6232 ACSLの業績について考察してみた

6232 ACSLの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2013年11月千葉県にて株式会社自律制御システム研究所を設立。2016年11月高速通信回線LTE網を利用したドローン遠隔制御に史上初の成功。2017年6月 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト/無人航空機の運行管理システム及び衝突回避技術の開発/準天頂衛星システムを利用した無人航空機の自律的ダイナミック・リルーティング技術の開発」へ参画。2017年7月画像認識により飛行する「大脳型」自律制御を開発し、ドローン実装により商用化。2018年6月NEDOの「AIシステム共同開発支援事業/ドローンとAIによるプラント設備の画像撮影と点検判定の自動化」へJSR株式会社とともに参画。2018年12月東証マザーズに上場。産業向けドローン及びその活用のための無人化システムを受注開発、生産・販売している。2021年6月24日開催の株主総会で社名を株式会社ACSLへ変更。

株主構成

有価証券報告書によると2021年3月末時点の大株主は、同社創業者である野波健蔵氏(取締役は退任済)が11.01%、IGLOBE PLATINUM FUND Ⅱ PTE. LTD.が7.99%、株式会社菊池製作所が6.42%を保有。以下5%未満の保有で、信託銀行の信託口、取締役会長の太田裕朗氏、取締役CFOの早川研介氏等が並ぶ。外国人株式保有比率は10%以上20%未満。

取締役会

取締役は5名(社内4名、社外1名)、監査役は3名(全員社外、1名は常勤)、監査役会設置会社である。代表権を持たない社内取締役3名は、ローム株式会社やマッキンゼー・アンド・カンパニー・インクジャパン、ボーイング等の出身者。

代表取締役の経歴

代表取締役社長兼COOの鷲谷聡之氏は1987年9月生まれ。早稲田大学大学院を修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク ジャパンに入社。2016年7月に同社へ執行役員として入社。取締役最高財務責任者(CFO)や最高戦略責任者(CSO)等を務め、2021年6月より現職へ就任。

報告セグメント

「ドローン関連事業」の単一セグメント。2021年3月期の売上高は620百万円、営業損失は▲1,139百万円であった。同社は販売実績を「実証実験」「プラットフォーム機体販売」「その他」の3つに区分しており、売上高の状況は、実証実験370百万円、プラットフォーム機体販売145百万円、その他105百万円となっている。

事業モデル

ドローン関連事業は、「産業向け」の飛行ロボットの自社開発、ドローンを活用した無人化システムの受注開発、生産、及び販売・サービスを提供している。自立制御の研究開発をゼロから国内で行うことで、「自ら考えて飛ぶ」最先端の制御技術を核とした技術力を有しており、通信・ソフトウェアなどを統合した制御パッケージや、高性能な機体プラットフォームを提供することに加え、用途別にカスタマイズした産業向け特注機体、特注システムの開発、さらに最終的には顧客システムに統合されたレベルのシステム開発まで、事業として幅広く対応している。同社のビジネスモデルは、顧客企業からのドローン導入の打診に基づき、顧客企業におけるドローン活用による課題解決の概念検証、及び概念検証を経て顧客先の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行う「実証実験」と、顧客先における試用ベースの導入として、同社のプラットフォーム機体をベースにした機体の生産・供給を行う「プラットフォーム機体販売」となっている
実証実験では、業務効率化などの効果実現に向け、特注システムの提供のみに留まらず、安全導入に不可欠なドローンの操作シミュレータやドローンの保守点検サービスを提供し、システム導入・運用サポートを一貫して提供する。顧客の既存システムへ組み込むソリューションの取り組み事例としては、工場設備、橋梁、煙突内部、下水道管路内等の閉鎖環境、風力発電設備等の点検、ドローンによる物流システムの運用構築、災害現場の把握等である
プラットフォーム機体販売では、同社のプラットフォーム機体をベースにした機体の生産・供給を行うだけでなく、量産が見込める特定の領域において「用途特化型機体」の開発を進めている。用途特化型の機体は、「小型空撮機体」、「中型物流ドローン」、「煙突点検ドローン」、「閉鎖環境点検ドローン」の4種類
同社では、各段階で収益を獲得する案件が一般的だが、案件によっては実証実験とプラットフォーム機体販売を組み合わせて包括的に契約を締結する場合もある。機体販売後の運用サポートにおいては、定常的に発生する機体の保守手数料や消耗品の販売料などを主な収益源としている。また、2021年5月よりサブスクリプションによるサービスの提供も開始している。
国家プロジェクトにおいては、研究開発費用について管轄機関の監修を受けて認められた金額を助成金または補助料として収受しており、新規技術の研究開発に係るものは営業外収益として、既存の同社技術を用いたプロジェクトについては売上高として計上している。

2021年3月期 通期決算説明資料

競合他社

国内では、産業用ドローンを手掛ける6986双葉電子工業(直近決算期売上高488億円)、3444菊池製作所(直近決算期売上高53億円)、ドローンを活用した映像伝達等を手掛ける2303ドーン(直近決算期売上高10億円)などが競合として挙げられる。しかし、同社はドローン専業であるため、競争優位性が高いとみられる。国際的に見れば中国に競合企業が多く、DJIなどがその最たるものである

連結の範囲

同社グループは、同社及び投資事業を行うACSL1号有限責任事業組合(連結子会社)にて構成される

強み・弱み

高い技術力により顧客の要望に応えるビジネスモデルであることが強み。創業者で元代表取締役CEOであった野波健蔵氏は、日本ではドローン研究の第一人者であり、日本ドローンコンソーシアムの会長や千葉大学名誉教授も務める。同氏のチームは日本で最初にドローンの完全自立飛行に成功するなどの実績を有し、そのノウハウを同社は引き継いでいる点は大きな強みである。2016年頃には楽天株式会社と東大エッジキャピタル(UTEC)の資金援助を得て、創業後の死の谷を乗り越えた(2020年3月期の有価証券報告書までは確認された)ことからも、同社への期待と社会的信用力が伺える。一方で、ドローン市場は中国製が市場を席巻している。中国にはメーカーだけでも数百社あり、競争は激しい分、技術開発の進歩も早く、5Gの整備された大陸での実証実験の優位性もある。それらの中国企業と対抗するうえで、「日本製」の高信頼性でどこまで戦えるかは懸念点である。また、ドローンの安全性に対する社会的信用が低下するような事故等があった場合、業績へ与える影響が大きい点もリスクである。

KPI

2021年3月期におけるKPIは下記。
①小型空撮機体・その他用途特化型機体 台数
②実証実験 案件数 82件(前期比▲30件)
③汎用・評価機体 販売台数 46台(同▲55台)
④出荷台数 71台(同▲57台)

2021年3月期 通期決算説明資料

業績

2017年3月期から2021年3月期までの5期をみると、売上高は156百万円から620百万円、経常損失は▲486百万円から▲1,081百万円となっている。最先端技術への開発投資等により、2020年3月期を除いて経常損失となっている。営業CFは恒常的にマイナスとなっており、投資CFは期によってさまざま。直近期の自己資本比率は88.6%。