3698 CRI・ミドルウェアの業績について考察してみた

3698 CRI・ミドルウェアの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2001年8月に東京都大田区において、株式会社CSK(現9719SCSK)の子会社である株式会社CSK総合研究所の100%子会社として創業。創業以前は株式会社CSK総合研究所の一部組織であったが、当初セガの家庭用ゲーム機向けに提供していたミドルウェア事業を異なるプラットフォームへ展開することを目的として設立された。2004年5月には役員及び従業員によるEBOにより親会社から資本独立し、2005年1月に現社名に商号変更を実施。2009年10月には現在の本社所在地である東京都渋谷区に移転、2014年11月には東証マザーズに株式を上場。「CRIWARE」や「OPTPiX」というブランドで、ゲーム業界などへ音声・映像関連のソフトウェア製品の許諾販売を行う。

株主構成

有価証券報告書によると、2021年3月末時点の筆頭株主は、かつての親会社である株式会社セガグループで11.76%を保有する。第2位株式は同社従業員持株会で9.48%を保有するほか、第3位株主として、現代表取締役社長である押見正雄氏が7.38%である。第4位(4.28%)・第9位(1.48%)・第10位(1.26%)にファンド及び証券会社(SBI証券、松井証券)の保有があるが、その他は第5位株主にかつての取締役会長を担った古川憲司氏(4.03%)をはじめ、経営を担った個人が上位株主として名を連ねる。なお、上位10位までの株主が占める割合は46.33%である。

取締役会

同社の取締役は9名(社内4名、社外5名)、うち社外取締役3名は監査等委員で、監査等委員会設置会社である。社外取締役5名のうち、取締役会長の鈴木正彦氏はかつての親会社であるSCSK株式会社にて長年経営の一翼を担っていた。また、飯野智氏はCSKベンチャーキャピタルなどに属し、数々のテクノロジー・ベンチャー企業の育成に携わった経験を有する。CSK総合研究所時代からの役員が半数近い。

代表取締役の経歴

現代表取締役社長である押見正雄氏は1963年生まれ。早稲田大学理工学部を卒業後、株式会社CSK総合研究所に入社し、人口知能技術、マルチメディア技術の研究開発に従事したのち、セガサターンなどのゲーム開発に携わった。2002年8月に当社に出向して以降、長く経営に関与している。2008年6月には代表取締役専務、2013年4月には現職である代表取締役社長に就任した

報告セグメント

事業分野の特性上、ミドルウェア事業の単一セグメントにて報告していたが、2021年9月期より、対象とする顧客・マーケットに応じて、「ゲーム事業」と「エンタープライズ事業」の2つの区分を新たに設けた
2021年9月期上期の状況については、ゲーム事業の売上高がスマホ向け・海外向け案件受託などがけん引し、1,136百万円(前年同期比+64.6%)と好調な一方、エンタープライズ事業の売上高は326百万円(前年同期比+2.3%)と、組込みシステムが振るわず、ほぼ横ばい(事業別売上高の状況は下図を参照)。

2021年9月期 上期決算説明資料

事業モデル

同社は、「驚き・感動を、より多くの人に伝えるためのミドルウェア」をコンセプトに掲げ、「音と映像で社会を豊かに」を企業理念とする。エンターテインメント分野を中心として、様々なコンテンツを多くのプラットフォームでユーザーが気軽に利用できるような、ハードウェアの違いを吸収するミドルウェアを提供する企業である。
「ゲーム事業」は、主にゲーム業界向けに音声・映像関連のミドルウェアの提供などを行う事業であり、「エンタープライズ事業」は、主にゲーム業界以外(カラオケ機器や車載機器、家電などの組込み分野など)を対象に音声・映像関連のミドルウェアの提供を行う事業である。
同社の基本的な経営方針としては、祖業であるゲーム分野でのミドルウェア開発における技術・ノウハウなどをもとに、異分野への横展開を図ることで、グループ全体での飛躍的な成長に努めている。特に近年では、同社は「テレウェア構想」を掲げており、盛り上がりを見せるデジタルトランスフォーメーション(データとデジタル技術でビジネスモデルや製品などの変革を図る動き)を支えるミドルウェアを総合的に提供できる企業を目指している。

競合他社

ミドルウェア開発はニッチな市場であるほか、ソフトウェア開発会社の多くが自社開発で賄うケースも多いと見られ、直接的に競合と言える企業は少ない。そのなかでは、3907シリコンスタジオ(東証マザーズ。2020年11月期売上高4,134百万円)は提供するラインナップの一つにミドルウェア製品があるが、ゲームのクリエイター向けに注力している点で直接に競合するわけではない。海外にも競合先は多くはなく、同社は音声と映像を総合的に提供する点でも競争優位な立場にあるといえる。

連結の範囲

2021年9月期上期時点において、同社には6社の連結子会社が存在し、同社のゲーム事業を補完する関係にある。子会社のうち、ウェブテクノロジはウェブサイトのデータ転送技術、ツーファイブはゲーム音声技術、アールフォースはゲーム開発の企画・運営、など機能別に特化している。なお、ゲーム業界以外向けのミドルウェアの提供を行うエンタープライズ事業については、同社本体で手掛ける。

強み・弱み

1990年代からセガと協力して各種のハードウェア開発に携わってきた経験値を有している点が強みとしてあげられる。セガ以外からの受託を図るためにマルチプラットフォーム化を推進する中で、ソニーや任天堂向けのゲーム機開発に加わるなど、家庭用ゲーム市場のミドルウェア開発では中心的な立ち位置を確保している点は強みだろう。
一方で、弱みとしては、国内市場に収益基盤が依拠するなかで、今後の一層の事業拡大を推進するにあたり、海外市場への展開力は育成途上である(2021年9月期上期海外関連売上高構成比+7.7%)。現在も中国向けなどで受注案件は出てきているものの、海外勢のゲーム開発に食い込んでいるかどうかがカギである。

KPI

「売上高」と20%程度の「利益率」をKPIとして説明している(2020年9月期の自己資本利益率は9.3%)。そのほかに、同社の中核事業であるゲーム事業において、以下の指標を開示しており、ゲーム事業の趨勢を判断する重要なKPIとみなすことが出来る。
「CRIWARE採用率(国内):スマートフォンゲーム」 33% (2021年3月時点)
「CRIWARE採用率(国内):家庭用ゲーム」 23% (2019年年間)
「CRIWARE採用数」 6,137ライセンス (2021年3月時点)
「CRIWARE採用数」はここ数年にわたり、順調にライセンス数を増やしてきていることが分かるが、国内事業がその大部分を占めている。2017年以降、徐々に増加傾向にある海外ライセンス数を今後一層拡大できるかがポイントとなる。同社では各連結子会社と協働し、主に中国市場向けに経営資源を投入し、シェア拡大を図っている途上にある。今後の経営戦略が適切に遂行できるかどうかを図る客観的な指標として、「CRIWARE採用数」の動向数があげられる。

2021年9月期 上期決算説明資料

2021年9月期 上期決算説明資料

業績

大型案件の失注があった2017年9月期を除いては、売上高は緩やかに拡大傾向で推移し2020年9月期は2,349百万円(前期比+31.7%)と大幅増収であった。子会社の連結化の寄与や、主力のゲーム事業が国内・海外とも好調で増収を牽引した。営業利益の水準は必ずしも売上高には連動しておらず気によってバラつきがあるが、2020年9月期は457百万円と過去最高益を更新している。営業CFはプラス圏で推移も、利益の水準に準ずるところが大きく、投資CFは恒常的にマイナスで、FCFは直近3期はプラス。自己資本比率は69.8%であった。