを開示している。目下、事業再生計画の進捗が最重要課題となるが、その他に下記のようなものが考え得る。
各事業の受注数と受注高(決算説明資料に開示あり)

業績

過去10期では、売上高のピークは2015年3月期816,520百万円で、2019年3月期の656,504百万円まで漸減傾向であった。2020年3月期は持ち直したが、2021年3月期は再び663,834百万円まで減少した。営業利益は2017年3月期まで減益が続き、2018年3月期からは赤字が継続している。税前利益は特別損失や特別利益の計上もあり期によって変動するが、18年3月期以降は、エンジニアリング事業の海外EPCプロジェクトでの遅延等により大規模な損失が連続して発生し4期連続赤字である。
営業CFは利益に準ずるところも大きくマイナスの期も多いが、21年3月期はプラス。投資CFは事業再生計画に基づく資産及び事業の売却が続き、2期連続プラス。FCFは3期連続プラスを維持。自己資本比率は2020年3月期7.7%から、2021年3月期8.8%へ回復しているが依然として低位である。

関連ありそうな記事