4776 サイボウズの業績について考察してみた

4776 サイボウズの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

サイボウズの事業概要

同社は1997年8月に愛媛県松山市にて、高須賀宣氏、青野慶久氏、畑慎也氏により設立された。高須賀氏、青野氏は松下電工に勤務しており、青野氏が大阪大学時代の先輩である畑氏に声を掛けて実現した起業である。社名は「電脳」を意味する「cyber」と、親しみを込めた「子供」の呼び方「坊主(bozu)」に由来し、「電脳社会の未来を担う者達」という意味も込められている。1997年10月に「サイボウズOffice」シリーズを発売し、2000年8月に東証マザーズに上場、2002年3月に東証二部、2006年7月に東証一部への市場変更を果たした。
同社の大株主は畑氏(16/4%)、Cbzサポーターズ株式会社(15.3%)、サイボウズ株式会社(13.0%)、従業員持株会(4.5%)である。Cbzサポーターズは青野氏が100%出資を行なっている会社であり、個人の持ち株を合わせて16.8%の株式を保有する青野氏が筆頭株主である。
同社の役員は取締役3名、監査役3名(うち社外監査役3名)の計6名で構成されている。代表取締役と平取締役は創業者である青野氏と畑氏、取締役副社長は日本興業銀行出身で2000年より同社に参画している山田氏である。青野氏と畑氏の持ち株の合計は全体の1/3を超えることや、意思決定の迅速性を追求して社外取締役を設置しないことを表明していることを考慮すると、青野氏と畑氏の影響力が大きいことが読み取れる。
同社はソフトウェア事業の単一セグメントであり、業務を効率化するグループウェアで国内高シェアを誇っている。東京、上海、ホーチミン、カリフォルニア、シドニー拠点の連結子会社5社と、関連会社2社によって構成されている。時価総額(2020年12月現在)は約1600億円であり、東洋経済業種別時価総額順位において6位(パッケージソフト68社中)である。同業種の1位は日本オラクル(4716)、2位はトレンドマイクロ(4704)、3位はジャストシステム(4686)、4位はオービックビジネスコンサルタント(4733)であり、サイボウズの時価総額は同業種トップの日本オラクルの約1/10である。

ソフトウェア事業

同事業では「kintone」、「サイボウズOffice」、「Garoon」を中心にパッケージソフト、クラウド両方で業務効率化サービスの提供を行なっている。2019年12月期末においては自社クラウド基盤「cybozu.com」上で提供するサービス売上が積み上がり、連結売上高は13,417百万円(前期比18.7%増)であった。このうち、クラウド関連事業の売上高は9,560百万円(前期比28.6%)、パッケージ関連事業の売上高は3,857百万円(前期比▲0.3%)となっている。
主力製品である業務アプリ構築クラウド「kintone」は、プログラミング等のスキルがなくてもデータベース、情報共有、コミュニケーション等のツールを作成できるPaaS(Platform as a Service)である。最低5ユーザーから契約でき、1ユーザー月額1,500円である。同サービスの契約社数は14,000社(2019年12月時点、前年比1.3倍)を突破し、順調に伸長している。2019年7月には自治体専用閉域ネットワークLGWANに対応し、官公庁でも活用されてきている。
中小企業向けグループウェア「サイボウズOffice」は勤怠管理や経費申請等のビジネスに必要な機能を集約したサービスである。数人から300人程度の組織に最適なツールであり、クラウド版は最低5ユーザーから、1ユーザー500円から契約できる。同サービスは4年連続で過去最高売上高を記録し、2019年末時点で66,000社を超える顧客へ提供している。
大企業・中堅企業向けグループウェア「Garrom」は、詳細な権限設定、国際化、システム連携にも対応する総合ビジネスパッケージであり、300名から数万人規模の組織向けに提供されている。近年は同サービスの認知度が高まってきており。2019年12月末時点でパッケージ製品とクラウドサービスを合わせて累計導入社数5,400社を突破した。クラウド版は最低10ユーザーから契約でき、1ユーザー月額800円から提供している。

サイボウズの財務状況と経営指標

同社のキャッシュ・フロー(以下、CFと表記)について、2019年12月期の営業CFは2,355百万円、投資CFは▲1,314百万円、財務CFは▲412百万円である。2015年3月期末の営業CFは646百万円であり、4年間で営業CFが3.65倍となっている。直近5年間の同社の投資CFは▲559百万円〜▲1,436百万円で推移しており、各期の営業CFを上回ることも多いことから、同社の投資に対する積極性と、投資回収に成功していることが読み取れる。有形固定資産等明細表を見ると、有形固定資産増加額1,757百万円のうち工具、器具及び備品の増加額が1,560百万円であるが、主にクラウドサービス用サーバーの増設に使用されており(注記参照)、クラウドサービスを中心に業績を伸ばそうとする同社の方向性が読み取れる。直近5年間の財務CFは▲169百万円〜▲412百万円(主に配当金の支払額)で推移しており、現金及び現金同等物の期末残高は1,587百万円〜2,416百万円で推移していることから、投資に必要な資金は本業の儲けで確保できており、必要な時に資金調達を行う余裕があることが読み取れる。
また、同社の流動比率は123.87%(2020年12月期第3四半期末)であり、望ましいとされる200%を下回っている。同四半期末の流動資産のうち比較的現金化が容易な項目は5,485百万円(現金及び預金3,188百万円、受取手形及び売掛金2,297百万円)であるが、流動負債のうち支払いが差し迫っている項目は1,936百万円(未払金417百万円、未払費用708百万円、未払法人税等811百万円)であり、これらの比率を求めると164.67%となる。2020年は新型コロナの影響で業績が低迷する企業も散見されるものの、同社の2020年12月期第3四半期売上高は11,535百万円(前年同四半期比16.67%増)であり、今後の新型コロナの動向は同社の業績の悪化に繋がりにくいと予想できる。現金及び現金同等物が2,000百万円前後で安定して推移しているだけでなく、営業CFも右肩上がりであることを考慮すると、流動比率に関しては必ずしも望ましい水準とは言えないものの、直ちに資金繰りに困窮する可能性は低く、同社の財務安全性は高いと言えるだろう。
同社の業績について、2020年12月期の会社予想売上高15,603百万円(前期比+16.3%)に対し、2020年12月期第3四半期売上高実績11,535百万円の進捗率は73.3%であり、2020年度の売上が順調であることが読み取れる。
同社のROEは27.40%であるが、パッケージソフト業界1位の日本オラクルは27.10%、2位のトレンドマイクロは15.00%、ソフトウェア業界平均は3.48%、伊藤レポートによる目標ROEは8%であることを考慮すると、同社のROEが著しく高いことが読み取れる。また、同社の売上高営業利益率は12.91%であり、日本オラクル(32.58%)、トレンドマイクロ(22.81%)と比較すると劣るものの、業界平均(5.02%)を大きく上回っている。以上より、同社の収益性は必ずしも業界トップとは言えないものの、非常に高い水準であると言えるだろう。そして、同社はクラウドによる収入が増加傾向であることから、今後も収益性が向上していく可能性が高いと予想できる。

サイボウズのカタリスト

同社のカタリストとして、パッケージからクラウドへの移行が挙げられる。主力サービスの1つである「Garrom」に関しては、パッケージ売上高が微増しているものの、その他のサービスは総じてパッケージ売上高が減少している。本業で得た資金の大半をクラウドサービスに使用するサーバー等に投資していることや、ユーザーにクラウドの利便性が浸透してきていることから、クラウドサービスをどれだけ伸ばせるかが同社の株価推移の鍵となるだろう。
また、「kintone」の値上げも同社のカタリストになりうるだろう。現在は1ユーザーあたり月額1500円で提供しているが、同サービスは顧客が業務を遂行するための基盤となっているため、値上げをしてもチャーンレート(解約率)は上がりにくく、利益が上昇することが予想できる。クラウドサービスを提供する他社の動向を考慮すると、同サービスで10%程度の値上げをする可能性は高く、それが実行されることが同社のカタリストになると考えられる。